会員制とは、仕事場と家庭以外の“拠点”であり“サードプレイス”、そして、そこは人生を間違いなく豊かにしてくれる。いい大人たるもの持っておきたい、それが現代における最新のメンバーシップだ。今回は、京都・壬生の紹介制レストラン「q(キュウ)」を紹介する。【特集 会員制という愉悦】
京のシェフズテーブルにトップシェフたちが降臨!
新選組と縁のある名所も残る壬生(みぶ)エリア。明治時代に建てられた町家群をリノベーションしたホテルの一角に、2020年4月、レストラン「q」は開業した。
ホテルの宿泊客も、そこにレストランがあるとは知らない。階段を上がった秘密の扉の先に、カウンター6席のみのプレミアムな空間が設けられている。
キッチンの設計を手がけたのは、「祇園さゝ木」の佐々木浩氏。どんなジャンルの料理人が立っても使いよく、動きやすい造りにと工夫を凝らした。実際にこのレストランでは、日本料理だけでなく、フレンチやイタリアン、中華、洋食、肉料理など多彩な料理が味わえる。
それも、予約がとりづらいといわれる話題店や有名店のシェフがアトランダムにカウンターに立つというから面白い。料理人は店で出す料理にとらわれず、違ったジャンル、違った食材使いにも挑戦し、ここだけの料理を仕立てるのだ。
例えば、ある週は普段は本格派の懐石料理を手がける和食の料理人が割烹料理に挑戦する。多彩な食材を用意して、そのなかから、客のリクエストに応えて即興料理をつくるのだ。また、別の週はフレンチのシェフが中華の高級食材を駆使し、唯一無二の仏中融合コースを披露する。
招聘シェフは50名以上。本来の店に通う客にとっても、目新しい料理ばかりが登場するのだから、ぜひとも味わってみたくなるはずだ。
だが、そんな特別感ある店だからというべきか、紹介者がいなければ訪れることはできない。オーナーの知り合いか、その人に一度連れられて訪ねた人のみが、LINE会員に登録できる仕組み。今や顧客は国内のみならず、ニューヨークなど海外にもいて、スケジュールに合わせて来京するそうだ。
「かつての茶室のように、選ばれし者だけが集うコミュニティをつくることも目的。そのステータスを維持していきたい」とオーナーのX氏は言う。
まさに、秘密のシェフズテーブル。知り合いの登録者を探さなければ行けないことが、なんとも悩ましいのである。
レストラン料理人リスト
- 「祇園さゝ木」佐々木浩
- 「にくの匠 三芳」伊藤力
- 「レオーネ」吉川健太郎
- 「祇園肉料理おか」岡義隆
- 「赤坂四川飯店」陳建太郎
- 「廣澤」廣澤将也
- 「シエナ」大東和彦
- 「下鴨茶寮」本山直隆
- 「レストランmotoi」前田元
- 出張料理人 木村玄
- 「鮨 三心」石渕義隆
- 「一之船入」魏禧之
- 「清粥小菜 朙」内田法明
- 「しまなみふれんちmurakami」村上智彦
▶︎ Become a Member
一般的な会員制ではないので、オーナーと知り合うか紹介者がいなければ会員登録はできない。会員登録すると、オーナーからレストラン営業スケジュールが届き、登録した本人だけが予約できるシステム。
q/キュウ
住所・TEL:非公開
営業時間:17:00~(2回転制、場合によっては昼営業も)
料金:¥30,000~(ペアリングなどドリンクは別料金)
※2025年春、大阪にも紹介制のレストランを出店予定。
この記事はGOETHE2023年10月号「総力特集:会員制という愉悦」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら