これからやってくる高温多湿な日本の夏。暑さ対策はもはや必須だ。そこで今回は、そんな夏におすすめしたい、身も心も涼やかにしてくれる香りをピックアップ。男性美容研究家の藤村岳が大人のための香水を紹介する。連載「オトコの“香印象”のつくり方」とは……
コーディネイトから香りを選ぶ
香水の使い分けにはさまざまなセレクト方法がある。
香調や賦香率(ふこうりつ。フレグランスに含まれる香料の割合のこと。多くの場合、濃度が高いものから、パルファン[15〜30%]・オードパルファン[8〜15%]・オードトワレ[5〜15%]・オーデコロン[2〜5%]と呼ばれる。濃度が低いものほど持続時間は短くなる)、使用する季節によって使い分けするのが一般的。
そして、ブランドで区分するという方法もある。
例えばニッチフレグランスと呼ばれる香水専門のブランドの香水に対して、ファッションブランドが出している香り。ファッションブランドの香水は世界観が確立されているため、実は今の気分にピタリとハマるものが見つかりやすい。
今回はそんなファッショナブルな香水をご紹介しよう。
帝王アルマーニの落ち着く香りで夏の装いを格上げする
モードの帝王といえば、ジョルジオ・アルマーニ。そんな彼がオートクチュールで用いるのが「プリヴェ」の名前だ。その特別な名を冠している香水のシリーズは「アルマーニ プリヴェ」の「レゾー」「ラ コレクション」「レ テール プレシューズ」「レ ミレユヌ ニュイ」とある。
なかでもバリエーション豊かなのがレゾーで、アルマーニ御大が親しい友人への贈り物として作ったもの。最新作が「サンタル ダンシャ」だ。印象的な淡いオレンジの香水は「湖畔の爽やかさと北京のサマーパレスの静けさの融合」を表しているのだという。
メインとなるのは香水名にもある、サンダルウッド。そう聞いてもピンとこない御仁もいるかもしれないが、香道の「白檀(びゃくだん)」といったら合点がいくだろうか。その上品で心の平穏を呼ぶ香りは、厳かで瞑想をする時によく用いられる。とはいえ、爽やかなイタリア産ベルガモットやスパイシーなカルダモンの刺激があって心地よく、ロングラスティングなムスクの香りが余韻を残す。とかく軽くなりがち夏の装いには、適度な威厳を与えてくれるウッディな香りでドレスアップするのがオススメだ。
リゾート気分のパーティーはロエベの官能的な香りで完成する
1846年に創業し、スペイン王室やヘミングウェイなどからも愛されたロエベ。上質な革製品に端を発し、今ではスペインを代表するブランドだ。2013年にイギリス人デザイナーのジョナサン・アンダーソンをクリエイティブディレクターに迎え、そのジェンダーレスでグローバルな提案から瞬く間に世界中の人を魅了した。
香水は70年代からあったが、2016年に木製のキャップが特徴的な「ロエベ 001」が登場し、2020年からは「ホームセンツコレクション」と題してキャンドルやルームスプレーなども発売。今やファッションのみならず、香りの世界での注目度も高い。
新作はジョナサン・アンダーソンとロエベの調香師のヌリア・クルエジェスが生み出した「オードゥ トワレ ロエベ パウラズ イビザ」。ユニセックスで使え、フローラル、アクアティック、アンバーの要素を兼ね備えたオードトワレだ。
セレブが集うリゾートとして知られるスペイン・イビザ島にてカルト的人気を博したブティック
「パウラズ イビザ」から着想を得たコレクションのひとつで、まさに夏! と言わんばかりのココナッツウォーターをベースにグリーンガルバナムやフランジパニフラワー、アンバーグリスなどを巧みに組み合わせた。陽気でありながら、柔らかさと暖かさをも備える香りは、パーティのハズしアイテムとしてふわりと纏うのが大人の最適解。
ワイン片手のデートにはメゾン マルジェラの世界観がぴったり
アントワープ王立美術アカデミー出身で華々しいキャリアを歩み、世界的な注目を浴びたにも関わらず人物像やプライベートをいっさい明かさない。その徹底した秘匿性から常にファッション界で異端児的な存在のマルタン・マルジェラ。現在はジョン・ガリアーノがブランドを率いているが、そのアヴァンギャルドな姿勢はずっと貫かれている。
最近は香水が大ヒットを飛ばしており、なかでもシグネチャーは「レプリカ」シリーズの「レイジーサンデー モーニング」。筆者も大好きな香りで、洗い立てのリネンのシーツに包まれながら、まどろむ日曜の朝の雰囲気を描き出している。
ブランドの同名カプセルコレクションに着想を得て生まれたフレグランスシリーズ「レプリカ」。“香りの記憶”をコンセプトに、それぞれの商品名となっている日常のさまざまなシーンを香りで再現している。
このメゾンの香水の作り方は独特だ。そのほかにも男性に人気な、真冬のフランス山岳・シャモニーの朝、燃える暖炉を表現したチェスナッツの香りが印象的な「バイ ザ ファイヤー プレイス」。東京にインスパイアされた「マッチャメディテーション」など細かい香料の話ではなく、香りが醸しだす世界にフォーカスした作り方をしている。
そんなレプリカシリーズの新作「オン ア デート」は、南仏プロヴァンスの夕暮れにブドウ畑を見下ろしながらのデートという情景。色づいたブドウのみずみずしさと摘み立てのローズの香りがいかにも幸せな気分にさせてくれる。まさにパートナーとのデートにぴったりの香りだ。ワインを片手に楽しめば、パートナーとの仲をより深めてくれるだろう。
■連載「オトコの“香印象”のつくり方」とは……
第一線で走り続けるビジネスパーソンは、リラックスしたい時もあれば、気持ちを奮い立たせ、勝負に挑まなくてはいけない場面もある。本連載「オトコの”香印象”のつくり方」は、自分を効果的に演出する武器でもある香りを上手に纏い、単なる好みではなく、スーツを誂えるように、自分に合う香りを見つける指南書。男性美容研究家の藤村岳がシーン別にベストな香りを紹介する。