2022年は多くのプロがPGAツアーで話題となった。そのなかでも、2022年後半から突如として新星のように現れ、特に話題となった20歳のトム・キムとは。【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン番外編】
2023年、新星トム・キムに注目すべき理由
トム・キムは、韓国出身で本名はキム・ジュヒョン。父親はゴルフのティーチングプロで、かつてはツアープロだった。そのため、海外暮らしが長く、子供の頃大好きだった「機関車トーマス」からトムという英語名を名乗るようになったという。
2018年にプロに転向したキムは翌年、アジアンツアー「パナソニックオープンインディア」をツアー最年少の17歳149日で制し、注目を浴びた。2021年には韓国ツアーの賞金王にもなっている。
そして2022年にはスポット参戦したPGAツアーのレギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」で優勝。20歳でのPGAツアー制覇は、近年では2013年のジョーダン・スピース(19歳11ヵ月)に次ぐ記録となった。2022年10月の「シュライナーズチルドレンズオープン」でも勝利し、20歳3ヵ月でツアー2勝目を挙げた。
21歳の誕生日を迎える前までに2勝目を挙げたのはタイガー・ウッズ以来となり、しかも20歳9ヵ月で2勝目を挙げたウッズを上回るスピードだった。9月の「ザ・プレジデンツカップ」では世界選抜のメンバーの一員に選ばれ、気迫あふれるプレーでファンを楽しませた。今年は初めての出場となるマスターズをはじめ、メジャートーナメントでどのような活躍をするか注目したい。
キムの特徴はアイアンショットの正確性にある。流行のシャローな軌道のダウンスイングではなく、アップライトなスイング軌道でピンをデッドに狙っていく。ピンに絡んだショットを放った後のパッティングも正確で、バーディーを量産することができる。もう少し飛距離がほしいところだが、今後のフィジカルトレーニングの取り組み方次第では飛距離アップも可能だろう。
正確なショットが持ち味のトム・キムがスイングするときに気を付けていることは、バックスイングの上げ方だという。バックスイングではクラブヘッドをアウトサイドに上げ、シャフトを立てながらアップライトな軌道でトップポジションを作る。キムはこのバックスイングを毎ショット正確に行うために、ショットを打つ前にクラブを上げる位置を細かく確認するルーティンを行っている。
バックスイングのクラブポジションは重要なため、こうしたルーティンを取り入れているプロは多い。バックスイングの軌道が一定にならないと悩んでいる人は、クラブポジションを確認するキムのルーティンを取り入れてみてほしい。
バックスイングは少し外に上げる
今回はバックスイングの始動でクラブポジションを確認する際のポイントと、再現性の高いバックスイングを身に付ける練習方法を紹介しよう。
再現性の高いバックスイングを行うために重要なのは体と腕のシンクロだ。体と腕がシンクロしている状態とは、アドレス時にできた胸と両肘の空間がスイング中に変わらない状態のことを指す。この空間が一定であれば、体が腕をコントロールすることになりスイングの再現性が高まる。
ところが、アマチュアゴルファーの中には、腕の動きでバックスイングを行い、クラブをインサイドに引く癖がついている人が多い。そうすると、腕の運動量が多くなり、体と腕のシンクロが崩れてしまう。その結果、オーバースイングになりやすく、腕の振りを主体とした手打ちスイングの原因となる。
そのようなスイングにならないために、バックスイングでシャフトが地面と平行になったあたりでクラブポジションを確認してみよう。クラブヘッドが手元よりも内側にある場合は腕の動きでクラブを引き込んでいる可能性が高い。クラブがインサイドに上がってしまう人は、腕の動きを抑えて体の回転でバックスイングをしてみてほしい。体と腕がシンクロした状態でバックスイングを行うと、クラブヘッドが手元よりも外側に上がりやすくなる。両脇にヘッドカバーを挟んだり、ゴムボールを両肘と胸の空間に挟みながらバックスイングを行うと体と腕のシンクロ率が高まり、クラブヘッドが手元よりも外に上がりやすくなる。
バックスイングでクラブをインサイドに引き込む癖がついている人は、慣れるまで少し極端に外側にクラブを上げてみてもいいだろう。ボールを打つ前に必ずテークバックでクラブの位置を確かめるようにすれば、体と腕のシンクロが自然と身についていくはずだ。
ぜひ、バックスイングでクラブポジションを確認するルーティンとして取り入れてみてほしい。
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世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子によるゴルフレッスン。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
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