HEALTH

2024.01.26

元スケート選手の美大生はなぜ、ボディビル大会で優勝できたのか

筋肉美をもつ女神シリーズ40人目は、ファン・ヘミン。■連載「マッスル美女」とは

伝説的な“マッスル・クイーン”への道

ボディメイクやフィットネスへの関心が高まる昨今、ボディビル大会に出場する女性たちが増えている韓国で、伝説的な“マッチョ・ウーマン”として知られているのが、今回紹介するファン・ヘミンだ。

韓国の美ボディ大会として有名な「マッスルマニア・コリア」大会で頭角を現し、2015年にアメリカのラスベガスで行われた「FITNESS AMERICA WEEKEND 2015」にて、女子フィジーク部門の頂点に立った。

女性らしさを維持しつつ、バランスの取れた筋肉と体型の美しさを競う女子フィジーク部門で、東洋のアジア人が生き残るのは難しいといわれている。そんななかで優勝した彼女は、当時話題になった。

3年後の「FITNESS AMERICA WEEKEND 2018」でも女子フィジーク部門で栄冠に輝くと、「神が宿った肉体」「ボディメイクの彫刻家」「世界1位のマッスル女帝」など、さまざまなキャッチフレーズで報じられた。

「恥ずかしいかぎりです(笑)。昔から体を動かすことが大好きだったことも、関係しているかもしれません。私はただ一生懸命にトレーニングを積んだだけです」

もともとは銀盤を駆け抜けるスケーターだった。5歳の頃からスピードスケートを始め、ジュニア時代にその名を馳せたエリート。だが、スケートリンクだけで過ごす青春に嫌気がさして、推薦確実だった体育大学には進学せず、スポーツとはまったく無縁の美術大学に進学した。

「バーンアウトではないですが、スケート漬けだった毎日を一度リセットしたい気持ちが強くて美大を選びました。子供の頃から絵を描くのも好きで、アートにも興味があったので。ただ、大学に入学してからもジムに通って運動は続けていたんですよ。体作りとか有酸素運動効果など基本的な知識もあったので、気が付くとジムでトレーナーとしてアルバイトをしていました」

ウェイトトレーニングが日課の美大生。それだけでも珍しかったのに、トレーニングに励むほど筋肉が鍛えられ、体も研ぎ澄まされて、ある日、ジムのオーナー兼コーチからボディビル大会への出場を勧められた。

「当時の私の体重は60kg以上。それなのにコーチは52kg級クラスにエントリーしたというんです。大会まで3ヵ月しかなかったので絶対無理だと思いましたが、徹底的に鍛えて、食事も管理しました。だって、負けたくなかったから(笑)」

ボディメイクとは、究極の自己管理

元来が負けず嫌いの性格だったが、スピードスケートと違ってボディビルには競争相手がいない。強いてあげれば、自分がライバルで競争相手のようなものだ。ファン・ヘミンも昨日の自分を超えるために鍛え、汗と涙を流したという。ボディビルの世界にのめり込んだわけだが、家族は反対だったという。

「“一銭のお金にもならないのに、なぜそこまで自分を追い込むのか”と(笑)。だから言い返しました。“父さんや母さんは狂ったほどに何かに夢中になったことはある? 私はある。それがボディメイクなの、と」

そして冒頭でも紹介したラスベカスでの快挙の夜。国際電話で優勝を報告すると、母は「自分が夢中になることで世界1位になったのだから満足でしょ? もうやめたら?」と呆れていた。だが、実は友人や知人たちには「私の娘はボディビルダー世界1位」と得意げに話していると伝え聞いた。

「やっぱり家族の理解と応援が、一番のエネルギーですからね。それにボディメイクで最も重要なのは精神力。トレーニングや食事管理で感じる苦痛や辛さは、誰もがかならず経験するもの。ポイントはその辛さや苦痛をどう乗り越えるかであって、精神力の有無で違いが出て来ると思うんです。ボディメイクとは、究極の自己管理。それは結局、精神力の戦いでもあると思います」

伝説のマッスル美女が語る言葉だけに説得力もある。美しく鍛えられた肉体は、己に勝った証でもあるのだ。

現在は後進の育成に励む

現在は、ジムで一般人の体作りやダイエットを指導する傍ら、ブロ・ボディビルダーやフィットネス選手の養成に取り組んでいる。最も嬉しいのは教え子たちが大会で輝く姿だという。

「優勝とか入賞とか、良い成績でなくていいんです。本人たちが一生懸命に頑張ったことをステージの上でしっかり表現して披露してくれるだけで嬉しいし、涙が出る。自分が1位になったときは泣かなかったのに、おかしいですよね(笑)」

涙目の笑顔でそう語る伝説のマッスル美女。今度は彼女の教え子たちが世界のボディビル大会で活躍する日を期待したい。

■連載「マッスル美女」とは……
健康志向が高まり、体を鍛える人が増えている昨今。お隣・韓国でも全国各地で大小さまざまなボディビル大会や"美ボディ・コンテスト"が開催されており、ここから輩出された"マッスル美女"たちが脚光を浴びている。美しくもしなやかな筋肉美をもつ女神をシリーズで紹介する。

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TEXT=ピッチコミュニケーションズ

PHOTOGRAPH=MAXQ http://www.maxq.kr/

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