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2024.01.23

MINIがフルモデルチェンジ! スーパースターに愛された歴史を振り返る

2024年の自動車業界の目玉のひとつが、MINIのフルモデルチェンジだ。デリバリーが始まる前に、英国セレブに愛されてきたその歴史を振り返ってみたい。 ■連載「クルマの最旬学」とは

MINIカントリーマン

ビートルズは、なぜMINIに乗ったのか?

2024年に登場するニューモデルで注目すべきは、MINIだ。日本市場には、MINIカントリーマンから導入されることになる。この車種は、登録商標の関係からモデルチェンジ前の日本ではMINIクロスオーバーと呼ばれていたもの。けれどもヨーロッパ市場と同じように、MINIカントリーマンを名乗るようになった。

納車は2024年の第1四半期以降とのことで、詳細は日本でのデリバリーが始まってからお伝えしたい。ここでは、MINIとはどんなクルマなのかを振り返ってみたい。

とはいえ、「天才設計者アレック・イシゴニスの斬新なアイデアから生まれた革命的小型車うんぬん」といったストーリーは語り尽くされているので、「MINIを愛した人々」を紹介することで、このクルマのキャラクターを浮き彫りにしてみようと思う。

なお、ここでは1959年にデビューした初代モデルをクラシックMINI、BMW傘下となった2001年以降のモデルをMINIと表記する。

MINIカントリーマン
日本におけるMINIブランドの人気は圧倒的で、販売台数を見ると6年連続で輸入車ナンバーワンに輝いている。したがって、新型MINIカントリーマンにも注目が集まる。

クラシックMINIのオーナーで最も有名なのは、ザ・ビートルズの面々だろう。マネージャーだったブライアン・エプスタインが、1966年に4人のメンバーにプレゼントしたのだ。なぜこのクルマが選ばれたのか? 1966年といえば、来日して日本武道館で公演を行った人気絶頂期。もっとゴージャスなクルマでもおかしくない。

諸説あるけれど、一番納得できるのが、レコーディングに使っていたアビーロードスタジオの駐車場が狭かったから、という説。事実、ポール・マッカートニーは1964年に当時のスーパーカー、アストンマーティンDB5を購入しているから、クラシックMINIは“アビーロードスタジオ専用機”だと考えると辻褄が合う。

4人のスーパーアイドルそれぞれがクラシックMINIに乗って三々五々スタジオに集まる様子は、想像するだけでユーモラスだ。

サイケデリックなペイントが施された、ジョージ・ハリスンのクラシックMINIの助手席に座るジョン・レノン。写真は1967年のもの。
サイケデリックなペイントが施された、ジョージ・ハリスンのクラシックMINIの助手席に座るジョン・レノン。写真は1967年のもの。

ミュージシャンつながりでいくと、ポール・ウェラーも熱心なMINIファンとして知られる。写真は、2009年にイギリスのシルバーストーンサーキットで開催された、MINIファンのためのイベント「MINI UNITED 2009」でのひとこま。隣の女性は故ジョージ・ハリスン夫人のオリヴィア・ハリスンで、ジョージはレースに出走するほどのクルマ好きだった。ウェラーはこのイベントで、ライブ演奏も披露している。

ポール・ウェラーとオリヴィア・ハリスンとMINI。
ポール・ウェラーとオリヴィア・ハリスンとMINI。

翌2010年、ウェラーは特別なMINIをデザインして、チャリティオークションに出品している。それがこの写真で、当時、本人は「1960年代のモッズ文化を表現しました」と語った。

印象的なストライプは、ウェラーが英国アパレルブランドのベンシャーマンのためにデザインしたシャツの柄がベースになっているという。1台だけが製作されたこの個体は、孤児を支援するためのチャリティオークションに出品された。
印象的なストライプは、ウェラーが英国アパレルブランドのベンシャーマンのためにデザインしたシャツの柄がベースになっているという。1台だけが製作されたこの個体は、孤児を支援するためのチャリティオークションに出品された。

ファッション業界にも影響を与えた

「MINI UNITED 2009」には、マリー・クワントも姿を見せていた。なぜ伝説のファッションデザイナーがこのイベントに? 実は「ミニスカート」という名称は、クワントが当時愛用していたクラシックMINIに由来しているのだ。つまり、クラシックMINIが存在しなければ、ミニスカートは別の名称になっていた可能性がある。

女性の装いに革命をもたらしたファッションデザイナー、マリー・クワントと、小型車に革命をもたらしたMINIとのツーショット。
女性の装いに革命をもたらしたファッションデザイナー、マリー・クワントと、小型車に革命をもたらしたMINIとのツーショット。

ファッションデザイナーでいくと、ポール・スミスもMINIのファンを公言していて、1998年にはクラシックMINIのポール・スミス仕様が発表されている。日本では1500台が販売されたこの特別仕様を探しているファンはいまも多く、稀に中古車市場に現れると、あっという間に買い手が付く。

マッカートニーとウェラーとスミス。“英国三大ポール”がMINIを愛するというのも、なにかの縁か。

MINIカントリーマン
1998年に発表されたクラシックMINIのポール・スミス・エディションで、シートには「Paul Smith」の文字が刻まれた。日本には1500台が割り当てられた。(Photo by BMW AG-BMW Group Archiv)

といった具合に、MINIはただの傑作コンパクトカーというだけでなく、ミュージシャンやファッションデザイナーといったイギリスのセレブリティから愛され、カルチャー全般に影響を与えてきたのだ。

翻って現在のMINIは、2030年代初頭までにBEV(バッテリーに蓄えた電気だけで走るピュアな電気自動車)専業メーカーになると宣言している。ベーシックなハッチバックのMINIではなく、MINIカントリーマンから日本に導入されるのは、カントリーマンにはエンジン車の設定があるから。現状では、MINIにはBEVしか設定されておらず、充電などのインフラが遅れている日本市場には不向きだと判断したようだ。

文化の一部とも言える存在だったMINIが、今度は温室効果ガスの削減に挑む。なんて書くと大げさだが、オールドファンとしては、MINIというブランドにはどうしても移動手段を超えた役割を求めてしまうのだ。

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

■連載「クルマの最旬学」とは……
話題の新車や自動運転、カーシェアリングの隆盛、世界のクルマ市場など、自動車ジャーナリスト・サトータケシが、クルマ好きなら知っておくべき自動車トレンドの最前線を追いかける連載。

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TEXT=サトータケシ

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