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2020.05.11

デザイナー森田恭通「センスのある経営者は、オリジナリティにこだわる」

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは?

森田恭通さん

デザインのミッションは、商売の起爆剤になるということ

インテリアデザイナーの仕事は、クライアントへのヒアリングがすべてと言っても過言ではない。僕はオフィス、店舗、ホテル、病院、そして住宅も手がけている。クライアントである多くの経営者や代表、施主が何を望むのか。それは「この時代に合わせたデザインなのか」、それとも「今後の海外展望を狙い、ビジョンに合わせた物件を望むのか」。僕はさながら『徹子の部屋』の黒柳さんのように、あらゆる角度からじっくり話を聞くことから始めることにしている。

百戦錬磨の経営者の話からは、時にその話に共感してデザインすることもある。そんな僕の経験のなかでわかったことのひとつは「センスのいい経営者には美学がある」ということ。それはアート作品をたくさん保有しているから美学があるのではなく、いわゆる経営に対するセンス、こだわりを感じるかどうか。それは一軒の飲食店経営者であっても、一部上場企業の経営者であっても、経営にオリジナリティがあるべきと僕は思う。そしてオリジナリティがある人ほど、その業種のオピニオンリーダーになっていくのをあらゆる業界の経営者と接していくなかで感じる。

流行りの店に行き「こういうものをつくってくれ」という経営者がいて、それに「はい」と答えるデザイナーがいたとする。しかし、それでは経営者のオリジナリティが失われると思う。

二番煎じという言葉があるが、トップがいてそれを追うのは決して悪いことではない。でもずっと二番手では面白くない。では、二番が一番を超えるためにデザインができること。それは、デザインのミッションである"商売の起爆剤になる"という点だ。僕のデザインを起点に大きくバウンドし、トップに躍りでていくことがあれば、こんなに嬉しいことはない。でもそこには必ず、経営者とデザイナーのオリジナリティが必須だと思う。

最近僕が手がけたプロジェクトのひとつに、六本木のホテルの最上階にあるラウンジバー『BALCÓN TOKYO』がある。飲食店を運営するゼットンからオファーを受け、パリによくあるような、音楽が楽しめる、大人が気持ちいいと感じる店が欲しいよねと、長年一緒に仕事をしているゼットン創業者の稲本健一氏と話し、この企画が動き始めた。ロケーションが素晴らしく、東京タワーがものすごくきれいに見える。だったら店のコンセプトは「ザ・東京だな」と。僕自身が客の立場になった時、行きたいと思う店の空気感は、ストーリーが感じられ、アートギャラリーにもなるナイトクラブ。時代を追うのではなく、死ぬまで通える場所にしたい。そこで墨流しの日本画を要所要所に印象的に使い、2020年版のアール・デコをつくったらこんな感じかなと思いながらデザインした。

朝と夜で違う雰囲気を楽しめるラウンジバー「バルコントーキョー」。テーマの異なる個室も完備。

センスと美学のある経営者は、なんとしてもオリジナリティにこだわる。そこを僕がいかに汲みとり、デザイナーとしてのオリジナリティも加えてつくり上げるか。願わくば、それが時代を経てもそこに居続けられる、タイムレスなものになれば幸せ。

今、新型コロナウイルスによってさまざまな業界で影響が出ている。このような状況をなかなか予測することはできなかったけど、僕自身も転換期と捉え、皆で迎える未来のためにベストを尽くしたい。

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連載
森田恭通/経営とは美の集積である。

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは。

TEXT=今井 恵

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