世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム149回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
手打ちスイングでは片手打ちは難しい
ゴルフスイングの練習方法は数多く存在するが、「片手打ち」はよく知られた練習ドリルの1つだ。片手で素振りをしたり、実際にボールを打つ練習だが、ゴルフメディアで紹介されているのを参考にして試してみた人も多いだろう。
この片手打ちドリルは、手や腕でクラブを振ってしまう癖のある人は上手く行うことができない。そのため、手打ちになりやすい初心者には少しハードルが高い練習かもしれない。中級者くらいになると、練習場で試してみたことがある人もいると思うが、練習場で間違った方法で片手打ちを行っている人を見かけることがある。
特に右利きのゴルファーが右手で打つ場合、バックスイングで右脇が開いてしまっているケースを見かける。トップポジションで右脇が空いた状態だと、ダウンスイングでは手や腕を必要以上に使うことになり、その状態で練習を続けても手先でボールにアジャストする能力が向上するだけだ。良いスイングを身に付けるどころか、手打ちのスイングが身についてしまう。
また、右利きのゴルファーが左手で行う場合、フォロースルーで左脇が大きく開いてしまうケースがある。片手でそのようなスイングを続けていると、左肩に負担がかかり痛める恐れがある。さらに、左腕を振ることでインパクトで手元が目標方向に流れやすくなり、フェースが開いてボールが捕まりづらくなってしまう可能性もある。
そもそも、片手打ちドリルは腕を振る練習ではない。体の動きによって腕が振られるようにすることが目的の練習だ。体と腕のシンクロを高めるつもりが、手先を使ってクラブをボールに当てる能力を向上させても意味がない。
片手打ちで再現性の高いスイングの基本を作る
片手打ちドリルを行うときに一番気を付けることは、腕を振ろうとしないことだ。体が腕を動かすということを強く意識し、最初は腕を全く使わないくらいの意識でもいいだろう。窮屈だったり、ぎこちない感じがするかもしれないが、慣れてくればその一体感がしっくりくるようになる。そして、クラブポジションにも気をつけたい。クラブを適切に使わないと、ボールをうまく打つことはできないし、手首やひじに負担がかかり故障の原因となる。
片手打ちドリルを行うときは、9番やピッチングウェッジなど短いクラブから始め、慣れてきたら長いクラブでも行ってみるといいだろう。片手打ちの練習は右手、左手それぞれで行うが、強化する意味で利き手ではない手で練習する機会を多くもってほしい。
片手打ちドリルを行う際のポイントをアドレスから順に説明していきたい。
アドレスでは体と腕のシンクロを高めるため、クラブを持っていない方の手で逆サイドの上腕部を抑えて体と一体化させる。上腕や肩をおさえることで脇が開かなくなり、体の動きで腕を動かしやすくなる。
次にバックスイングを行うが、左腕と地面が平行になったときに、グリップエンドが地面を指すようにしてほしい。グリップエンドがボールよりも自分側の地面を指すようにクラブを上げることで、クラブを軽く感じることができる。指2本でクラブを支えることができるくらいクラブが軽く感じるので、非力な人でも片手でクラブを支えることができるはずだ。このとき、クラブが後方に倒れるように傾いていると、クラブが重く感じられ、片手で支えることが難しくなる。そのようなクラブポジションでは、ボールを上手く打つことが難しいだけではなく、怪我の原因にもなるので気を付けたい。
切り返しは腕と地面が平行になるポジションで行う。それ以上クラブを上げようとすると、無理に腕でクラブを持ち上げる動きにつながるので、体と腕のシンクロが崩れやすくなる。切り返しの動作は下半身から始動し、左足を踏み込みながらダウンスイングに入る。
ダウンスイング後半からフォロースルーにかけては、上半身を回転させてクラブをリリースする。このときに腕を振ったり、手でインパクトの動きを作らないようにしてほしい。あくまでも体の回転によって腕が振られるようにしてほしい。
フォロースルーではバックスイングと同じように、クラブが軽く感じられる位置にクラブをポジショニングしよう。左手の親指を立てるようなイメージを持って行うといいだろう。
片手打ちは気を付けるポイントがいくつもあって難しく感じられるかもしれない。まずは上半身だけで素振りをして、体と腕をシンクロさせる動きから始めるといい。それから下半身の動きを加えるというように段階を経て行うといいだろう。
片手打ちが上手にできるようになれば、体と腕がシンクロすることでスイングの軌道が安定し、ボールも真っ直ぐ飛んでいくようになるはずだ。片手打ちはスイングの調子を測るバロメーターにもなる。ぜひマスターして再現性の高いスイングを手に入れてほしい。