CAR

2025.08.28

V8エンジンか電気自動車か、メルセデス・マイバッハのSUVを試乗比較

メルセデス・ベンツにおける最上級ブランド「メルセデス・マイバッハ」。ライバルであるロールス・ロイスやベントレーがSUVをラインアップする時代だけに、マイバッハもぬかりはない。さらに内燃エンジン車だけでなく、電気自動車も追加した。果たして乗り味にはどんな違いがあるのか確かめてみた。

メルセデス・マイバッハGLS600

実は歴史と伝統ある“マイバッハ”というブランド

自動車の世界において、歴史と伝統に裏打ちされた真のラグジュアリーブランドを挙げよといわれたら、ロールス・ロイスとベントレーが思い浮かぶだろう。

近年それらに対抗しうるブランドとしてメルセデス・ベンツが打ち出しているのが「メルセデス・マイバッハ」。

このブランド名にあるマイバッハとは、メルセデス・ベンツの生みの親のひとり、ゴットリープ・ダイムラーとともにエンジン研究を行っていたヴィルヘルム・マイバッハが1909年に創業したエンジン製造会社「マイバッハ・モトーレンバウ」をルーツとする。V12エンジンの製造で名をはせ、その後は高級車メーカーとしても広く知られるようになる。マイバッハ社は1960年代にダイムラー・ベンツの傘下となり、そして2000年代に入ってふたたびメルセデス・ベンツの最上級ブランドとしてその名は復活をとげた。

かつてショーファーカーといえば、フォーマルなセダンと相場が決まっていた。しかし、近年はSUV人気の高まりをうけ、さきのロールスやベントレーもSUVをつくるようになった。

メルセデス・マイバッハGLS600_フロントグリル
マイバッハ独自の繊細な縦のルーバーが配されたフロントグリル。バンパー下部の左右には小さなマイバッハのエンブレムを複数組み合わせて配している。

そうした中で、メルセデス・マイバッハは現在、ガソリンエンジンの「メルセデス・マイバッハGLS 」と電気自動車(BEV)の「メルセデス・マイバッハEQS SUV」という2種類のSUVをラインアップしている。今回はこの2モデルに試乗することができた。

セダンにまさるSUVの乗降性のよさは、ショーファー向き

メルセデス・マイバッハGLS600_ランニングボード
ドアを開けるとボディ下からすっとせり出してくるランニングボード。乗降性を高めるための必須アイテム。

まずはガソリンエンジンの「メルセデス・マイバッハGLS 600」から試乗する。ボディサイズは、全長5210mm、全幅2030mm、全高1840mm、ホイールベースは3135mm。縦のルーバーがあしらわれたマイバッハ専用のフロントグリルが威厳を放っている。そしてドアを開けるとボディ下側からすっと電動ランニングボード(サイドステップ)がせり出してくる。

ベースとなる車両は3列シート7人乗り仕様のメルセデスのGLSだが、ショーファーカーにふさわしくマイバッハでは2列シート5人乗りを標準とし、オプションのファーストクラスパッケージを選択すれば、後席は左右独立式の4座仕様となる。オットマンの付きのシートには冷蔵庫が設置され、その扉には専用のシャンパングラスが格納されている。

パワ−トレインは、最高出力557PS、最大トルク770Nmを発揮する4リッターV8ツインターボエンジンに、16kW/250Nmを発揮するモーター(ISG)、そして9速ATを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムで四輪を駆動する。

わずかにアクセルペダルに力を込めると電動アシストの恩恵もあり、スタート時からなめらかに動き出す。2500回転で最大トルクを発揮するため市街地では2000回転以下でも十分に走る。この領域ならエンジンの存在をほとんど感じないほど静粛性も高い。V8エンジンらしさを味わいたければ少しばかり右足に力を込めればいいのだが、瞬時に相当なスピードに到達してしまうので高速道路などでの使用に限ったほうがいいかもしれない。

足回りはもちろんエアサス(エアマチックサスペンション)で、道路の凹凸やコーナリング状態に合わせて4輪を独自に制御するアクティブサスペンション「E-ACTIVE BODY CONTROL」を搭載しており、とても快適。ドライブモードには後席を重視したマイバッハモードも設定されている。

電気自動車ならではの静粛性の高さは、ショーファー向き

メルセデス・マイバッハEQS680SUV_フロントグリル
「メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV」は、空力特性を最適化したフォルムに、繊細な縦ルーバーがあしらわれたブラックパネルのフロントグリルを採用。

「メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV」は、メルセデスEQS SUVをベースとした同ブランドとしては初のBEV。ボディサイズは全長5135mm、全幅2035mm、全高1725mmで、先のメルセデス・マイバッハGLS600に比べると、75mm短く115mm低い。ところがホイールベースは3210mmでGLS600より75mmより長くなっている。このあたりは電動車専用プラットフォームを採用しているゆえのものだ。

GLSと同様に、EQSもベース車両は3列シート7人乗りだが、マイバッハでは2列5人乗りを標準とする。そして後席を左右独立式にし、冷蔵庫やシャンパングラスを備えたファーストクラスパッケージを設定しているのも同様だ。

パワ−トレインは、前後アクスルに1つずつ、計2基のモーターを搭載。システム最高出力は658PS、システム最大トルクは955NmとスペックはGLSを大きく上回る。ただし、車両重量は3050kgと3トン超(ちなみにGLSは2850kg)。駆動用バッテリーの容量は118kWhの大容量で一充電走行距離は(WLTCモード)640kmだ。

3トンという重さをまったく感じさせないほどなめらかに走り出す。足回りもGLSと同様にエアサスを採用し、また後席重視のマイバッハモードも設定されており実にしなやかだ。リアアクスルステアリング(後輪操舵)も備わっており、最小回転半径は5.1mと取り回ししやすいのも特長だ。

エンジン車かBEVか、過渡期ゆえの贅沢な悩み

車両価格は「メルセデス・マイバッハGLS 600」が3220万円、「メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV」が2790万円。ただし、試乗車には先のファーストクラスパッケージをはじめさまざまなオプションがついており、GLSは約3430万円、EQSは約3450万円とほぼ同じだった。

では、どちらを選ぶといいかのか。マイバッハらしい威厳のあるデザインという意味では、GLSに軍配があがる。EQSはBEVの宿命で、できるだけ航続距離を稼ぐために空気抵抗の低減が優先される。それゆえ流線型の凹凸のないフラットなパネル構成になっている。室内空間の静かさ、振動の少なさという点においては、やはりBEVのEQSが優る。押し出し感は足りなくとも、ショーファー向きである。もし、休日にはドライバーズカーとしてステアリングを握るというなら、V8エンジンの鼓動が感じられるGLSを選ぶのもいいだろう。GLSは内装の質感などもあわせて、歴史を感じさせるオーセンティックな佇まいが魅力。一方のEQSは新しいデザインに、最新のデジタル機能が詰まっている。どちらも甲乙つけがたい。

同じマイバッハというブランドに、同じ車格のSUVを、エンジン車とBEVの両方をラインアップするのはメルセデスの独自戦略といえるものだ。そしてこの2モデルを比較検討できるのは、電動化への過渡期だからこそ味わえる贅沢な悩みというものだろう。

メルセデス・マイバッハEQS680SUV

TEXT=藤野太一

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