最近、グローバル企業が販促・PR活動において、K-POPアーティストを起用する事例が相次いでいる。ビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
コカ・コーラの新フレーバーはK-POP味!?
K-POPって何味だろうか?
その答えが、まもなくわかるかもしれない。コカ・コーラがK-POPファンへのリスペクトを込めた期間限定フレーバー「コカ・コーラ ゼロ クリエーションズ K-Wave」を世界36ヵ国で発売する。
日本は2024年3月11日(月)より全国で期間限定発売。掲げられたキャッチコピーは「飛び込もう、彼らの世界へ。」だ。
ラベルは紫とミント色の鮮やかなグラデーションがベースになった、ポップな印象のデザイン。きっとK-POPファンに馴染みのあるカラーを選定したのだろうが、注目すべきは、背景に白く施された「コカ・コーラ」のハングル表記だ。
コカ・コーラの世界共通デザインに特定の国の言語が入るのは、138年におよぶ同社史上初めてだという。
韓国と日本でコカ・コーラのブランドマーケティングを担当するクォン・ジョンヒョン常務は、「ロゴの位置や、ハングルのロゴを導入することなど、K-POPファンになじみのある新しい試みをたくさん取り入れたデザイン」と紹介した。
ちなみに世界でのフレーバー名は「K-Wave」だが、韓国ではなぜか「爽やかな推しの味」と表記しているのが面白い。
BTSやNewJeansなどK-POPスターを起用するグローバル企業
韓国コカ・コーラは2023年から新しいブランドモデルとしてガールズグループNewJeansを起用し、「コカ・コーラゼロ」の広告キャンペーンを実施している。
テレビCMやネット広告はもちろん、NewJeansが「コカ・コーラ、マシッタ(美味しい)」と歌うコラボ楽曲(=CMソング)「Zero」もリリースした。
世界的K-POP人気を反映してか、コカ・コーラは「ブランドを前面に出す」というこれまでの広告戦略ではなく、あくまでもNewJeansにフォーカスを当てている。
実際に「Zero」のミュージックビデオはコカ・コーラではなく、NewJeansのYouTubeチャンネルで公開された。ミュージックビデオのなかでも商品の露出は最小限に抑えたため、まるで「NewJeansがコカ・コーラを宣伝してあげている」ようにも見える。
当初、多くのファンが「サプライズで新曲が出た!」と勘違いしたそうだが、無理もない。まるでコカ・コーラがNewJeansの人気に乗っかるという格好だが、これが意外と効果抜群だった。
GoogleとNAVERでは「コカ・コーラ通販」「コカ・コーラ定期配送」など、購入につながる可能性の高いキーワードの検索数が急増(Ascent Korea調べ)し、NewJeansのグッズを買う感覚でコカ・コーラを購入する人が増えたからだ。
NewJeansの人気に乗っかったのはコカ・コーラだけではない。
2021年にBTSとコラボして世界的に話題を呼んだマクドナルドも、2023年2月からNewJeansを広告モデルに起用して売上をぐんと伸ばした。
NewJeansが宣伝した「マッククリスピーバーガー」は累計1000万食を突破。韓国マクドナルドの2023年の売上は1兆ウォン(約1000億円)を超え、BTSとのコラボで史上最高売上の8679億ウォン(約868億円)を記録した2021年を軽く上回った。
コカ・コーラもNewJeansとのコラボで強い手応えを感じたのだろうか。今回の「コカ・コーラ ゼロ クリエーションズ K-Wave」では、より多くのK-POPアーティストを巻き込んでいる。
TWICEの生みの親であり、JYPエンターテインメントの創設者であるJ.Y. Park。そしてStray Kids、ITZY、NMIXXらJYPエンターテインメントを代表する人気グループたちが「コカ・コーラ ゼロ クリエーションズ K-Wave」とコラボレーションした楽曲「Like Magic」をリリースする。
NewJeansを起用した時と同じく、ミュージックビデオはJYPエンターテインメントのYouTubeチャンネルで公開予定だ。コカ・コーラは、Stray Kids、ITZY、NMIXXをはじめとしたJYPエンターテインメントのさまざまなアーティストたちが出演する「K-Waveコンサート『人気歌謡』」(2024年6月に韓国で開催予定)にもスポンサーとして加わり、アーティストに献身するK-POPファンに“魔法のような”瞬間をプレゼントする。
マーケティング業界はK-POPファンに対して「高い忠誠心と信頼度を持っている」と評価しており、多くのグローバル企業がK-POPアーティストをモデルに起用してブランドパワーを強化しようとする動きを見せているという。K-POPアーティストと手を組んでK-POPの世界に飛び込む次のグローバル企業はどこか、気になるところだ。
■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。
■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。