ENTERTAINMENT

2023.11.10

違約金は10億円!? 『パラサイト』イ・ソンギュンのスキャンダルの代償は?

映画『パラサイト』出演俳優イ・ソンギュンの麻薬スキャンダルが韓国エンタメ業界で波紋を広げている。ドラマやCMから降板。映画のお蔵入りなどで支払う違約金はいったいどのくらいになるのだろうか。ビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは

韓国ドラマ『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~』
©STUDIO DRAGON CORPORATION

映画『パラサイト』の父親に薬物疑惑

世界的にヒットした韓国映画『パラサイト 半地下の家族』でお金持ち一家の父親・パク社長を演じ、ドラマ『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』では理不尽な世の中に翻弄され、報われない日々を生きる若い女性を気遣うドンフンを演じた俳優イ・ソンギュン(48歳)。

日本でも知られる大物俳優となった彼に麻薬使用疑惑が浮上し、韓国エンタメ業界が大きく揺れている。

2023年9月、ソウル・江南(カンナム)の会員制高級クラブで麻薬が横行しているとの通報を受けた警察の捜査によって、イ・ソンギュンも麻薬を使用した疑いが持たれた。

イ・ソンギュンは内偵(立件前の捜査)を受けていたが、10月23日に被疑者の身分に切り替えられ、10月25日には家宅捜索が行われるとともに、国立科学捜査研究院での毛髪と尿の精密検査を受ける。

10月28日には警察署で約1時間におよぶ取り調べを受け、11月3日に公開された精密検査の結果、毛髪と尿からは大麻など麻薬成分が検出されず陰性反応を示した。

しかし、すね毛や他の検査が進んでいるため、現時点ではイ・ソンギュンの麻薬使用疑惑についてなんとも断定できない。

イ・ソンギュンといえば普段からダンディなイメージで好感度が高かった俳優だけに、疑いを持たれただけでも世間にかなりの衝撃が走っている。

そしてエンタメ業界も早急に動き出した。

違約金は出演料の2、3倍

麻薬使用疑惑が浮上した時、イ・ソンギュンは『脱出:PROJECT SILENCE』『幸せの国』(ともに原題)という2本の主演映画の公開を控えていた。

特に『脱出:PROJECT SILENCE』は、2023年のカンヌ国際映画祭のミッドナイトスクリーニング部門にも出品された注目作品だ。主演を務めたイ・ソンギュンはカンヌのレッドカーペットも踏んだ。

約200億ウォン(約20億円)の制作費が投じられたと言われるこの映画は2024年初頭に韓国で公開される予定だったが、主演俳優にまさかの麻薬スキャンダル。配給会社の関係者は「もう少し捜査状況を見守る」と慎重な立場を示している。

2023年10月18日から11月14日まで韓国の大手シネコン・ロッテシネマで開催されるポン・ジュノ監督特別展にも、火の粉が降りかかった。

イ・ソンギュンが出演した『パラサイト』の上映が急遽取り消しになったのだ。

韓国映画の最高傑作とも呼ばれる『パラサイト』だが、主演俳優の麻薬スキャンダルは大きな汚点となってしまった。

それだけではない。イ・ソンギュンは新ドラマ『ノー・ウェイ・アウト』(原題)にも主演する予定だったが、クランクイン直前に自主降板。制作会社は急遽代役探しに追われた。

イ・ソンギュンの麻薬疑惑に最も早く反応したのは、広告業界。

彼の妻で女優のチョン・ヘジンと夫婦でモデル出演していた大手キャリア・SKテレコムのCMは放映中止になった。

また、ある健康補助食品会社はイ・ソンギュンをモデルに起用し大々的にポスターを展開していたが、薬局などに貼られた彼の顔入りポスターはせっせと剥がされている。

近年、韓国エンタメ業界では映画や広告に出演した俳優やタレントが民事・刑事事件に巻き込まれた場合、出演料の2、3倍におよぶ違約金を支払わなければならないという条項を契約書に明記するのが一般的だという。

また、法的処罰を免れたとしても、広告主のイメージを毀損しただけで損害賠償を請求されることもあるそうだ。

それもあって、芸能関係者の間ではイ・ソンギュンが広告主に支払うべき違約金の規模が100億ウォン(約10億円)という話も出ている。

はたしてイ・ソンギュンは莫大な違約金を抱え、トップ俳優からも転落してしまうのか。引き続き動向を注視したい。

■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。

 ■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。

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TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

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