今回はビジネスのシーン別にブルガリの香りをピックアップ。男性美容研究家の藤村岳が大人のための香水を紹介する。連載「オトコの“香印象”のつくり方」とは……
懐かしいのに、新しくもある。常に進化するブルガリの香り
令和も早5年となり、昭和はどんどん遠くなっていく。最近、昔とのギャップを面白しろおかしく比較したコンテンツがよく見られ、懐かしい気分で眺めているミドルエイジの読者もきっと多いことだろう。
今回は、かつて一世を風靡した香りと、それを生みだした老舗ブランドのブルガリの新旧作をご紹介。今年、2023年の春にオープンする「ブルガリ ホテル 東京」など何かと話題のブランドにフィーチャーする。
1.安心感のある香りで部下からの印象をアップ!
ブルガリを代表する男性の香りといえば、誰しもが思い浮かべる「ブルガリ プールオム」。1995年に登場して以来、その人気は決して衰えることなく、今なお女性からも好印象な香りとして名前が挙がる。当時としては斬新であったダージリンを香料として使用したマスターパフューマー、ジャック・キャヴァリエの名香だ。
馥郁(ふくいく)たる茶葉にマスキュリンなムスクを組み合わせたその妙なる調べは、まさに絶妙で男性のみならず、女性をも魅了した。力強いのに都会的、クラシカルなのにコンテンポラリーな魅力があるその裏腹な雰囲気がヒットの理由のひとつだろう。このタイムレスな香りは、老若男女に愛されるので、ぜひビジネスシーンで使いたい。その安心感は包容力となり、特に部下からの厚い支持を期待できる。
2.親しみやすいのに知的な印象を作る軽やかでフレッシュな香り
角張ったボトルが特徴的な「ブルガリ マン コレクション」。その名の通り、見た目も男性的な「ブルガリ マン グレイシャル エッセンス」は、揺るぎなく確固とした信念を持った自分を演出してくれる。高い山の頂に満ちている新鮮なエアーに注目した香りで、透明で目には見えないながらも生命力にあふれる仕上がり。こちらは普段使いがお薦め。
マスターパフューマーはアルベルト・モリヤス。稀代のヒットメーカーの彼は、「まるで氷のようなフレッシュさを表現したかった」と語り、さらに「氷のようであり、誰もが呼吸を解き放つようなコントラストを効かせた」とコメントしている。ジュニパーベリーやジンジャーの弾けるようなトップノートから始まり、サンダルウッドやイリスのなめらかなミドルノートへと続く。最後はシダーウッドやオリジナルのクリアウッド、ムスクへと変化して、知的で清潔感を醸し出すという算段だ。
3.ラグジュアリーを極めた香りを纏って、自分を奮い立たせる
元来ハイジュエラーである、ブルガリ。そのラグジュアリーさを香りで表すと、この「ブルガリ レ ジェンメ エンピール」だ。ボトルの佇まいからも察せられるように、とにかくすべてが豪奢。インスピレーションは東洋から西洋への幻の交易ルート「ジェムス・ロード」。貴重なジェムストーンと天然香料からブルガリが紡ぎ出した、まさに香水の宝石なのだ。なかでも火打ち石として古来から生活に欠かせなかった石、パイライトの持つパワフルさを前述のジャック・キャヴァリエはこの作品に込めた。というのも「エンピール」というのはエンパイヤ(帝国)とパイライトを組み合わせた言葉なのだ。
ジンジャーにサンダルウッド、ラブダナムの各ノートは融合し、その男性らしさを強調する。自分を奮い立たせ、活力を漲らせる必要のあるプレゼン前に纏うのにぴったりだ。品格を伴う香りは単なる力自慢ではなく、貴兄の存在を際立たせてくれるだろう。
仕事に臨むときに纏う香りは、相手との距離感を考えて選ぶのがお薦めだ。物理的な意味では日本では決して香らせすぎない方がベターだが、ここでいう距離感は心理的なもの。部下に対する包容力を表すのか、対等な立場なのか、はたまた勝負する関係なのか、など自分と相手の社会的な関係性で選んでみると、また新しい発見ができるはずだ。
■連載「オトコの”香印象”のつくり方」とは……
第一線で走り続けるビジネスパーソンは、リラックスしたい時もあれば、気持ちを奮い立たせ、勝負に挑まなくてはいけない場面もある。本連載「オトコの”香印象”のつくり方」は、自分を効果的に演出する武器でもある香りを上手に纏い、単なる好みではなく、スーツを誂えるように、自分に合う香りを見つける指南書。男性美容研究家の藤村岳がシーン別にベストな香りを紹介する。