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2021.03.13

結果につながるプレゼンテーションの術とは?【森田恭通】

デザイナー森田恭通の連載「経営とは美の集積である」Vo.11。デザイナーにとってプレゼンが一番の勝負どころ。だが、国内外さまざまな案件を手がける森田恭通氏に必勝法はないという。プロジェクトの積み重ねによって自身の美意識が磨かれ、その美の集積が結果を引き寄せる。

森田恭通さん

僕が着物を着る理由

いつも派手な服を着ている僕ですが、常にニュートラルな状態でいたいので、実はあまりモノには執着しないタイプです。いつも決まったアクセサリーをつけるわけでもないし、服の色にもこだわらず、その時に着たいものを着る。

でも、大きなプレゼンテーションや海外でのレセプションでは、中田英寿さんに紹介していただいた、紬織(つむぎおり)の人間国宝・志村ふくみさんの着物を着ることが多いです。志村さんは、野山の草木から採取した自然染料で染めた糸と、志村さんの感性で織り上げた着物をつくられます。僕はその作品のなかから、玉ねぎなどの野菜や植物で染色した綺麗な黄金色にひと目惚れしました。この着物を着ると身が引き締まりますし、着物×ロン毛という見た目は海外でも日本でもインパクトがあるみたいで、ここぞという時はこの組み合わせで登場したりしています(笑)。

昔は実力もなかったので見かけで勝負みたいなところもありました。デザイナーとして駆けだしのころは、ヴェルサーチェが好きで必死にお金をためて全身揃えたり。結果的に派手なファッションになっていましたが、そこが分岐点だったのかもしれません。その派手なファッションが僕のアイコンのひとつとなり、印象に残り、覚えてもらえるようになったのだと思います。

プレゼンテーションの成果を引き上げる方法

僕たちデザイナーにとっては、プレゼンテーションが勝負です。その結果によってプロジェクトを依頼してもらえるかどうかが決まるからです。特別なルーティンはないのですが、例えば歯を磨きながら、どういう流れでプレゼンテーションを進めるのか、相手の想像をどう超えていくのかをイメージしたりします。朝起きた瞬間からクライアントに会うまでがプロローグです。

そして相手と対面し、いざプレゼンテーションが始まるとなった時もいきなり本題に入らず、ワンクッション置くようにしています。アポイントがある時点で相手は当然、身構えていらっしゃるので、はじめは本題とは別の話をして、相手の頭のなかをフラットにする。そうすると、自然な流れで本題に入ることができるので、すんなり受け入れてもらえることが多いのです。そのため、プレゼンテーションの前の話のフックになるように、面白い手土産を持って行くこともあるのですが、たいてい僕の派手なファッションの話から始まることが多いです。今まで特に意識したことはなかったのですが、僕の派手な見た目が目くらましのような役割を果たしているのかもしれませんね。

先日、コシノジュンコさんとラジオでご一緒した際に、人生にはギャンブルのような側面があるという話になりました。自分の選択がよい結果になることもあれば、悪い結果につながることもある。何を選択したかによって今後が決まる。つまり、僕にとってすべてのプロジェクト、そのすべての選択が大勝負です。ひとつひとつの選択の積み重ねが次のプロジェクトを導き、さまざまな案件に携わらせていただくことができます。毎回それを経ることで、経験や美意識が磨かれ、自身に蓄積される。その美の集積が、結果につながっていくのかもしれません。

森田恭通

Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍し、2019年オープンの「東急プラザ渋谷」の商環境デザインを手がける。その傍ら、’15年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」はこちら

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連載
森田恭通/経営とは美の集積である。

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは。

TEXT=今井 恵

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