不眠解消や体調の改善、リラクゼーション効果などが注目され、話題となって久しいCBD(カンナビジオール)。オイルをはじめ、グミにサプリ、クリームにワックス、コスメにバスソルトなど、さまざまな種類のCBDアイテムが多数展開され、CBDカフェなるものもオープン。盛り上がっている反面、粗悪品が出回っている危険性も。そんな今だからこそ、CBDについての正しい知識を、臨床CBDオイル研究会代表の飯塚浩先生が指南!
大麻草は政治的な思惑から禁止された!?
CBD(カンナビジオール)は、大麻草に含まれるカンナビノイドというポリフェノールのひとつ。
日本では大麻取締法が広く知られているせいか、大麻草=麻薬というイメージが強い。それもあって、CBDが注目され始めた数年前から「CBDは違法薬物なのでは?」という声は多く聞かれる。
「CBDは違法薬物ではありません。CBDの原材料になる大麻草は、1万年以上も前から食料、繊維、燃料として利用されるなど人の暮しと深く関わってきた植物で、医薬品としての活用も数千年の歴史を持ちます。そもそも大麻草が禁止されたのは20世紀に入ってから。それも、成分の危険性というよりも政治的な理由が大きかったのです」と、精神科医であり、臨床CBDオイル研究会の代表も務める飯塚浩先生は指摘する。
大麻課税法の施行によって、アメリカで大麻が実質使用禁止になったのは1937年のこと。
1920年から1933年まで続いた禁酒法の廃止に伴い、新たな取締りの対象として大麻草が狙われたとも、メキシコ移民や黒人に対する差別、さらにはエネルギーや化学繊維、製薬などに広がりをみせていた石油産業のライバル潰しなどともいわれている。
当時は大麻草が人体に与える影響に関するデータが乏しく、科学的根拠のみに基づいた策でなかったことは事実。当然、アメリカ占領下にあった日本においても、1948年に大麻取締法が施行された。数千年以上にわたり繊維や医薬品として欠かせない存在であった大麻草は、「心身に悪影響を及ぼす麻薬」というレッテルを貼られることになったわけだ。
「それが一転、2000年頃からアメリカで大麻草の薬用成分が見直されるようになります。理由は、てんかんや多発性硬化症、エイズといった難病に劇的な効果がみられたためです。これを機に、アメリカでは医療大麻の合法化が進み、日本でも、さまざまな制約はあるものの、2019年に大麻製剤の治験が認められました」(飯塚先生)
不眠に肥満、糖尿病など幅広い効果が
「大麻草の薬効成分の中心となるのは、多くの種類のカンナビノイドとテルペンです。カンナビノイドはそもそも人間の体内においても大量に合成しています。その働きのスイッチを入れる『カンナビノイド受容体』は、神経系や免疫系を中心に広く分布しており、睡眠や食欲、認知、感情、老化、免疫など、あらゆる生体機能をコントロールしています。このカンナビノイドが、ストレスや栄養障害、老化、有害金属などの影響で低下すると、神経細胞や免疫細胞の活動がうまく制御できなくなり、さまざまな疾患を引き起こしてしまいます。そこで、外から医療用カンナビノイドを補ってコントロールする力を取り戻させようというのが、カンナビノイド医療です」と、飯塚先生。
大麻草に含まれるカンナビノイドのなかでも薬効成分の中心となるのがCBDとTHC(テトラヒドロカンナビジオール)だ。
ただし、精神作用のあるTHCは日本では使用が禁止されている。ヒトが体内でつくる「内因性カンナビノイド」と良くも悪くもほぼ同様の働きをするのがTHCだ。そのためカンナビノイド受容体にダイレクトに作用する。ごく少量ですばらしい薬効がある反面、過剰な刺激となり、好ましくない精神作用が生じるリスクもある。一方、CBDは内因性カンナビノイドの働きを“間接的”に調節するため、リスクが少なく多くの恩恵をもたらしやすい。
「私が代表を務める臨床CBDオイル研究会が医療用として推奨しているのは、THCを除去しつつ、他の成分は可能な限り残したブロードスペクトラムCBDオイルです。大麻草成分の薬効の特徴で有名なのは“アントラージュ(取り巻き)効果”です。これは多数の成分が合わさることで相乗効果と副作用低減効果を得られることを表しています。ですから薬効という視点でいえば、CBDしか入っていないアイソレートではなく、多種類の成分を含むブロードスペクトラムCBDオイルという選択になります」
具体的な効果としては、抗酸化作用や抗炎症作用、高不安作用、鎮痛作用、抗けいれん作用などが有名だ。さらにがんや肥満、糖尿病、骨粗しょう症予防などにも用いられる。不眠の解消やリラクゼーション効果は、CBDが持つ抗不安作用によるものだ。
「体内のカンナビノイドはさまざまな全身機能のバランスを制御しており、これを『エンドカンナビノイド・システム(ECS)』といいます。CBDはこのECSのレベルを整えることでさまざまな不調を整えます。ECSの働きが良好なときは、気分は良くなり体は軽くなります。CBDの効能を一言で表すなら、身体も心も “上機嫌”にすることです。ときには眠気や倦怠感、軟便といった不快な症状が生じることはありますが、大抵の副作用は使用量を少量からゆっくりと増量することで避けることができます。食品アレルギーのようなものが出ない限り、とても安全なものといえます。しかしCBDの世界的な人気に便乗した粗悪品が市場に溢れています。原料や製造方法に問題があれば、当然身体に害を及ぼす可能性はありますので注意が必要です」
次回は、CBDアイテムの選び方や正しい利用法について教えてもらおう。
まとめ
CBDは危険性が少なく効果は絶大。
Q&A
Q.CBDは違法ではないの?
A.CBDの使用は日本でも認められています
日本の大麻取締法で規制対象になっているのは、成熟した茎や種子を除く花穂や葉といった部位。これら禁止部位を原料に用いていないCBDは違法ではない。また、2022年に、厚生労働省の大麻規制検討小委員会が、有効性と安全性が確認され、医薬品として承認されたものについては輸入や製造、使用を可能にするよう大麻取締法改正の方向性を示す報告書を発表。大麻取締役法改正の動きも活発化している。
Q.依存症になるのではと心配
A.CBDに依存性は認められません
THCは、厚生労働省の大麻規制検討小委員会の報告にも「軽度の依存症が知られている」との記載があるが、CBDには、身体的依存性や急性中毒症状はない。逆に、依存性薬物をやめる際の援助に利用されている。
Q.タバコと比べると、どちらが身体に悪い?
A.断然タバコ。タバコは百害あって一利なし
CBDの身体に対する悪影響は、現段階ではほとんど報告されていない。対してタバコは百害あって一利なし。そもそもタバコやお酒、カフェイン類は依存性も有害性も非常に高い。一方CBDは、安全性が高いだけでなく幅広く健康に寄与する作用があり、予防医学的にも利用できるものである。
Q.どんな副作用がある?
A.人によっては軟便や眠気が生じる場合も
頻度の多い副作用としては、倦怠感、眠気、めまい、軟便、多動、イライラ、頻脈など。これらはCBDの使用量をごく少量から徐々に増量していくことで回避できるケースがほとんどである。やや稀なものとして、易怒、食欲減退、緊張感、動悸、不眠、頭痛などがある。なお、大麻草成分に含まれるタンパク質と同様の特性がある食品や物質に対するアレルギーがある場合は、CBDオイルの服用でアレルギー反応が起こる可能性もゼロではない。