35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第102回!
英語で「見る」の使い方の違い
私が日頃よく混同してしまう単語に“watch”と“look”と“see”があります。
全部「見る」と日本語で考えてしまっているので、使い方に違いがあることに気がつきませんでした。
オンラインのイギリス人英語教師に聞いてみると、こう整理してくれました。
(例はすべてケンブリッジ英英辞典より)
Watch=動くものをしばらくの間眺める
例:We watch television every evening.
テレビは動くものですし、少なくとも数分は見ているので、“watch”を使うのだそうです
Look at=目玉をその方向にもっていって、対象物に注目する
例:Come and look at this photo Carina sent me.
こっちにきてカリーナが送ってくれた写真見てよ! と、目玉を写真に向かせようとしています。
See=見ようとしなくても視界に入っているもの
例:Has anyone seen my glasses?
人のメガネがどこに置いてあるかなんて特に誰も注目はしていなくても、たまたま誰かの視界に入っていたために「あそこにあったよ」と教えてもらえることもあるでしょう。ですので「誰か私のメガネ見てない?」は“see”なのだそうです。
そして、この違いを知るのに、大変面白い言葉を教えてもらいました。
教師は私にこう聞いたのです。
Are you clock-watcher?
「クロックウォッチャー?」
時計を見る人、という意味でしょうか。
聞いてみると、「仕事中に時計ばかりみて仕事が終わるのをひたすら待っている人」ということでした。仕事もせず時計だけを眺めていた挙句、定時になれば速攻で帰宅、つまり全然仕事をしない人、ということになります。
そしてこれは、“look”でも“see”でもなく“watch”が使われていることで、時計をただチラッと見る、ではなく「じっと眺め続けている」という状態であることがわかるのです。
あなたはclock-watcherか、それともslackerか
そういえば昔、会議が長すぎて退屈で、かといってスマホを見るわけにもいかず、壁にかかった時計の秒針の動きをじっと眺めていたことがあります。ただただ時が過ぎていくのを見ているだけ、というあまりにも不毛な時間でした。これこそがまさに“clockをwatchしている”状態なのです。
Are you clock-watcher?
と聞かれて、「まぁ会議の時とかはそうかも」と答えましたが、ただでさえ職がない昨今、またやっと職についてもブラック企業が多いですから、clockをwatchしているだけでお給料がもらえる会社があるとは思えません。もしかしたら好景気な時代のお話かもしれません。1997年には『Clockwatchers』というオフィスを舞台にしたコメディ映画もあったようで(日本未公開)、ちょっと面白そうだなと思いました。
私は日頃から下手な英語で、仕事が嫌だとか休みたいとかぼやいているので、先生は“Are you clock-watcher?”と聞いてきたのだそうです。「実際タスクがあるから、秒針を見つめているだけで何もしないわけにはいかない。とはいえ、決して積極的に働くわけではない」などとぐちぐち言っていたら。
So, you are a sort of slacker.
「スラッカーみたいなものね」と言われました。
「スラッカー?」とまたしても聞き返してしまいましたがこれは要は「すべきことを先延ばしにする人」ということで、まぁ「怠け者」ということでしょう。
もともとは「徴兵を拒否した人」のことを言ったそうですが、それが転じて「怠け者」となったようです。これは少しキツイ、失礼な言い方になるので、先生はわりと私にアタリが強いのがわかります。
ちなみに、2017年日本公開の『スラッカー』という映画もあり、怠け者がグダグダと夢を語り合っている作品でした。『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督の初期の作品ですので、こちらはぜひチェックして、「スラッカー」が何者かを感じとっていただけたらいいでしょう。
Illustration=Norio