世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子による、【連載 吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】199回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。【連載の過去記事】
【器用な右手をいかに抑えるか】
1920年の全英オープンの覇者、ジョージ・ダンカンが残した言葉に「ゴルフスイングで右手を使いすぎるという本能的傾向を抑制するのは、ゴルファーにとって永久の戦いである」という名言がある。要するに右利きのゴルファーの場合、ゴルフスイングにおいて、器用に動く右手をいかに抑えるかが重要だということだ。
ラウンド中に同伴者から「右手に力が入り過ぎている」「右手でボールを打ちにいっている」というアドバイスを受けた経験がある人は多いと思う。しかし、このアドバイスを受けても「右手で打たずに、どうやってスイングをするのか」と疑問に思った人もいるはずだ。
よくプロゴルファーや上級者が「ゴルフスイングはクラブを上げて下ろすだけ」という表現をすることがあるが、クラブを上げて下ろす動作の間には、クラブにさまざまな力がかかる。たとえば、トップの位置で力を抜くとクラブが地面に落ちるが、この動作には重力がかかっている。振り下ろされたクラブにはパッシブトルク(受動的なトルク)がかかるし、加速したクラブヘッドは遠心力によって動き続けようとする。このようにクラブに加わるさまざまな力を「外力」というが、この外力を上手に利用すれば、力を入れてクラブを振り回さなくてもスイングスピードが上がり、ボールを遠くに飛ばすことができる。
ところが、利き手である右手でクラブをコントロールしようとすると、クラブの動きを邪魔してしまい、外力を利用することができなくなってしまう。右手でボールを打ちにいくと、力感が出るのでボールが飛びそうに感じるが、実際は逆効果になってしまう可能性があるのだ。
【「クラブに仕事をさせる」という感覚を磨く】
器用すぎる右手を抑えるためには、右手を使わないように意識するだけではなく、使えないようにするための練習ドリルが効果的だ。右手を使わない感覚を養うために、親指と人さし指を外して、中指、薬指、小指の3本だけでグリップしてスイングをする練習法をお薦めしたい。親指と人さし指は器用で、箸やペンなどの道具を使うときに主導的な役割をするが、この器用な2本を離せば、右手を自由に動かすことは難しくなる。普段使わない不器用な中指、薬指、小指の3本でグリップすることで、力任せにスイングをすることができなくなり、外力を使ったスイングの感覚を養うことができる。
クラブを右手だけで持ち、親指と人差し指を離した状態で素振りをすると、手先でクラブをコントロールすることが難しくなる。特にダウンスイングでは力を入れることができないので、クラブの重みを感じて自然にインサイドにクラブを下ろすことができる。ダウンスイング後半では、勢いのついたクラブヘッドを自然とリリースする感覚も出てくるだろう。
右手だけでスイングをするのが難しい人は、最初は両手でクラブを持って、親指と人差し指をグリップから外して素振りしてもいい。
クラブヘッドの動きを主役にしてスイングをしてみると、いかにそれまで右手を使ってクラブをコントロールしようとしていたかが分かるはずだ。クラブヘッドの動きに合わせるようにスイングすることで、無理に右手でクラブをコントロールしなくても、クラブにかかる外力によってスムーズにスイングできることがわかるだろう。これが「クラブに仕事をしてもらう」ということだ。
右手が強くて力を抜くことが難しいと感じている人は、右指3本の素振りを行い、外力を使ってスイングする感覚を身に付けてほしい。今までより力が抜けて、飛距離も方向性も良くなるはずだ。