35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、現地で恥をかいて学んだフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第60回!
“Spoiler alert”を見つけたら、要注意!?
ロックダウン以前は、よくロンドンの映画館へ行っていました。英語力の問題で、『スター・ウォーズ』とか、『アベンジャーズ』とか、「すでに旧作を見ていて、ストーリーを把握している」「アクションがメインで、台詞が少ない」作品しか観られないのですが、それでも「今週は映画館で何を観ようかな」と考える時間はやはり楽しかったです。
面白そうかどうか、私の英語力でも理解できそうかどうか、さまざまな人が書いたレビューをみていつも判断しますが、そんな時に見つけた言葉がこれです。
Spoiler alert
わたしの英文の読み方は、「わからない単語があってもいちいち読むのを止めない」「とりあえず一度全部読んでから、わからないところにもう一度戻る」なので、このフレーズの意味はわからなかったものの、いったん読み進めました。
そして、レビューを読み終わった後、思いました。
「ネタバレしちゃってるよ……」
そのレビューは、ご丁寧にストーリーすべてを解説、衝撃のラストまでしっかり書かれていたのです。そしてこの時、やっとこのフレーズの意味がわかりました。
Spoiler alert = ネタバレ注意
“spoil”は「ダメにする」という動詞で、「ネタバレして、映画の楽しみを台無しにする」という意味にも使われます。ケンブリッジの英英辞書にはこのように例文があります。
I haven"t seen the film, so don"t spoil it for me by telling me what happens.(私はその映画見てないから、何が起こるか教えないでよね!)
ちなみに、そのレビューは文中このように書かれていました。
Spoiler alert for those who haven’t seen it.
“alert”は日本語英語と同様に「警報」という意味です。レビュアーはネタバレ部分の前にきちんと「ここは、ネタバレ注意(警報)です」と言ってくれていたのです。ネタバレしていることに気がついたことで、やっとアラートが出ていたことを理解できたのです。
全文読んでしまえば、このように、辞書を使わなくても知らないフレーズや単語の意味を理解できることがあります。しかしこの言葉だけは、見つけた時点で、辞書をひいておけばよかった、と少し後悔しました。ネタバレが嫌いな人は、このフレーズを見つけたらくれぐれも注意して下さい。
「微妙な」を、英語で言えた喜び
覚えたばかりの英単語をうまく使えると、とても気分がいいものです。これもロックダウン前の話ですが、スペイン人の友人と、お風呂用品のブランド「LUSH」でウインドーショッピングをしていた時のことです。カラフルな石鹸の匂いを嗅いで「これ好き」「これはあんまり」と言い合っていたら、店員さんが声をかけてくれました。
「この新商品も、いい匂いなんだよ」
今だに、英語で店員さんに話かけられるとドキドキしてしまうのですが、よく考えたら、そもそも日本でも店員さんに話かけられるのは苦手でした。
しかしスペイン人のこの友人はいっさい物怖じしないので、店員さんにいろいろ質問、次々と新しい石鹸をだしてもらっています。それを横目で見ていると彼女は私の方にひとつ石鹸をさし出してこう言いました。
「これ、全然匂いしないと思うんだけど、嗅いでみて」
嗅いでみると、確かに他に比べて匂いが弱いものでした。それでも、微かにハーブの香りがします。「微かにするよ」を英語で言えるかな、と一瞬考えて、数日前に習ったばかりの単語をおそるおそる口にしました。
It’s subtle but good smell.(微かだけど、いい匂いだよ)
うまくこの覚えたての“subtle(微かな)”を使えたか自信がなかったのですが、店員さんが
Yes, it’s quite subtle.(そうなの、これ、すごく微かなのよ)
と言ってから、またマシンガントークを始めたので、とりあえず通じたみたいで安心しました。
subtle = 微かな、微妙な、とらえがたい、鮮明でない
という意味で、使われる形容詞です。「微妙」という言葉は日本語では一見ネガティブな印象ですが、この単語自体には、特にネガティブな意味はありません。
ケンブリッジの英英辞典の例文はこうなっていました。
The play"s message is perhaps too subtle to be understood by young children.(その演劇のメッセージは、若い子供たちに理解されるには、微かすぎる)
この場合、強いメッセージ、テーマ性を打ち出した作品でなく、日常の機微をさりげなく描いたような作品が想像できます。
またこの単語は“b”を発音せず、カタカナにすると「サトル」に近いような音となります。発音も含めて難しいと思っていた単語だったので、聞き取ってもらえて、理解してもらえてちょっと嬉しくなったのです。毎日学習を続けるのは、つらいこともありますが、日々の「通じて嬉しい」「使えて嬉しい」が原動力になります。
MOMOKO YASUI
編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英、’20年帰国。