FASHION

2026.09.20

ルイ・ヴィトン、サカイ、アミリ…2027春夏ファッションを先取り16選【パリ編】

2027 Spring&Summerファッションウィーク詳報、パリ編をお届け。

2027春夏ファッション詳報5選【パリ編】

暑さ対策を超え、エレガンスを愉しむ

もはやトレンドという言葉さえ古い言葉になってしまった。それほど加速する現代において、一過性ではなく普遍性は次なる時代を歩むための手段になる。

ミラノ同様にパリでも熱波による猛暑が襲ったが、ブランド固有の世界観や長く着られるリアルな服づくり、流動的で軽やかな素材感、そしてローライズが主流となりつつあるなかで、自由で解放的なデザイナーのクリエイティヴマインドやビジョンが伝わるかどうかが、これからは重要視されるだろう。

クワイエットラグジュアリーも落ち着き、コンサバ志向からやや一歩踏みだし、独自性の強いシルエットやディテール、マテリアル使いが目立つ。薄手のコートやジャケットも多用され、レザーアイテムも豊作である。重ためアイテムをショーツやシアー感のあるインナーと合わせて、強弱を効かせたスタイルをつくりだすのが肝。

暑さを想定した装いであっても、あくまでファッションを楽しむために、どのようにエレガントに見せるかが2027春夏コレクションの傾向にある。

1.ルイ・ヴィトン|大波という壮大な舞台で、新たな紳士像を提案

今回のショーの舞台には、巨大な波を想起させる演出、そして足元には砂が敷き詰められて、天候をも仲間にする灼熱のビーチが登場した。ファレル・ウィリアムズにとって波は、あらゆる違いを超え人々を受け入れる平等主義の象徴、だという。その波と呼応するサーフィンを、単なるスポーツではなく文化や国境を超えた世界共通のライフスタイルと捉え、今コレクションではサーフコミュニティに焦点を当てている。また、ファレルが見いだすルイ・ヴィトンに流れるダンディズムと合わさることで、ライフスタイルとサヴォワフェールが一体になり、新たな紳士像の提案にもなっている。

2027 Spring&Summer:ルイ・ヴィトン

2.サンローラン|過剰さを抑制することで象徴的な美を表現

過剰さの否定や不在のラグジュアリーをベースに、「抑制としての誘惑」を表現したサンローラン。その象徴として、フランスの小説家であるマルグリット・デュラスなど、具体的な人物像に着目。メゾンの伝統を守りながら決して裏切ることなく、象徴的なエレガンスを現代性とグラマーさで再定義している。 ボタン位置の低いジャケットやナイロン素材のブルゾンなど、精緻な仕立てとプロポーションで構成され、グレーやブラック、ゴールド、オレンジといった配色も印象的。流れるように優雅なスタイルのなかですっきりとしたラインが、彫刻のような男性らしさを表している。

2027 Spring&Summer:サンローラン

3.ディオール|服を通して歴史や時間、性差の壁を飛び越える

ディオールが誇るレガシーやデザイナー個人のアーカイヴを、単なる懐古主義的ではなく、確実に未来を見据えた現代のリアルクローズへと知的に思索する。’27SSは視点の転換、再発明、そして認識の陶酔にフォーカス。重心は低いが、幅広いラペルはどこか肩の力が抜けている。「バー」ジャケットは、2027年クルーズコレクションでも披露した裾から流れるような大胆なフリンジと合わせることで、メゾンの象徴でさえ、放胆に解体、再構築する姿勢を感じさせる。ピンストライプやハウンドトゥース柄はシルクシフォンでプリントされ、伝統の重みを現代の軽やかさへと反転する視点の転換をもたらしている。

2027 Spring&Summer:ディオール

4.セリーヌ|多彩な個性と存在感、あらゆる領域のユース

量感のあるパンツに鮮やかなトップを合わせたボヘミアンな青年たち。スリムジーンズにフラットなダービーシューズ、レザージャケットを纏ったロックキッズ。そして、シャツにネクタイを締め、コンパクトなブルゾンとタック入りのクロップドパンツを着こなすプレッピーな学生たち。そこにヴィンテージのニュアンスが一貫性をもたらす新たなセリーヌのメンズが確立されたといっても大げさではない。日常に根差しながらも研ぎ澄まされたシックなルックは、マイケル・ライダーの青春時代に着想を得たワードローブであり、移ろいやすい世相に反してユースへ向けた提案となっている。

