俳優・滝藤賢一による本誌連載「滝藤賢一の映画独り語り座」。約6年にわたり続いている人気コラムにて、これまで紹介した映画の数々を編集部がテーマごとにピックアップ。この年末年始に、あなたの人生と共鳴する一本をご提案! 今回は、青春映画編
『グッバイ、サマー』
ひさかたぶりに思い出す甘酸っぱい夏
さてさて、夏休みって最高に楽しいんだぜ!と思い出させてくれるのが、この『グッバイ、サマー』。『エターナル・サンシャイン』など不器用な男の恋愛映画を撮ってきたミシェル・ゴンドリーの自伝的な映画です。彼が14歳の時、かなえられなかった悪友との夢を、映画を作ることによって実現させたそう。なんてニクいことをするんだ!
主人公は廃材を工夫して作った小屋つきのクルマで、バカンス先の女の子に会いに行くという無謀な冒険に出てしまいます。法的に許可が下りていないのに公道を走ったり、クルマを家に見立て、警察の目をごまかしたり、やっていることはむちゃくちゃだけど、こんなことができる年齢は限られていますよね。自分の子供には、これくらいの想像力を持ってほしいです。まぁ本当にこれをやったら普通に補導されると思いますが――。
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『レディ・バード』
現実より夢のウェイトが、ずっと大きかった時代
この映画を観て、自分の激しすぎる反抗期を思いだしました。私は典型的な内弁慶タイプ、家では手のつけられない悪たれ小僧でした。ついに小学校低学年の時に、母親に家出されてしまったことも(すぐにちゃんと帰ってきましたが)。
この映画のお母様、言うことすべて正しい。でも正しすぎて息が詰まる。娘に対してひと言で済めばいいのに、二言三言多い。夫も長男も失業中で、ひとりで家計を背負っているから、つい口をついて出てしまう。「うちは貧乏なんだから」。同じ親としては彼女がそう言いたくなる気持ちは痛いほどわかります。
しかし、これを言われるほうは面白くない。主人公の女子高校生"レディ・バード"にとっては「だから何?それ私と関係ある?」って感じでしょう――。
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『スケート・キッチン』
親の心子知らず、子の心親知らず。だからこそ、お互いが歩み寄らなければ。
20年以上前に『KIDS』という映画が公開されたのを覚えていらっしゃるでしょうか。ニューヨークのスケートボーダーたちの無軌道な生活を追った話でしたが、当時の私は彼らの日常生活に憧れ、夢中になりました。
この女の子で結成された『スケート・キッチン』も実際のボーダーたちが自分たちの実体験を演じています。当然ですが、みんなスケートが上手い。野郎たちと場所の取り合いの喧嘩もしょっちゅう起きますが、一歩も引かない彼女たちの姿勢に、たくましく育った娘を見るようで思わず涙しました(笑)。
徹底した取材から生まれた脚本なので、セリフのひとつひとつにリアリティがある。そして、彼女たちの芝居が新鮮で生き生きしている。車道を自由にライドする姿にも目を奪われます――。
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『シンク・オア・スイム』
中年男たちが懸命に頑張る姿はカッコいい!
滝藤は先日まで(2019年6月時点)ドラマ『東京独身男子』で敏腕弁護士役を演じていました。ピシッとしたスーツを着こなすため身体を絞ったり、仕草を柔らかくしたりとカッコよさを追求していたわけです。顔はどうにもなりませんからね(泣)。
ところが、フランス映画『シンク・オア・スイム-イチかバチか俺たちの夢-』を観て、ダメ男が懸命に頑張る姿もとても魅力的だなと感銘を受けました。垂れ切ったお腹を恥じない俳優陣の堂々とした佇まい。人は見た目ではないんですよ……。中年男性版『ウォーターボーイズ』、プール版『フル・モンティ』、人生に躓いている中年男性たちがシンクロナイズド・スイミング(最近ではアーティスティックスイミングというそうです)の世界選手権を目指すお話です――。
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Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。初のスタイルブック『『服と賢一 滝藤賢一の「私服」着こなし218』』(主婦と生活社刊)が発売中。滝藤さんが植物愛を語る『趣味の園芸』(NHK Eテレ)も放送中。