HEALTH

2024.09.15

バイアグラは過去の話!? 男性更年期の筆頭「ED」治療最前線

近年注目されている「男性更年期」。なかでもED(勃起不全)はセンシティブで相談しづらく、悩みを抱えたままの中年・壮年男性も少なくない。最新のケアに関してイーヘルスクリニック新宿院院長の天野方一医師が提案する一手とは?

男性更年期
unsplash / Gaelle Marcel ※写真はイメージ

男性更年期に気づくきっかけは「精力低下」

前回、男性更年期について教えてくれたイーヘルスクリニック新宿院の天野方一医師によれば、男性更年期を理由に来院するきっかけのひとつとして、精力減退、いわゆる「ED」の症状を挙げる人も多いという。

「EDは単に快楽の追求ではなく、男性の自信や尊厳、健康に非常に関連しています。特に朝立ちは、男性の健康を示す大切なサインです。もし朝立ちが続けて見られなくなった場合、男性更年期のほか、糖尿病や高血圧の悪化、さらには狭心症のサインである可能性もあります。こうしたリスクが重症化し、取り返しのつかない事態になる前に、生活習慣の改善に向き合うことが必要です。

そして何よりも、どんな年齢になっても『いざ』という時にしっかりと勃起する性機能を保つことは、男性としての自信と余裕の源となります。それは、尊厳を守り、自信を高め、社会的にも生涯現役でいられる健康な心身へとつながるものといえるでしょう」

一般的な知識においては「男性ホルモンを増やす=ED治療」と結びつくことが多く、年齢不相応な「好き者」と思われやしないかと抵抗を感じることもある。しかし、現代において立身出世して名をなす男というものは、ある意味「そうあるべき」なのかもしれない。経営者やリーダー格、有能な上司たちを思い出してみると、みんな枯れた感じなんぞ微塵もなく、むしろ隠し切れない「現役感」が漂っている、いや、隠そうともしてない「オス」感の強い男たちの多いこと。

もし精力減退を感じている人がいるとしたら、それは本意であれ不本意であれ、「自らがより優れたオス」であることを証明するレースからの離脱を意味することになりかねない。男性の尊厳とEDは、切っても切り離せない関係なのだ。

勃起硬度スコア「EHS」を使って自己診断

EDは単に勃起するか否かの問題だけでなく、勃起の「質」も重要な問題だ。天野医師が、“ED度”を自己診断できる興味深いテストについて教えてくれた。

2007年、米国にて「EHS(Erection Hardness Score)」なるものが開発され、下記はその日本語版。1~4の4段階で勃起時の硬さを表現したもので、EDの自己診断に利用する簡便な評価ツールとして医療現場でも使われているという。

勃起硬度スコア「EHS」
出典:イーヘルスクリニック新宿院

このほか、朝立ちが起こっているか否かも、重要なバロメーターとなる。 

EDの治療としては勃起薬(バイアグラ)が最も有名かつ主流だが、心臓に持病があると使えないなど、皆に適用できるものではない。ほかには、“衝撃波治療”という物理的に刺激を与えて鍛えていくものや、近年注目の「エクソソーム」を陰茎に注射する治療法もあるそうだ。

「いわゆる予防医療やアンチエイジング領域で、エクソソームや幹細胞が注目されているのはご存じのとおりです。そのエクソソームを陰茎に打つ治療法はここ数年行われているもので、麻酔クリームを塗れば若干痛みは軽減されますが、想像するだけで恐ろしい…という方が多い。治療費も数回ワンセットでトータル40~50万円ほどかかり、非常に高額です」

日々EDの患者を診るたびに、「もっと手間なく、経済的に安価で、安全なものはできないだろうか」と考えていたという天野医師。そこで、エクソソーム配合のクリームはできないものかと開発に着手したという。

