韓国ドラマや映画において、若手にも負けない人気を誇るベテラン俳優たち。その渋さと色気、作品に深みを与える存在感で観る人を魅了している。そんな“イケオジ俳優”が出演するこの秋見るべき韓国映画を紹介。
歴史を揺るがしたクーデターを元にしたフィクション映画
日に日に秋の気配が感じられるこの頃、渋い男たちの活躍を見て気持ちを奮い立たせたい。そう思っているなら、映画館に足を運んでみるのはいかがだろうか。
40代以上のおじさん俳優たちを“推し”として応援する若い女性が2022年頃から増えている韓国では、渋いオーラ炸裂のイケオジ俳優たちがエンタメ界で大活躍中だ。
かつては「絶対にヒットしない条件」とも揶揄されてきた中年俳優ばかり出てくる映画が、メガヒットするという現象も起きた。そのメガヒット作というのが、日本で2024年8月23日より上映中の『ソウルの春』である。
韓国第11・12代大統領の全斗煥(チョン・ドゥファン)が実際に起こした軍事クーデター「12.12軍事反乱」をもとにした、政治的でかなり男臭い映画だ。
舞台は、独裁者として名高い大統領(=朴正煕/パク・チョンヒ)が側近に暗殺され、民主化ムードが隆盛していた1979年の冬。新たな独裁者の座を狙う権力の亡者チョン・ドゥグァン(全斗煥を文字った)と、国を守ろうと一人立ち向かった首都警備司令官イ・テシンによる9時間の激しい攻防が、重厚かつスリリングに描かれる。
チョン・ドゥグァン役は『哭声/コクソン』『工作 黒金星と呼ばれた男』などのファン・ジョンミン(54)。イ・テシン役は『私の頭の中の消しゴム』『鋼鉄の雨』で知られるチョン・ウソン(51)が務め、圧巻の演技合戦を繰り広げた。
ほかにも、『ミセン-未生-』『財閥家の末息子』のイ・ソンミン(55)、『夫婦の世界』のパク・ヘジュン(48)、『D.P. -脱走兵追跡官-』『ムービング』のキム・ソンギュン(44)ら錚々たる実力派おじさん俳優たちが勢揃い。彼らの迫真の演技が、観客を臨場感と面白さの極致に至らせる。
韓国では『ソウルの春』を観るために国民の4人に1人が劇場に足を運んだという。世界の映画賞を席巻した『パラサイト 半地下の家族』を超える1300万人の観客動員を記録し、2023年の観客動員数1位の映画になった。そのような熱量に支えられ、2025年3月にアメリカで開催される第97回アカデミー賞国際長編映画賞部門の韓国代表作品にも決定している。
日本が獲得した金メダルの真実、胸をアツくするマラソンシーン
『ソウルの春』と同じく実話をベースにした、『ボストン1947』(2024年8月30日より上映中)にも注目してほしい。
『神と共に』シリーズや『1987、ある闘いの真実』のハ・ジョンウ(46)と、『イカゲーム』シーズン2への出演が決まったイム・シワン(35)による、胸がアツくなる感動作だ。
1936年ベルリンオリンピックのマラソン競技で日本代表として表彰式に立ったソン・ギジョン(ハ・ジョンウ)と、彼に憧れていた才能あふれる若きマラソン選手ソ・ユンボク(イム・シワン)。チームを組んだ2人が、祖国の国旗を胸につけて走るべく、アメリカ軍政下の韓国でさまざまな困難を乗り越え、歴史あるボストンマラソンに出場する。
見どころはラスト15分間のマラソンシーンだ。体脂肪を6%まで落として撮影に臨んだイム・シワンの美しいフォームと、彼を見守るハ・ジョンウの人間味あふれる表情が、観る人の感情を揺さぶる。壮大なスケールで重厚なヒューマンドラマに定評がある『ブラザーフッド』のカン・ジェギュ監督が、8年ぶりにメガホンをとってキャリアと才能を注ぎ込んだ力作だ。
大ヒットクライムアクション「犯罪都市」シリーズ第4弾
来る9月27日には、“マブリー”の愛称で日本でも人気のマ・ドンソク(53)が企画、制作、主演を務める『犯罪都市』シリーズの第4弾『犯罪都市 PUNISHMENT』も日本上陸する。
2024年2月に日本で公開された前作『犯罪都市 NO WAY OUT』では、日本のヤクザを一掃した怪物刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)。拳ひとつで悪党たちを撃ち破るその姿は、シリーズを追うごとに進化している。
マ・ドンソクの大ヒット作『悪人伝』(2019)では刑事役だったキム・ムヨル(42)を悪役に起用した今作は、最強ワンパンチアクションがさらなる進化を遂げた。シリーズ史上最高にキレた怒りの拳が国境を越え、国際オンラインカジノ組織の殲滅に動き出す。
韓国ではシリーズ史上最高のオープニング成績を記録し、累計動員数4000万人を突破した。もはや韓国を代表するアクション・シリーズと言っても過言ではない。溜まったストレスを吹き飛ばしたい人は必見だ。
秋の色を濃くするイケオジ俳優たちのアツい演技を、ぜひ堪能してみてほしい。
■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。