役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
中年男たちが懸命に頑張る姿はカッコいい!
今年ももう半分が過ぎてしまいました。皆さま、いかがお過ごしですか。滝藤は先日までドラマ『東京独身男子』で敏腕弁護士役を演じていました。ピシッとしたスーツを着こなすため身体を絞ったり、仕草を柔らかくしたりとカッコよさを追求していたわけです。顔はどうにもなりませんからね(泣)。
ところが、フランス映画『シンク・オア・スイム-イチかバチか俺たちの夢-』を観て、ダメ男が懸命に頑張る姿もとても魅力的だなと感銘を受けました。垂れ切ったお腹を恥じない俳優陣の堂々とした佇まい。人は見た目ではないんですよ……。中年男性版『ウォーターボーイズ』、プール版『フル・モンティ』、人生に躓つまずいている中年男性たちがシンクロナイズド・スイミング(最近ではアーティスティックスイミングというそうです)の世界選手権を目指すお話です。
『潜水服は蝶の夢を見る』のマチュー・アマルリック演じる主人公。うつ病で2年も失業中で、息子には無能呼ばわりされる始末です。救いは、温かく見守ってくれる妻と、まだ状況が把握できていない幼い娘の存在。こういう時、身近にいてくれる人によって、今後の人生が大きく変わるんだなと考えさせられました。私、滝藤も他人事ではないぞ……。
脇のキャラクターの書きこみも豊富です。ギョーム・カネが演じる工場長の美しき母親は強烈。老人ホームから引き取り介護を始めるが……。おっ、これも他人事ではないぞ……。
『ベティ・ブルー』で主人公を演じたジャン=ユーグ・アングラード。いまだにロックスターを夢見る男を演じています。しかし、太ったなぁ。円熟味を増し、超セクシーになられている。こういう年のとり方、憧れます。
本作では中年の恋愛も描いているのですが、この年で想いが行き違うと、とんでもないことになる。若い頃のように好きだけでは成立しない。しかし、この作品、うつ病、介護、ストーカー、一見ヘビーになりそうなテーマもコミカルに描いているので、とても観やすく楽しめます。中年オヤジが頑張る作品。やれるなあ、企画出そう。
『シンク・オア・スイム-イチかバチか俺たちの夢-』
昨年フランスで400万人動員し、累計40億円を記録した話題作。40、50、60代の実力派の人気俳優が集結し、全力でシンクロ競技を行う姿が反響を呼んだ。フィル・コリンズなどの80年代のヒット曲を用いたBGMもポップで楽しい。脚本・監督は自身も俳優のジル・ルルーシュ。
2018/フランス
監督:ジル・ルルーシュ
出演:マチュー・アマルリック、ギョーム・カネ、ブノワ・ポールヴールドほか
配給:キノフィルムズ
7月12日より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開