役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
交わることのない家族が出会った時、事件が巻き起こる!?
ついに2020年! 東京オリンピックにパラリンピックと、大きなイベントに注目が集まる年になりますが、1月10日から始まる深夜ドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』において、滝藤、世の上昇気流に乗れず、職なし、金なしの中年プー太郎を絶賛演じております。兄の家に転がりこむ弟役でいわば居いそうろう候。あ、英語ではなんて言うんだっけな。調べてみたら “parasite(パラサイト)” 。
そこで今回はポン・ジュノ監督の新作『パラサイト 半地下の家族』をご紹介。こちらは “寄生虫” の意味合いがぐっと強いブラックコメディです。
監督のポン・ジュノは『殺人の追憶』『グエムル-漢は ん江が んの怪物-』と韓国の時事ネタを鋭く分析した作品が多く、私も大ファン。今回は日本とも共通する格差社会が題材です。主人公一家は半地下の住居に住み、生活空間は薄暗く衛生的にも最悪。職もなく、家族総出で安い内職に励む日々。しかし、長男に社長令嬢の家庭教師の話が舞いこみ、坂の上に佇む大豪邸へ通うことに。長男が大学受験を控える令嬢の心を摑み、ジワジワと社長一家に食いこんでいきます。これだけでもゾワゾワしますねぇ。
読者の皆様は富裕層が多く、家に得体の知れない者に入りこまれる側として見る方が多いことでしょう。となるとコメディというよりもホラーですね(笑)。
やはりハズレなしのポン・ジュノ。今回もまた魅力的な俳優を揃えています。なかでも、妹役を演じるパク・ソダムさんの存在は心を奪われるほど、妖艶で謎めいておりました。そして、期待を裏切らず見事にやってくれましたよ!
貧乏一家の父親役ソン・ガンホ。彼は成功した俳優ですから、生活レベルも高いはず。いい服を着て、いい物を食べ、いいクルマに乗っているはず。なのになぜ、ここまで貧乏が板についた中年男の悲哀をリアルに演じられるのだろうか……。こんな俳優、日本にはいないですよ。ん?待て待て、いた!いました! “コタキ兄弟” の兄、古舘寛治さんです。日本のソン・ガンホ、古舘寛治。褒めすぎか……。ぜひとも両方、ご覧ください!