新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。 アフターコロナのお金論33回。
世界でトレンドになりつつあるBNPL
キャッシュレス化の急速な普及にも伴って、様々な決済方法が出てきています。今回は世界各国で進んでいる「BNPL」という新しい決済方法について、トレーニングしていきたいと思います。
早速ですが、お金のトレーニング。「BNLP」とは、何の略でしょうか?
答えは、「Buy Now, Pay Later」の略です。つまり「今買って、後で支払う」ということです。
利用者がネット通販などで商品を購入すると、その代金を利用者に代わってBNPL事業者が通販事業者に支払うことで、利用者は後で支払いをすることができる「後払い」を可能とするのです。
BNPLはクレジットカードの与信情報を利用することなく、独自のスコアを用いて利用者に対してより手軽な後払いサービスを提供しています。クレジットカードに代わる決済方法として、世界各国で急速に市場が伸びています。
例えば、アメリカで人気のBNPLプラットフォームの1つ、Afterpay(アフターペイ)というサービスがあります。これはもともとオーストラリア発のサービスですが、現在はアメリカを中心に世界的にユーザーを増やしていています。2021年8月時点で、Afterpayのユーザー数は1600万人を超えていて急速な広がりをみせています。
この他にも、BNPLとして注目されているサービスには、ソフトバンクグループが出資するKlarna、Affirm、Quadpayなどがあります。BNPL企業が最も多いのはアメリカですが、それに欧州が続き、オーストラリアやニュージーランド、アフリカ、東南アジア、中東、中南米など、世界中の企業がこの市場に参入しています。
また決済について、最近日本でも注目されたニュースがありました。アメリカの決済サービス大手企業であるPayPal Holdings(ペイパル・ホールディングス)が、日本の決済ベンチャー企業を買収したのです。そしてその買収額は約3000億円にもなり、大きなニュースとなりました。
それではお金のトレーニング。約3000億円でPayPal Holdingsに買収された、決済サービスを運営する企業はどこでしょうか?
答えは、Paidy(ペイディ)です。それでは、このPaidyはどのような決済サービスなのでしょうか。
Paidyを導入するネット通販サービスで商品を購入する際には、メールアドレスと携帯番号を入力します。その後に送られてくる認証コードを入れれば、それだけで利用者は決済を完了することができます。利用者がネット店舗などで商品を購入すると、Paidyが代金を立て替えて店舗に支払い、利用者には翌月以降に請求がきて、コンビニ払いや口座引き落としで支払う仕組みになっているのです。
そんなPaidyは2008年に設立、2014年に後払い決済のサービスを始めました。分割手数料無料で3回に分けて支払えるサービスなど、ユーザー向けのサービスを充実させてきた結果、その口座数は現在600万を超えるまでに成長しているのです。
ここでお金のトレーニング。後払いだと未回収のリスクも大きいのでは、と思う方も多いでしょう。では、Paidyの未回収リスクは何%でしょうか?
答えは、約1%。これはPaidyのもつ、独自開発のAIを活用することで素早く審査ができることが要因の1つです。この点はPayPal Holdingsからの大きな評価ポイントにもなっているのです。
続けてお金のトレーニング。クレジットカードで支払う方法もある中で、なぜ日本でPaidyの後払いが普及してきているのでしょうか?
答えは、クレジットカードは便利ですが反面何が起きるのか分からないというリスクや不明瞭さがあったり、買い物の度にクレジットカード番号を入力する手間もあるので、BNPLが若者を中心に利用が伸びているのです。後払い決済サービスは、クレジットカードを持たない若者のほか、クレジットカード保有しているが積極的に使いたくない若者を中心に、急速に選ばれています。
また他方で、東南アジアでBNPLが伸びているのは、また違った要因です。東南アジアではEC市場が急拡大している半面、クレジットカード保有率は約8%に過ぎず、銀行口座保有率も約55%しかない状況にあります。
そんななかでも、スマホだけは1人1台普及しており、スマホ決済と併せてBNPLが使われているため、急速にBNPLが広まっているのです。
このようにBNPL市場が伸びている理由は各国ごとに分析すると、国の情勢により異なります。これからは企業もユーザーの多様化するニーズを最速で汲み取り、改良したサービスを提供し続けなければ選ばれない時代です。
また、消費者である私たちも、まずは選択肢を知り、そのメリットやデメリットやリスクを知り、その上で自分に合った正しい選択ができるように、常に新しいファイナンシャル・リテラシーを身につけていくことが、アフターコロナの時代ではとても重要になってきているのです。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。
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