世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という彼による、スコアも所作も洗練させるための“技術”と“知識”を伝授する最新ゴルフレッスンコラムをまとめて振り返る。まだまだ厳しい寒さが続くが、ゴルフシーズン到来に向け、コソ練を積み重ねてスコアアップを目指したい。
ゴルフスイングで「頭を動かすな」はもう古い! 上下動は自然な動き
ゴルフのスイングについて、「頭を動かすな」と教わった人は多いだろう。確かに、クラブの動きに合わせて頭が大きく左右、上下に動いてしまうと、しっかりボールをとらえることはできない。頭を不必要に動かしすぎることにメリットはないため、初心者に対して「頭を動かしてはいけない」と教えることには一理ある。しかし、スイング中に全く頭を動かしていけないかといえば、そうとは限らない。
「頭を動かさない」というのは、地面から背骨を通り頭までを結ぶ垂直の軸をつくり、その軸を中心にスイングするという考え方に基づいている。以前はこうしたスイングモデルが主流で、その理論に基づいたレッスン本やティーチングプロも多かった。
しかし、人間の体はそう単純なものではなく、頭を動かさないことに意識がいきすぎるとスイング全体の動きがぎこちなくなり、スムーズな回転ができなくなる。また、近年のアメリカのティーチング界では飛距離を出すために、下半身を積極的に使って、前後軸(肩の縦回転)を行うことが推奨されるようになり、「頭を動かすな」という文言は見かけなくなってきた。
海外の一流選手は肉眼ではまったく頭の位置が動いていないように見えるが、スローモーションで見てみると上下左右に動いている選手がほとんどだ。5年ぶりに世界ランキング1位に返り咲いたローリー・マキロイのスイングは上下に頭が動く傾向がある。大柄ではないマキロイ(175センチ、73キロ)がPGAツアーで屈指の平均飛距離(2018-2019年度 平均飛距離313ヤード・PGAツアー2位)を誇ることができるのは、積極的に下半身を使って上下方向の力を生み出し、前後軸を速く回転させているためだ。
続きはこちら
欧米のゴルフ新常識! 「パットイズマネー」より「飛距離イズマネー」
スコアアップのために最も必要なスキルは何か。これはプロ、アマ問わず頭を悩ます問いだろう。どんなに素晴らしいショットを打って、絶妙のアプローチでグリーンにのせても、パットが入らなければスコアはまとまらない。「パット・イズ・マネー」という言葉がある通り、パッティングが最も重要だと思っている人が多いのではないだろうか。実際に「パッティングの精度を磨けば、スコアはよくなる」と教わった人も多いだろう。
ところが近年の欧米ゴルフ界では、ドライバーの飛距離を伸ばすほうがスコアを縮める近道であるということが常識となっている。これは、米コロンビア大学ビジネススクールのマーク・ブローディー教授の研究で、2014年、「ゴルフデータ革命(原題 Every Shot Counts)」という著書で発表した。
ブローディー教授は、2003年から2012年までの米PGAツアーのほぼ全ショットを分析。ドライバーからパターまで、どのクラブを使ったショットが、どの程度スコアに貢献しているかを数値化する方法を開発した。現在PGAツアーでは「ストロークスゲインド(SG)」という新しい指標として導入されている。
その結果わかったのは、PGAツアーに出場した選手のスコアに対しするパッティングの貢献度は平均して約35%。トップ40の選手に限れば、約15%でしかなかった。つまり、パットではスコアにあまり差が出ず、よりよいスコアを出すには、ドライバーやセカンドショットなどパット以外のショットのほうが重要だということだ。「規定打数の半分はパットだからスコアに直結するのはパッティングである」というロジックは崩壊し、「パットイズマネー」という格言は「ショットが飛んで曲がらない場合」という前提条件が付くものとなった。実際にPGAツアー2018-19シーズンのSGパッティング上位10 人のうち、シーズン終了時にワールドランキング40位以内の選手は0人、100位以内の選手もわずか4人だった。
続きはこちら
ゴルフプロとアマのパッティングスキルの違いは「ボールの転がり」
PGAツアー会場で、ジョーダン・スピースやリッキー・ファウラーなど名手と呼ばれる選手のパッティングを間近で見る機会がある。彼らには多くの共通する部分があるが、アマチュアと最も違う点はボールの転がりだ。ボールにはきれいなタテ回転がかかり、カップ周りでスッと伸びてカップインする。順回転のボールを打つことができるので、芝目や傾斜に影響されず、読んだライン通りにボールが転がっていくためカップインの確率が高い。アマチュアがツアープロのようなボールロールを手に入れるためには、やみくもに練習する前に科学的な知識を頭に入れておく必要がある。
あるクラブフィッターから、適切なパッティングではボールは平均して約3インチ(7.62センチ)前に飛び、バウンドしてから転がり始めるというレクチャーを受けたことがある。
「パッティングはボールを転がすもの」と思われているが、実際はパターにはロフトがあるため、打ち出されたボールはわずかに宙に浮き、その後転がっていくのだ。つまり、パッティングもキャリーとランから構成されているというわけだ。
このキャリーとランをコントロールするために重要になるのは、打つ瞬間のヘッドの入り方だ。適正な入射角とロフト角でボールを打つことができれば、ボールは適度にジャンプし、順回転しながら転がっていく。
続きはこちら