物欲を刺激して買いたくなる、所有することで中毒性を刺激する、そして、五感を刺激するために纏う――。そんな刺激のある服を特集する。【特集 刺激のある服】
ファッションはアートだ! 刺激のある服
より自由になってきている昨今のファッション。
フォーマルにカジュアル、モードやストリートといった枠に収まらないほど、ジャンルは細分化され、同時に、またそれらが融合することでボーダーレスに。結果、大きなトレンドは生まれにくくなった。
そんな時代だからこそ欲しいのは、ついコレクションしたくなるようなアートのような服。美しくクールで、個性を持ち、唯一無二で、圧倒的なインパクトのある刺激的な服だ。
それが欲しくなるのに理由はない。ただ存在するのは、つくり手の溢れんばかりの情熱、欲求、美学。
例えば、ここで紹介するセリーヌのセットアップもロエベのグリッターデニムも、眩いばかりの光沢を放ち、ランウェイを歩いてきた瞬間、見る者を刺激し、心を大きく揺さぶった。
1.セリーヌ|眩いばかりの光沢を放つセットアップ
2.ロエベ|見る者を刺激するグリッターデニム
3.ヴァレンティノ|ホワイト&ショーツで魅せる新しきフォーマル
フォーマルの定義が変わりつつある今ならば、必ずしもブラックが正解でなくていい。ジャケットもパンツもともに白。フォーマルを再定義する純白スタイルは、さらにショーツとで、またブートニエール代わりのフラワー刺繍とで、マスキュリニティにおいても大胆に変革する。
4.コム デ ギャルソン|常識の範疇を超えたテーラードジャケット
上下に連なるテーラードジャケット。常識に囚われず、新たな世界への興味を「現実を越える」というテーマに込めた今季を、この1着は示す。グリーンのフリンジや、ウエストにあるもうひとつのラペルがまさに型破りを表明する。
5.ドリス ヴァン ノッテン|色気や渋さを醸すラップスカート
この時代に、わざわざジェンダーレスと謳うことに意味はない。パンツの上からレイヤードしたラップスカート。そのデザインにメッセージ性を問うことも、今となっては無粋。シースルーのインナーにジャケットを羽織った姿から漂う色気も、刺激的にして違和感なく受け止められる。
6.サカイ|前後で印象の変わるプリーツショーツ
どちらとも取れるではなく、どちらも含まれると言ったほうが正しいかもしれない。フェイクレザーを使ったショーツは、バックから見ると一転プリーツスカートのようなデザインに。ハイブリッドでありつつも、その仕上がりは実に自然で、単なる組み合わせではなく調和されたデザインに仕上がっている。これぞまさに、サカイなればこそ。
7.サンローラン|細部で魅せる美しきパワーショルダー
プロトコルとしてではなく、ファッションとしての存在意義を強める昨今のスーツ。’80年代を想起させるこんなパワーショルダーに興味が湧く。原則に囚われずに、インナーにもレオパード柄のホルターネックを合わせれば、誇張するワイドラペル&ローゴージも相まって、上品ながらアバンギャルドに。
8.ジョルジオ アルマーニ|素肌で感じたくなるほどの極上の素材
心地よい生地感を、肌で直接感じる。植物由来のビスコースレーヨンにアセテートをブレンドした生地は見るからになめらか。ジャケットとパンツをセットアップで堪能すれば、それはまるで女性の柔肌に抱かれるかの如く。その感覚だけで十分に刺激的だ。さらに小紋柄があしらわれることで、見る者にも官能的な刺激を与える。
この記事はGOETHE 2024年5月号「特集:刺激のある服」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら