1966年の発売以来、世界で最も多く販売された車種である「カローラ」。WRC初優勝をもたらすなどトヨタの象徴的モデルでもある。「GRカローラ」はTOYOTA GAZOO Racingが、レースで勝つために鍛えたクルマを市販化するという、従来のトヨタの常識を覆す手法が用いられたAWDスポーツカーだ。連載「NAVIGOETHE」とは……
豊田章男の哲学宿るクルマ
創業家一族として世界一の自動車メーカー、トヨタの舵取りを14年にわたって続けてきた男、豊田章男氏。さまざまな苦難を乗り越えてきたトヨタCEOを勇退し、会長職への就任が発表されたのは2023年1月のこと。
そんな豊田氏の“ある強い想い”が投影されたモデルがこの「GRカローラ」だ。世界中で大注目を集めたトヨタ久々の新型AWDスポーツ「GRヤリス」に続くオン・ロードとオフの両極を楽しめる自社開発スポーツモデルである。
GRカローラには、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」が宿る。マスタードライバーの豊田氏自らが開発に携わり、壊しては直すを繰り返して市販化へと導いた。
レーシングドライバーのモリゾウ名義にして、世界一過酷な独ニュルブルクリンクサーキットを颯爽と駆ける自動車メーカーCEOは他にいないだろう。しかもそのドライビングスキルは副社長時代の50歳になってから磨かれたというから驚く。
試乗してまず驚くのはスパルタンな雰囲気からいい意味で裏切られた「楽しく」「扱いやすく」「安心感」ある乗り味であること。心臓部にはGRヤリスの1.6ℓ3気筒ターボを基軸に、最高出力を304psにまで向上。ギヤ比最適化による動力性能アップと、足回りの強化による回頭性能の引き上げにより、気持ちのよい走り味を実現している。
「私が初めて買ったクルマがカローラでした。乗り手を虜にするカローラを取り戻す、という強い想いで開発した」と豊田氏。ハイパワー一辺倒のスーパーカーとは趣が違い、GRカローラはクルマと対話でき、ずっと走らせたくなる魅力がある。
豊田氏のクルマづくりの神髄をぜひこの機会に体感いただきたい! と声高らかに叫びたいのだが、すでに第2回目の販売の予約抽選は終了。この、さらなる改良を経て順次発売という、今注文したくてもできないもどかしさがまた物欲を加速させている。
GRカローラ RZ
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