世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム82回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
「垂直軸」から「前後軸」へ
ゴルフのスイングについて、「頭を動かすな」と教わった人は多いだろう。確かに、クラブの動きに合わせて頭が大きく左右、上下に動いてしまうと、しっかりボールをとらえることはできない。頭を不必要に動かしすぎることにメリットはないため、初心者に対して「頭を動かしてはいけない」と教えることには一理ある。しかし、スイング中に全く頭を動かしていけないかといえば、そうとは限らない。
「頭を動かさない」というのは、地面から背骨を通り頭までを結ぶ垂直の軸をつくり、その軸を中心にスイングするという考え方に基づいている。以前はこうしたスイングモデルが主流で、その理論に基づいたレッスン本やティーチングプロも多かった。
しかし、人間の体はそう単純なものではなく、頭を動かさないことに意識がいきすぎるとスイング全体の動きがぎこちなくなり、スムーズな回転ができなくなる。また、近年のアメリカのティーチング界では飛距離を出すために、下半身を積極的に使って、前後軸(肩の縦回転)を行うことが推奨されるようになり、「頭を動かすな」という文言は見かけなくなってきた。
地面を踏み込めば頭も沈む
海外の一流選手は肉眼ではまったく頭の位置が動いていないように見えるが、スローモーションで見てみると上下左右に動いている選手がほとんどだ。5年ぶりに世界ランキング1位に返り咲いたローリー・マキロイのスイングは上下に頭が動く傾向がある。大柄ではないマキロイ(175センチ、73キロ)がPGAツアーで屈指の平均飛距離(2018-2019年度 平均飛距離313ヤード・PGAツアー2位)を誇ることができるのは、積極的に下半身を使って上下方向の力を生み出し、前後軸を速く回転させているためだ。
マキロイのように前後軸を中心に地面反力を利用してスイングするとき、頭の動きはどうなるのか。結論から言えば、「頭は上下する」だ。地面反力を利用するには、切り返しで左足を踏み込んでダウンスイングを開始する。この時、下半身はスクワットをするように骨盤が前傾してお尻が後ろの突き出るような形になる。そのため、頭の位置は下半身の動きに連動し、トップの位置よりも下方向に移動する。ダウンスイング後半は地面の反力を受けて下半身が伸展するため、それに伴って頭の位置は上方向に移動する。下半身を使って前後軸の回転が起これば、頭が上下することは自然な動きなのだ。
頭の動きは他の部分が動いた結果の現象であって、頭の動きを自分で無理にコントロールする必要はない。スイングの際は多少の頭の動きはあまり気にせず、他のスイング動作に意識を向けるほうが良い結果を生むだろう。