アートは経営に必要な要素なのか? その答えは「YES」。アートは感性を磨き、視野を広くする。美しいものと時間を共有することで、人生が豊かにクリエイティヴにもなる。今こそ、アートに触れるべきなのだ。
アートに触れることで生活も仕事も充実する
経営者に必要な要素のひとつに、“決断力”があります。その判断ひとつで、何十億という利益を得ることもあれば、失うこともあるからです。
先日、アートプロデューサーの田辺良太さんと“生き残る経営者になるために、アートで感性を研ぎ澄ます”というテーマで話をしたんですが、僕も田辺さんも多くの経営者と付き合いがあり、デザインやアートの側面から経営についてお話しすることがあります。「アートって趣味のひとつなんじゃない?」「経営に必要?」と思うかもしれません。しかし、目まぐるしく変化する現代において、分析や論理的情報処理だけでは太刀打ちできません。アートで感性を養い、視野を広げることにより、自分のなかにアートというチャンネルが増えれば人生が豊かにもなる。“充実した時間を過ごす”という意味でもアートは重要な役割を持ちます。
最初はいいなと思うアートのポスターなど、自分がとっつきやすいものを額縁に入れてみたりとか。まずは見ること、身近に置くことで自分の好みの方向性が見えてきます。「この絵、なんか好きだな」「部屋にあると落ち着くな」と思うことが大事。アートは集中力を高め、気分を上げるものでもあるんです。
先日、とある経営者から「オフィスにアートが欲しい」と相談を受け、僕が選んだのは奈良県明日香村にある石舞台古墳を写したフォトアート。巨大な石は、太古から同じ場所にあり続けた存在。それはある意味、会社経営にもつながるメッセージ性があるなと選んだのですが「気持ちが上がる」と、とても喜んでいただけました。
人によってはこのようにアートがラッキーチャームになるし、ご自身のラッキーナンバーやカラーで選び、安心感を得る存在であってもいいと思います。わからないとか、ハードルが高いと構えずに、好きな写真やイラストを1枚、机に飾り、自然とアートに触れることで感性が磨かれていくと思います。
もしファッションが好きであれば、そこからアートの世界に触れることもできます。例えばルイ・ヴィトンは、数多くの現代アートのアーティストとコラボレーションを仕かけています。これにより、ジェフ・クーンズ、スティーブン・スプラウス、リチャード・プリンスらトップアーティストの名が、アートに興味がなかった人々にも広がりました。インテリアが好きであれば、北欧のデザイナー家具をアーティストの名前やストーリーを調べながら選んでもいいかもしれません。なんせ家具は座れるアートですから。
身近なものから一歩踏みこみ、アートの世界に興味を感じたら、ぜひ美術館やギャラリーに足を運んでみてください。日本には実に多くの美術館やギャラリーがあります。僕も使っているのですが、「TOKYO ART BEAT」というアプリなら、今、どこでどんな展示を行っているか、エリアやジャンルから調べられるんです。コロナ禍で出張や通勤の時間がなくなり、思いがけず自分だけの時間を手にできている人も多いかと思います。ぜひこういう時期、こういう時代だからこそ、時間があることをプラスに変えて、感性を磨く時間にしてみてください。
Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍し、最近ではジョエル・ロブションのハウスシャンパン「シャンパーニュ・ラリエ」のエチケットを手がける。また、’15年よりパリで写真展を毎年開催するなどアーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」はこちら。