2027 Spring&Summer:セリーヌ

5.ドリス ヴァン ノッテン|現実と虚構が知的に、そして官能的に重なり合う

フランスの詩人ステファヌ・マラルメの『半獣神の午後』を創作の着想にしたドリス ヴァン ノッテン。現実と虚構が絶えず曖昧になり、感覚と理性が滑らかに溶け合う流動的な世界観が、一貫した軽やかさと官能性をもたらしている。例えばハンティングジャケットを、ウォッシュ加工を施したポンジーシルクやウォッシュドビスコース、独特な質感のナイロンといった素材へと置き換えるなど、身体を優しく包みこむかのような親密さを感じさせることによって表現。知的なエレガンス、美意識、柄や色彩の美学を継承しつつ、それを現代的なジェンダーフルイドな官能性へと見事に昇華させていた。

2027 Spring&Summer:ドリス ヴァン ノッテン

6.ヨウジ ヤマモト|明示と暗示、優しさと疑いが両立

ヨウジ ヤマモトは、半世紀にもわたる西洋のクラシックに対する静かな反逆を明示するのではなく、敢えて暗示しているかのようである。それは東洋で育った自らの美学と反逆という視点から揺さぶり続けてきた山本耀司の創作哲学でもある。服は、伝統的なテーラリングの精密な解体と再構築が軸となっている。肩のラインを強調した造形と細部など、身体と布の間に生まれる間を意識した独自のシルエットは今季も冴え渡っている。全体を通して春夏らしい薄手の素材が多用されるなかで、空気を含むような軽やかさはこの時代に向けたデザイナーの優しい眼差しを感じさせ、哲学を表現した仕立ての重厚さとの絶妙なバランスを図っている。

2027 Spring&Summer:ヨウジ ヤマモト

7.アミリ|ハリウッドグラマーたちの眠らない夜の旅

アメリカ西海岸、ロサンゼルスやハリウッドのカルチャーとスタイルが常に流れるアミリ。’27SSもハリウッドグラマーを象徴するような輝きに満ちている。そのアプローチは多彩で、ラミネート加工が施されたジャケット、光沢のあるルレックス糸を織り込んだシルクやリネンのアイテム、ビーディングを施した柄使いなど、クラフツマンシップとアイデアを惜しみなく披露。そして、今回フォーカスしたのは「日没後のロサンゼルス」。それは心地よいマジックアワーの余韻ではなく、そこから幕を開けるハリウッドのディープな夜の姿。この地が秘める欲望や官能をはらんだ退廃的な夜の旅を表現した。

2027 Spring&Summer:アミリ

8.コム デ ギャルソン・オム プリュス|争いの後に訪れる祝祭をさまざまなアプローチで表現

コム デ ギャルソン・オム プリュスは「もし戦争が終わったら」を主題に、争いの終焉と夏の解放感を祝祭的な躍動感で描いているかのようで、軽やかでありながら意志の強さを感じさせる無骨な姿勢を感じさせる絶妙なバランス。太さの異なるストライプのレイヤードや直線的なチェック柄を流れるような不規則な曲線。有機的な輪郭を持つ抽象的な模様へと変化させるユニークな生地の切り替え。それは楽観的なだけではなく、ミステリアスにも映る。終盤には、ブランドのロゴやさまざまなスローガンを多彩なカラーで配したグラフィックなルックが登場。モデルたちが弾けるようにステージを駆け抜け、人生を謳歌する様を表しているかのようでもあった。

2027 Spring&Summer:コム デ ギャルソン・オム プリュス

9.ルメール|遊び心のある折衷スタイル

ルメールは、マットと光沢、構築性と流動性といった相反するエレメントをユニークに、遊び心溢れる対照性を軸に、新たな理想主義に基づく折衷的なスタイルを提案している。特にメンズで主役となったのは、トロピカルなワードローブ。パームリーフ、きらめく海、移ろう空を描いたプリントに、スモーキーなブラウン、ウォルナット、チョーク、サンド、海を思わせるブルーの色調が、熱帯下での生命力を感じさせる。浴衣に着想を得たラップシャツや、軽やかなレザーで再解釈したマンダリンジャケットは、東洋の着想を西洋の仕立てへと上品に翻案されている。

2027 Spring&Summer:ルメール

10.ジュンヤ ワタナベ|大胆な装飾だが、過剰だけではない

「Bling Bling Bling」をテーマに、ヒップホップカルチャーやストリート、スポーツカルチャーを大胆に取り入れたジュンヤ ワタナベ。昨シーズンは、タイドアップで統一されたが、今季はまったく異なる。全員がキャップを被った。キャップといっても抜け感を演出するアイテムとしてスタイリングにアクセントを加えるのではなく、ヘッドピースといっても過言ではないほど。これは「コウタ オクダ」との協業による展開で、ゴールドのチェーンや大ぶりのビジュー、クリスタルによって過剰なまでに装飾され、テーラードジャケットやトラックスーツといった異なる文脈と重ね合わせることで過剰さだけではない、男性像の気品を保っている。

