劇作家・井上ひさしの生誕90年を迎えた今年、井上が「この作品が、わたしはほんとうに好きです」と言った演目『太鼓たたいて笛ふいて』が紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演中だ。
舞台『太鼓たたいて笛ふいて』が絶賛上映中
1935年に若き日の貧しくも奔放な浮草暮らしを詩情豊かに描いた『放浪記』で、華やかに文壇に登場した林芙美子。そんな林芙美子の日中戦争が迫る1935年から第二次大戦を経て、47歳で心臓麻痺によって急逝する戦後1951年までの16年間の軌跡をたどる舞台『太鼓たたいて笛ふいて』。
世間の風は戦争へ突入すべく、日増しにきな臭さが強まり始めていくなか、芙美子が小説を書くことに行き詰まりを感じていた。そこに追い打ちをかけるように出版した本が発禁処分に。さらに芙美子につきまとい、金儲けを企むプロデューサー三木孝が “戦さはもうかるという物語”と芙美子を説得し、従軍記者へと仕立て上げていく。
そして芙美子は内閣情報部と陸軍部よりシンガポールやジャワ、ボルネオに派遣され、“太鼓たたいて笛ふいて”自国の行いを正当化する記事を書く役目に身を投じていく。しかし芙美子が戦地を訪れ、目にしたのは驚愕の実態だったーー。
2002年の初演から芙美子を演じてきた大竹しのぶさんは本公演への想いをこう語る。
「この作品の芙美子は、戦争を美化し兵士を戦地に送り込んだ自分の行動は間違っていたと認め、責任を取ろうとする。井上ひさしさんが書いた芙美子の生き方や、言葉の一つ一つをきちんとお客様に伝えることが、私達の役目だと思います。この芝居は、これから先もずっと上演すべき作品だと思いますし、次に繋げるためにも、一回一回を大切に演じたいです」
数々の舞台に出演してきた大竹さんがここまで熱い想いを込める『太鼓たたいて笛ふいて』。劇場でその想いをしかと受け止めたい。
東京公演の後は大阪、福岡、愛知、山形へと巡っていく。チケットの予約はこちらより。