東京が初夏を迎える2022年6月3日(金)、4日(土)、5日(日)の3日間、緑豊かな日比谷公園と公園周辺の施設で「日比谷音楽祭2022」が開催される。テーマは「ボーダーレス」。無料で親子孫3世代が、あらゆるジャンルの音楽を楽しめる。出演者もボーダーレス、観客もボーダーレス、そんなイベントが日比谷音楽祭だ。【連載 日比谷音楽祭がすごい】
「日比谷音楽祭2022」という亀田誠治の挑戦
今年も開催される日比谷音楽祭。その実行委員長は音楽プロデューサーでベーシストの亀田誠治。ニューヨーク出身の亀田は、マンハッタンのセントラル・パークで毎夏開催される「サマーステージ」から日比谷音楽祭を発想したという。
「サマーステージは、6月から10月の週末にセントラルパークをはじめ街中で開催されています。ジャンルや世代を超えた音楽家たちの歌や演奏を無料で楽しめるイベントです。エルビス・コステロやマライア・キャリーが歌ったり、ニューヨーク・フィルハーモニックが演奏したり。ロックもジャズもクラシックも演奏され、歌われます。若いカップルも、手をつないだお年寄りの夫婦も、家族連れも、世代や国籍も超えて誰もが楽しめるコンサートです。ああいう祭典を日本でもやりたかった。そこから日比谷音楽祭を発想しました」
しかし2019年の日比谷音楽祭は、2日間で10万人を集めるなど成功を収めたものの、その後の開催は新型コロナウイルスの感染拡大で困難を極めた。2020年は中止。2021年も観客を集めることはできず、配信のみの開催。それでも2日間の開催で延べ視聴者数は15万人、総再生回数は約51万7000回を記録した。
そして2022年──、有観客とオンラインの生配信で行うハイブリットの日比谷音楽祭がいよいよ近づいてきた。
会場のチケット代は無料。とはいってもイベントを開催するには莫大なお金がかかる。これまでスーツを着た経験がほとんどなかった亀田は、慣れないネクタイを締めてスーツを着て企業を訪問。協賛を募った。助成金の申請書も書いた。そして、クラウドファンディングで資金も集めた。
「ニューヨークのサマーステージでも、個人による寄付が大きい。日本でも同じようなことをやってみたいと思っています。今年は目標金額を2000万円に設定しましたが、実は現在ペースが上がらず苦戦しています。でも僕は諦めません。“ローマは1日にして成らず”。今回の日比谷音楽祭は、これまでたくさんの方にクラウドファンディングでご支援をいただいたからこそ、今年も開催することができるのです。来年へ継続開催をつなげていくためにも、みなさんご支援よろしくお願いします。
みなさんが日比谷音楽祭を応援したい! と思えるように今年も、さまざまなリターンを用意しました。『支援者限定オンラインイベント』を通じて、2021年の支援者の皆さんと一緒に考えたリターンを実現します。さらに、日比谷音楽祭2022オリジナルグッズ、アーティストとのスペシャルコラボ、特別な音楽体験ができる体験型のリターンなど、ここでしか手に入らないものです」
今年の出演者も豪華な顔ぶれ。DREAMS COME TRUE、藤井フミヤ、石川さゆり、KREVA、MIYAVI、角野隼斗、井上芳雄、新妻聖子……。クラシック界、純邦楽界、演劇界からもアーティストが集まる。一級の演奏をチケット代の心配なく楽しめる。まさしくボーダーレスな夢の音楽祭だ。
「今日本で考えられる最高レベルのアーティストがそろいました。それぞれどんな曲を披露するか、すべての出演者と僕が直接話し合いをして準備をしています。時代を反映させ、心温まり、勇気がでて、希望が持てる3日間になるはずです」
今回特筆すべきことのひとつに、従来の2日間から3日間に開催期間が増えたことがある。6月3日の金曜日の夜に日比谷野外大音楽堂で「Friday Night Acoustic」と銘打ったライヴを行う。
「野音(日比谷野外音楽堂)は、来年で100周年を迎えます。でも、もう何十年も土曜、日曜、祝日だけしか使用できません。周りへの音量への配慮です。東京のド真ん中にある日比谷公園の周囲には各種官庁があり、企業があり、ホテルもあります。働いている人が多い平日に、大音量で音楽をやるわけにはいかないんですよ。アーティストは、最高の立地で、歴史もある野音で演奏してみたい。でも利用するには、現状、数百倍の倍率の抽選に応募するしかありません。
そこで試験的に、6月3日の夜、19~20時限定でアコースティックライヴを行う。平日に利用できないという現在の基準は、実は数十年前のデータに基づいています。でも、音響も音質も技術は格段に上がっている。技術が進歩しているのに、昔のままの基準で利用できないのは残念ですよね。だから、日比谷音楽祭で実験することになりました。これは東京都のお墨付きです」
日比谷音楽祭では周辺施設や企業への音量の影響が少ないことを実証するとともに、音量制限しても楽しめるイベントになるか、つまり興行として成立するのかどうか、リアルタイムで音量調査隊と連携を取りながら確かめる。メンバーは亀田が厳選した。奇妙礼太郎、高橋優、TOSHI-LOW、Rei、The Music Park Trio(ベース・亀田誠治、ドラムス・河村“カースケ”智康、キーボード・皆川真人)だ。
「僕が参加アーティストひとりひとりに目的と意義を説明し、全員が快諾してくれました。平日も野音を利用できるようになることを誰もが願っているんですよ。このバンドならば、微妙な音量調整を意識しながら高いレベルの演奏ができます。「Friday Night Acoustic」には、“ウェルカムMC”としてDJダイノジにも参加してもらいます。彼らのアナウンスで客席の拍手の音量もみんなで楽しみながらコントロールします。ステージと客席の音量を正確に計測して、平日利用へ向けてのデータとして活用するわけです」
ゲーテでは、日比谷音楽祭2022開催までの間、出演アーティストについて亀田に紹介してもらう記事を公開していく。
【ドリカム】『唯一無二の存在。野外フェスにおけるプロ中のプロ』亀田誠治
Seiji Kameda
1964年生まれ。音楽プロデューサー・ベーシスト。これまでに数多くのミュージシャンのプロデュース、アレンジを手がける。2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、ベーシストとして参加(’12年に解散、’20年に再生を発表)。’09年、自身初の主催イベント“亀の恩返し”を日本武道館にて開催。’07年の第49回、’15年の第57回日本レコード大賞にて編曲賞を受賞。’21年には映画「糸」にて日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。’19年より「日比谷音楽祭」の実行委員長を務める。