2027 Spring&Summer:ジュンヤ ワタナベ

11.リック・オウエンス|アディダスとの協業で独自の空調服を披露

ショーの舞台はブランドにとってなじみ深いパリの現代美術館、パレ・ド・トーキョー。噴水広場の水盤の中央に橋をかけてランウェイを設置。そこを歩くモデルたちを包みこむように巨大な噴水がアーチを描く迫力のある演出が繰り広げられた。今季、リック・オウエンスのテーマは「STONE」。迫りくる脅威に対し、身を固めたり、
目を背けたりする人々の心理が背景となっている。そのなかで、アディダスとの協業が際立つ。ランニングシューズの他、同社のテクノロジーを結集し、内蔵ファンで膨らむ独自の空調システムを搭載しつつも、ブランドのコアでもある身体の拡張も感じさせるウェアを提案。

2027 Spring&Summer:リック・オウエンス

12.オーラリー|人生を彩る休暇に着目し、日常着とのバランスを図る

人生を彩る「休暇」にフォーカスを当て、日常と非日常が交差する、軽快で解放感に満ちたワードローブを提案したオーラリー。テーラードジャケットや端正なシャツ、リラックスしたシルエットやインナーに忍ばせたカラーリング、無造作に開けられたシャツのボタンはどれもバカンススタイルを彷彿させる。プレイフルな総柄シャツやチャイナトグル仕様のトップス、タンジェリンオレンジやプールブルーなどの鮮やかな色彩などこれまでは積極的に打ちだしてこなかったアイテムも充実。旅先で手に入れたスーベニアを思わせるフルーツや動物などのユニークなアクセサリーは、クリーンなスタイルにアクセントを加えていた。

2027 Spring&Summer:オーラリー

13.アイム メン|竹の翳(たけのかげ)を現代的な衣服で表現

アイム メンの着想は竹をモチーフにした東洋の工芸美術。ショーの冒頭を飾ったのはグラフィックデザイナーの長嶋りかこ氏による「竹翳」をモチーフにしたルック。竹繊維とオーガニックコットンで織り上げた布地に、染料をにじませる「色泣き」技法を用いて捺染し、竹の陰翳が持つ仄かな輪郭が浮かび上がってくる。また今回もハイレベルな素材使いは引き続き見られ、手作業による抜染加工のデニムは水墨画の竹に見られるような濃淡が特徴的。竹細工の「ござ目編み」の構造をジャカード織りで表したテキスタイルは、立体的な表情を持ちつつ、軽さと伸縮性を備えている。

2027 Spring&Summer:アイム メン

14.カラー|異なる人と人の交差をコレクションで表現

カラーのテーマは「Aliens」。突き詰めると人は「誰もが誰かの宇宙人」という発想をベースに、異なるバックグラウンドを持つ存在同士が交差する、人間の営みに焦点を当てている。コレクションはワークウェアやドレス、ウェスタンといった多彩なカルチャーシーンやオケージョンウェアを掛け合わせ、ブランドの代名詞である解体、再構築のアプローチを随所に取り入れる。本来は内側に隠されているはずの裏地を表地に露出させたインサイドアウトや、ポケットなどの仕組みを二次元のグラフィックへと昇華させた、だまし絵的な表現も目を引いた。

2027 Spring&Summer:カラー

15.サカイ|独特のリズムで男性服を見つめ直す

サカイは、メンズの単独コレクションとして展開し、ブランドが描く男性像について問うことが創作の起点となっている。ブルーのシャツはプレッピーにも映るが、首元にはバーガンディのストライプ生地が巻きついており、シャツとネクタイという正統派な着こなしのルールを解体し、ひとつに。またロンドンサウンドの代名詞でもあるSoul II Soulとの共鳴は、今回のコレクションに固有のリズムを加えており、アーカイブ写真とブランド流のグラフィックは当時のカルチャーの熱狂や生々しさを表現している。ブルックス ブラザーズやビルケンシュトックとの協業もブランドの品格に合ったものとなっている。

2027 Spring&Summer:サカイ

16.ソウシオオツキ|レイヤードされた個性と提案はブランドの些細なロマンである

初のパリでの発表だからといって姿勢を崩すことはない。それは服にも表れている。リゾートへのメランコリックな心情、着想源となったサルバドール・ダリの代表作。それらを丁寧に汲み取ったリネン地、曲がったピークドラペルやシャツの襟先、外したままの湾曲したベルト。しかし、それらはすべて大月壮士の個性から派生されている。ソウシオオツキのリゾートとは本来のリゾートと異なるが、それもブランドの個性になる。緩んだネクタイは微細なドレープに映り、パンツの裾の折り返しがほどけたようなディテールもルーズにならない絶妙な按配。ブランドにとっての些細なロマンなのかもしれない。

2027 Spring&Summer:ソウシオオツキ

TEXT=関口究

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