役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!
本当に恐ろしいのはゾンビか人間か
韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の4年後を描くと聞いて、無条件に「観たい!」と飛びついたのが、今回ご紹介する『新感染半島 ファイナル・ステージ』です。
発想の独創性に度肝を抜かれた第1作。今でも鮮明に記憶が残っている。高速鉄道内、凶暴化するウイルスに感染した人間が爆発的に増えていくノンストップホラー。人間がいかに恐ろしい生き物かを問いて、韓国映画の力をまざまざと見せつけられた。滝藤の心にめちゃくちゃ響いた作品です。
そして今作。予告篇の時に、ん? 前作と随分テイストが違うなあ……。『北斗の拳』のような世紀末感強いけど大丈夫かしら? と疑心暗鬼になりながらも観ると、いやいやいやいや、冒頭から一気に引きこまれるストーリー展開。さらには韓国映画界の俳優の層の厚さに唸ります。主人公とともに闘う姉妹とその母。毎度のことながら女優陣がとてつもなく魅力的。そして堪らないのがこの滅びかけている世界を我が物顔で仕切っている悪の集団。そのボスふたりの小物っぷりったらもう。『北斗の拳』の世界ならケンシロウに経絡秘孔をつかれて、“ひでぶっ!!”と破裂してしまうようなザコキャラ。大ボス感がないので逆に恐ろしい。まだありますよ。カーチェイスも凄まじい。
映画『TAXi』にもひけをとらないスピードと『マッドマックス』ばりのぶっ飛んだ改造車。ここまでくると前作とはまるで別物だが、見事なエンタテインメントです。遊び心満載で何ものにも縛られず、我が道をいっているのが観ていて清々しい。
ゾンビの異様な速さと変な動きにもビビらされます。昼も夜も動きが速いので無敵ですよ。太陽が出ている時はゆっくりだからホッと息をつける瞬間があるんじゃないか! ダニー・ボイル監督の『28日後…』を観た時も思いましたが、絶望ですよ。私ならさっさとあきらめてゾンビになります。そして、今作でも強調されるのはゾンビよりも怖い人間の残酷さ。いやぁ、参りました。脱帽です。伏線の回収も完ペキ。脚本の巧さにもはやお手上げ状態です。
『新感染半島 ファイナル・ステージ』
廃墟と化したソウルの街で、ゾンビの襲来をかわしながら、巨万のドル紙幣の争奪を巡るアクション劇。主人公に人気俳優、カン・ドンウォン。姉妹の母役にイ・ジョンヒョン。2000㎡もの巨大セット、20分にわたる高速カーチェイスなど見どころ満載。
2020/韓国
監督:ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョンほか
配給:ギャガ
2021年1月1日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開