エクソソームは血管に対して作用する

そもそも、天野医師はなぜED対策にエクソソームを応用しようと考えたのだろうか。

「まず、勃起は血管の拡張だということに着目しました。人間は年齢を重ねると血管が硬くなっていきます。買ったばかりのビニールホースは柔らかいけれど、使っていくうちに硬化していくことと同じです。血管を拡張させるのには幹細胞やエクソソームが効くのでは? という着想が一番の理由です。次に、勃起障害の原因は陰茎海綿体に炎症が起きているからといわれていて、エクソソームはその炎症を抑える作用もあります。

もうひとつ、これは僕の仮説なのですが、人間の神経から一酸化窒素が放出されて血管が拡張する際、エクソソームはその放出量を増やす役割を担うのではないかという発想からです」

天野院長がこのクリームを製品化するにあたり、最初は知人や友人に使ってもらい、その後に同意書を取り、クリニックに来院する患者にも使ってもらったという。結果を解析し、効果のエビデンスがとれるようになったのを確認、2024年5月の発売に至った。医師の診察の上での販売となるが、評判を聞きつけ、海外からも問い合わせが入ることが増えているという。

「塗るだけという手軽さがウケているのでしょう。男性更年期の場合、既にテストステロンゲルやエッセンスが開発されています。それと比較するものではありませんが、治療の選択肢のひとつとして捉えてもらえれば。エクソソーム配合のクリームを選ぶメリットは、男性ホルモン補充ではないので、禁忌の人はほぼいないこと。例えば、テストステロンを補充したいと思っても、既往症に前立腺がんや心臓系の病気の人は使えないですから」

エクソソーム配合のクリームはいろいろな治療に対してのオプションとして使えることもメリットのひとつ。シンプルに「今やっていることと併行して使えばいいのでは?」ということなのだ。

「エクステム ライズアップクリーム フォーメン」
天野医師が開発した、ヒト幹細胞培養上清液エクソソームを超高濃度(20%)で配合した世界初(※) のクリーム。男性ホルモン補充と異なり、副作用がないところもメリット。3種類のヒト幹細胞培養上清液(歯髄由来、臍帯由来、脂肪由来)を独自比率でブレンドし、リポソーム化技術により吸収力を高めた上清液エクソソームが 1本に 2,100mg 配合されている。原料の採取から製造まで全て国内で行っている。特許出願中。「エクステム ライズアップクリーム フォーメン」 18g ¥30,000前後(クリニックによって異なる)
※ヒト幹細胞培養上清液配合のクリームとして。㈱PCM調べ

実際に臨床実験で患者に使ってみて分かったのは、EHSで勃起硬度スコアがアップするなど勃起障害そのものに作用するだけでなく、前回説明したAMS(エイジングメールスコア)という男性更年期全体のスコアも改善していること。「因果関係は現在解析中なのですが、公私ともにやる気が出たとか、積極的にジム行くようになったとか、そういったコメントが寄せられています」と天野医師は言う。

話題の配信ドラマ『地面師たち』でも、「極端にクレバーでずる賢く心身ともに屈強な男たち」が繰り広げるお色気シーンに関して、「これ要る?」論がネット掲示板界隈を大いににぎわせているが、成功者やリーダーなど頂点に立つ男に「色」は必要だということの証左なのかもしれない。つまり強い男の表現に、「性」は必要不可欠な描写なのである。

男性更年期やED改善薬を服用するのは、何も恥ずかしいことではない。「バイタリティ溢れる力強いリーダーとなり、社会に貢献するために必要なのだ」。そう思えば、人生そのものに大きな違いをもたらしてくれそうである。

「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」天野方一院長
天野方一/Hoichi Amano
埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院などで研鑽を積む。2016年帝京大学大学院公衆衛生学研究科入学、2018年ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)留学。予防医療に特化したクリニックに勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。専門は腎臓病学、予防医学、抗加齢学医学、産業医学領域。

イーヘルスクリニック新宿院
住所:東京都新宿区新宿2-6-4 新宿通東洋ビル3F
TEL:03-5315-0514
診療時間:月・火・水9:00〜12:00/13:00〜17:00、木・金9:00〜15:00/16:00〜20:00、土・日・祝10:00〜16:00
休診日:不定休(年末年始は休診)

TEXT=三井三奈子

PHOTOGRAPH=植 一浩(静物)

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