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ART

2021.10.01

自分にしかない感性を育む方法とは?【森田恭通】

磨けば光る原石(=希少価値)を見つけだすのに長けた人がいる。しかし、そのセンスは誰もが公平に持っているもの。自分の“好き”を見つけたら、そこに自分なりのストーリーを持ち、とことん突き詰めることが大切なのだと思う。デザイナー森田恭通の連載「経営とは美の集積である」Vo.18。

Feb gallery Tokyo

藤井フミヤ氏がキュレーションするギャラリー「Feb gallery Tokyo」。最初の展示は「Keep in touch」展。“これからもみんな繋がっていこう!”をテーマにした作品が展示される。

感度が高いのは好きだから

時代を生みだす人とは、自分のなかにある磨けば光る"価値"を見出すことに優れた人ではないでしょうか。

そのひとりがミュージシャンの藤井フミヤくん。初めて彼を知ったのは高校時代。テレビで見たチェッカーズは、アイドルでもなく、不良でもなく、ロックバンドでもない。不思議な存在が突如現れ、日本中を虜にし、髪型、ファッション、歌う楽曲においても、当時の芸能界では頭ひとつ超えている存在でした。その頃の僕は、御多分にもれずチェッカーズを真似し、フミヤくんと同じ髪型にしていました(笑)。次の彼との思い出は20代。当時の僕は神戸に住んでいたので、東京に行った際は気になる店やバー、ラウンジに出かけていました。そこにはフミヤくんもいて、彼がいると「僕の店選びは間違ってない」という自信にもつながりました。

彼は音楽の才能以外に、ファッション、デザイン、アートの才能にも秀でた多才な人。1990年代からアート活動も始め、先日浜松市の美術館で開催した個展には100点以上の作品を展示していました。いったいいつ描いているの? というぐらい多忙なはずなのに絵を描いています。感度は並じゃありません。僕自身、彼と話すとたくさんの刺激をもらい、次のアイデアが浮かぶこともあります。

そんな彼自身がキュレーションするギャラリー「Feb gallery Tokyo」が10月1日にオープンします。最初の展示は「Keep in Touch」展ということで、僕の作品も取り上げてくれました。なぜ彼は次々と面白いことを探しだすことができるのか? ダイヤの原石(=希少価値)を見つけだす天性の才能があるのではないでしょうか。店にしろ、髪型にしろ、ファッションにしろ、彼が見つけたものは時代の1シーンになりました。でもそのセンスとは、誰にも公平にあると思うんです。自分の"好き"を見つけたら、そこに自分なりのストーリーを持ちしっかり掘り下げてみてほしい。好きなことをとことん突きつめると、自分にしかない感性が育まれ、あらゆる角度の感度が高くなるからです。

フミヤくんのギャラリーと同じ10月1日に、日本発を世界に発信するファッションカンパニー、TOKYO BASEの谷正人くんが東京・丸の内に「THE TOKYO」という日本のブランドだけを扱うセレクトショップをオープンします。ラグジュアリーブランドというと、多くの人が海外のハイブランドを思い浮かべると思いますが、日本にもそういうブランドと等しく素晴らしい才能、ファッション、ブランドがあると、新しい価値を提案するセレクトショップです。オンラインショップで購入することが多くなったこの時代に、ある意味真逆を行く店舗。僕は谷くんと膝を詰めて話し合い、とことんショップスタッフとコミュニケーションを取れるよう、店内の3分の1をラウンジという店舗デザインを提案しました。

フミヤくんにせよ、谷くんにせよ、"好き"を突きつめ、自分なりのストーリーを持つことで、誰かが見つけていない"価値"を見つけた人たち。今、モノが溢れている時代だからこそ、自分が好きなもの、共感できるものは何なのか、もう一度見直す時期なのかもしれません。

森田連載
Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍し、2019年オープンの「東急プラザ渋谷」の商環境デザインを手がける。その傍ら、’15年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」はこちら

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連載
森田恭通/経営とは美の集積である。

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは。

TEXT=今井 恵

PHOTOGRAPH=SEIRYO YAMADA

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