世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム196回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。【連載 吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】
【ボールが飛ばないハンドレイトインパクト】
アイアンショットのボールが高く上がってしまい、番手通りの飛距離が出ないと悩んでいる人は多い。そのような人は初級者だけだと思われがちだが、中上級者の中にもインパクトでハンドレイトになってしまい、アイアンの飛距離が出ないケースがある。ハンドレイトというのは、インパクトで手元の位置がボールの後ろにあり、正面から見て左腕とクラブでできる角度が「く」の字になっている状態だ。
インパクトでハンドレイトになるのは、インパクト周辺でボールを右手ですくい上げようとしたり、ダウンスイング初期にコックが早めに解けてしまうことが原因で起こる。ハンドレイトでインパクトすると、ロフトが付いてボールが上がり過ぎるだけではなく、左腕とクラブが「くの字」になるためボールに力が伝わらず、ボールを遠くに飛ばすことができなくなる。
アイアンショットの場合、左腕とクラブが真っすぐになるハンドファーストのインパクトでボールをとらえることで、ロフト通りの高さで風に負けない力強いボールを打つことができる。
ハンドレイトを解消するためのドリルとして、米国の著名なコーチ、アンドリュー・ライスはハンドファーストドリルを紹介している。
このドリルは非常にシンプルで、最初に手元を目標方向に出して極端なハンドファーストのインパクトの形を作り、一旦通常のアドレスに戻ってから、ハーフスイングでボールを打つだけだ。体にハンドファーストの形をインプットしてからスイングすることで、ハンドレイトのインパクトをハンドファーストに直していくという練習だ。
【極端な構えから足を使ってスイング】
前出のライスが紹介した練習ドリルを実践すれば、ハンドファーストの感覚を身に付けられるのだが、今回はライス流のドリルに加えて、足の動きを取り入れたバージョンアップしたハンドファーストドリルを紹介したい。
下半身を使ったハンドファーストドリルでも、ボールを打つ前に体にハンドファーストをインプットする部分はライス流のドリルとほとんど変わらない。手元を目標方向に出し、極端にハンドファーストに構える。このとき、ロフトが垂直に立つくらい極端にグリップが目標方向に出してもいいだろう。ハンドレイトのスイングが身についてしまっている人は、それぐらい極端にしないとハンドファーストの感覚は身に付かないはずだ。
このハンドファーストの動きをインプットするときに、上半身に意識が向きがちだが、下半身の動きにも気を付けてほしい。実際のインパクトでは腰は回転し、左膝は伸びた状態になっているはずだ。上半身をハンドファーストにセットしつつ、下半身もインパクトの形を作るようにしてほしい。この時、左足で体重を支えているので左膝を曲げて体を支えたくなるかもしれないが、左ひざを伸ばして体重が上に向かう「抜重」の状態になるようにしてほしい。
このようにして極端なハンドファーストインパクトの形を作った後、下半身を使ってスイングをする。下半身を使ってスイングすることで、上半身を使う必要がなくなるため、より一層ハンドファーストの状態をキープしたままスイングすることができる。さらに、地面反力を使ってスイングすることでスイングスピードを高めることも可能になる。
アドレス以降の動きを順を追って説明すると、右足を踏み込んでバックスイングを始動し、地面反力によって右膝が伸びながらクラブを上げていく。そして、左腕が地面と平行になるくらいの高さにまでクラブを上げたら、左足を踏み込んでスイングを切り返し、左膝を伸ばしながらインパクトを迎え、フォローまで左腕とクラブを一体化させながら体を回転して振り抜く。
上半身でハンドファーストの形を作ることばかりを意識してしまうと、体が動かなくなり、手や腕でクラブを振ってしまうことがあるが、足を使って体を動かすことで手打ちになることを防ぐことができる。
ラウンドでアイアンを打つときも、バックスイングはあまり大きくせず、コンパクトにするといいだろう。バックスイングを大きくしてしまうと、コックが早く解けたり、すくい打ちになったりと悪い癖が出がちだ。バックスイングはコンパクトにして、ハンドファーストのインパクトを意識し、フォロースルーは手首の角度をキープしたまま体の回転で振り抜くようにすることでアイアンの球筋も安定する。
インパクトから逆算するハンドファーストドリルに、下半身の動きを加えて飛んで曲がらないスイングを身に付けてほしい。