世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム148回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
方向性に優れ、体に負担の少ないスイング
今週、ジョージア州アトランタアスレチッククラブで「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」が開催されている。先日の全米女子オープンでは笹生優花がメジャータイトルを獲得して話題になったが、2019年の全英女子オープン覇者の渋野日向子も再度のメジャータイトル獲得に意欲を燃やし、今年から大幅なスイング改造に取り組んでいる。今までと比べてトップの位置を低くした「ワンプレーンスイング」にすることで、ショットの安定性を求めている。
アメリカの著名なゴルフコーチ、ジム・ハーディーは、「ワンプレーンスイング」と「ツープレーンスイング」という2つのタイプのスイングがあると提唱した。簡単に言うと、ゴルフスイングは「横振り」と「縦振り」のどちらかのスイングに大別できるというスイング理論だ。ワンプレーンスイングは、トップの位置が低く、フラットな軌道なスイング。もう一つのツープレーンスイングは、トップの位置が高く、上から下にクラブを振り下ろすようなアップライトな軌道のスイングとなる。
ワンプレーンスイングは体の回転と、手や腕の軌道が同一になるシンプルな動きになるので、スイング動作の再現性が高く、正確なショットを打ちやすい。しかし、上下に振り下ろすツープレーンと比べると、ヘッドスピードが上がらず飛距離が出にくい。PGAツアーではマット・クーチャーやジェイソン・ダフナーといった、飛距離よりも方向性に優れたショットメーカーがワンプレーンスイングを採用している。
プロであれば、飛距離と方向性のどちらを選ぶかは悩みどころだが、方向性に悩んでいるアマチュアや体に負担をかけたくない年配のゴルファーには、ワンプレーンを試してみることをおすすめする。
竹とんぼの原理で回転スピードを高める
ワンプレーンスイングは、体の回転に合わせて手や腕が同じ方向に動いていく、いわゆる「横振り」のスイングだ。垂直軸に対して体が回転し、腕やクラブはその回転に合わせて動くので、フラットな軌道を描くことになる。体の回転に任せて腕や手を動かせばいいので、腕を振る動作は必要ない。体と腕のシンクロをキープし、垂直軸の回転に合わせて「動かされる感覚」を持つことが大事になる。
ワンプレーンスイングでは垂直軸に対して体を回転させる必要があるが、体を回すというと「腰を回そう」「肩を回そう」などと、自分の筋力で体の回転スピードを上げようとイメージする人がいるかもしれない。
ワンプレーンスイングでは、左右の足裏にかかっている体重を前後に移動させることで生まれる「トルク」を使って体を回転させるようにしてほしい。「トルク」というと難しく感じる人もいると思うが、竹とんぼの原理と一緒だ。竹とんぼを飛ばす際、真ん中の棒を速く回すために、左右の手で前後に逆方向の力を加える。この真ん中の棒を高速で回転させる仕組みをスイングに応用するのだ。
具体的にスイングに置き換えて説明すると、竹とんぼの棒に当たる胴体部分を回すために、左右の足裏にかかっている体重をつま先・かかとの前後方向に移動させて回転力を生み出す。バックスイングでは左足のつま先と右足のかかとに体重をかけ、フォロースルーでは左足のかかとと右足のつま先に体重をかけていくことで、竹トンボを飛ばす原理のように、自分で体を回そうとしなくても自然と体が回転していく。足裏と地面を使って回転力を生み出すことで、下半身の動きに合わせて上半身も回転する。自分の筋肉の力で速く回転しようと力むのではなく、地面をうまく活用したトルクによって回転スピードを高めてほしい。
中級以上の人になると、「地面反力を使って飛ばそう」とダウンスイングで左足を強く踏み込もうとする人もいるかもしれないが、ワンプレーンスイングでは縦の地面反力を使いすぎないほうがいい。ワンプレーンスイングでは体が上下動すると垂直軸の回転がぶれるので、上下の動きや頭の位置が動きすぎることを極力避けてほしい。
ワンプレーンスイングは体と腕のシンクロを高め、足裏の体重移動による「トルク」によって回転する感覚さえつかめば、習得することは難しくない。前傾角度を必要以上にキープしたり、筋力に頼る必要もないので体への負担も少なくてすむ。
ショットの方向性が安定しない人や、加齢によって筋力や柔軟性が落ちてきたという人に適しているスイングなので、そのような人は一度トライしてみるといいだろう。