世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子による、【連載 吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】202回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。【過去の連載記事】
【プロのようなテクニックは不要なユーティリティー】
グリーンを狙ったアイアンショットでミスをすると、難しいアプローチを打たなければいけないことがある。「ショートサイド」と呼ばれる、距離は短いものの難易度の高いアプローチや、打ち上げの砲台グリーンなどでは距離感を合わせづらく寄せることが難しい。
プロの場合は、ショートサイドや砲台グリーンなどの難しい状況でも、ロブショットでふわりとボールを上げて寄せたり、スピンをかけてボールを止めるテクニックを持っているためピンチをしのぐことができる。しかし、多くのアマチュアゴルファーはそのような技を持っていないため、ボールを上げようとしてミスをしたり、ランニングアプローチやパターで転がして寄せることも難しい状況のため、グリーンに乗せることで精いっぱいだ。そんなピンチのときに、ユーティリティーをアプローチの選択肢に入れてみることをお薦めしたい。
多くの人にとってユーティリティーを使ったアプローチに馴染みがないと思うが、トッププロでもアプローチでユーティリティーを選択することは珍しくない。私がよく解説をする米シニアツアーでは、多くの選手がユーティリティーを使ってグリーン周りのアプローチをしている。経験豊富で多彩なアプローチの技術を持っているベテラン選手でも、安全で確実なユーティリティーのアプローチを選択しているのだ。
【ボールを勢いよく打ち出せるのが特徴】
ユーティリティーをアプローチで使ったことがない人が多いと思うので、今回はユーティリティーを使ったアプローチの特徴や使い方のコツを、順を追って説明しよう。
ユーティリティーは飛距離を出すためのクラブなので、シャフトが長くフェース面がボールをはじいてくれるので、ボールを勢いよく打ち出せる。また、パターに比べてロフトもあるので、ある程度ボールを上げることもできる。そのため、多少のラフや上りの傾斜でもボールが転がってくれる。このような場面でロフトが少なくボールのスピードが出ないパターを使っても、勢いが出ないためボールが減速してショートしてしまう可能性があるが、ユーティリティーならパターと同じ振り幅で勢いのいいボールを打てる。ユーティリティーを使えば、ふわりとしたロブショットや、スピンをかけたボールを打てなくても、難しいピンチの状況を切り抜けられる可能性があるのだ。
ユーティリティーのアプローチをアドレスから説明していくと、ボールは真ん中よりも左にセットし、グリップの位置は若干ハンドファーストにする。体重は左にかけ、左足のつま先を開いて体を回りやすくするといいだろう。ダフらないように、ソールを滑らせやすくする構えをするのがポイントだ。
クラブの振り幅は、芝の長さや傾斜、距離などで変わってくるが、決して大きく振ってはいけない。時計の針でいうと5時から7時の間くらいの大きさで振り、状況に合わせて調整するといいだろう。
距離を調整する際に、インパクトの強弱でコントロールしないようにしてほしい。傾斜が急だと、インパクトを強くしてボールを上げたくなるが、パターのように左右対称の振り幅で、インパクトの強弱をつくらないように振ることが大切だ。
このような点に気を付けてユーティリティーを使えば、難しいグリーン周りの状況でも比較的楽に打つことができる。振り幅が小さいのでトップやダフリになりにくく、芝の状態や傾斜などを見誤らなければ、大きなミスショットになることもないだろう。
ユーティリティーのアプローチでは、どこにボールを運び、どう転がしていくのか、しっかりとしたイメージを持つことが大切だ。それには、練習や本番で、実際に何度も打ってイメージを蓄積していくしかない。怖がらずにユーティリティーを使って、ピンチを切り抜けてほしい。