GOURMET

2022.06.10

浜作|京料理の神髄がある、日本で最初の板前割烹

食に対して尋常ではない情熱を傾ける、秋元康小山薫堂、中田英寿、見城徹が厳選したとっておきの店を紹介する、最強のレストランガイド「ゲーテイスト2022」。伝統に敬意を払いながら常に進化。四季折々の食材を美しい料理に昇華する和の匠の技に酔いしれる。【Part2:和の神髄】

浜作

「鱧の葛たたき」。椀は朱塗り宝尽くし蒔絵。かつて『浜作』に通った谷崎潤一郎は、「鱧は朱いお椀が似合う」と言って好んで食べていたという。口に入れた瞬間、とろけるような食感に驚かされる。

小山薫堂「ご主人の文化度の高さが、店の品格につながっている京都らしい名店」

昭和2年に祇園で創業した、日本で最初の板前割烹。川端康成をはじめ各界貴紳をもてなし続け、現在は3代目で現代の名工でもある森川裕之氏が暖簾を守る。創業100年を迎えるにあたり、2021年夏、新町通りに移転した。

 祇園にあった頃に一緒に行ったよね。

 はい。昨年、烏丸の方に移転して、さらに居心地がよくなったんですよ。京都には数多くの割烹がありますが、ここの料理はやっぱり違うと唸りました。

若狭鰈のから揚げにしいたけと葱の餡をかけた丼

初代がイヴ・モンタンが来日した際にも作った、若狭鰈のから揚げにしいたけと葱の餡をかけた丼。器は河井寛次郎の三彩鉢。

 祇園のほうには僕も行ったけど、新しいお店はまだ行っていない。薫ちゃんはどういうところに唸ったの?

 見た目の派手さではなく、季節のものを奇を衒(てら)わない軽やかな技で真っ当に調理しているところがすごいと思うんですよ。例えば「鰻(う)ざく」の胡瓜(きゅうり)はごく普通の食材ですが、かたく絞るとこんなにも美味しくなるのか! と驚かされます。すべての料理が、なぜこう切るのか、なぜこのタイミングで塩を振るのかという、ロジックの積み重ねでできており、本当に美味しいんです。それに出汁(だし)が絶品。お椀が完璧です。京料理の神髄がある、という感じですね。

 ご主人のキャラクターを含めて京都らしいお店だよね。

預け鉢

車海老、揚げ出し豆腐、筍、蕗の預け鉢。器は魯山人の赤海老鉢。食べ終わると底に海老の絵が現れる。

 そうですね。四季を感じるセンサーの敏感さは京都人ならではだと思います。あと、森川さんはすごく文化レベルが高くて、歌舞伎、オペラ、絵画、クラシック音楽と、それぞれのジャンルの文化論を語れる料理人なんですよ。器も魯山人や河井寛次郎のものを惜しげもなく普段使いしていて、なぜこの皿にこの料理を盛りつけるのかということもロジカルに説明してくれる。『浜作』のカウンターに座って食べながら森川さんのお話をうかがうと、料理が総合芸術であることを実感できます。

 今やすっかり京都人の薫ちゃんがここまで言うんだったら、また行きたいね。

 京都人なんて滅相もないです(笑)。でも、本当の意味でお金を払う価値がある、そんなお店だと思います。

 

Hamasaku

凛としたなかに、温かみのある店内。カランコロンと森川氏の高下駄の音が鳴り響く。

Hamasaku
住所:京都市中京区新町通六角下ル六角町360
TEL:075-561-0330
営業時間:17:00~22:00
定休日:不定休
座席数:カウンター12席
料金:季節のおまかせ¥45,000~
※要予約、電話にて確認

【ゲーテイスト2022】※6月24日までに全公開!
「秘密の店」
「和の神髄」
「洋の絢爛」
「名人の店」
「弩級な鮨」
「肉の魔力」

TEXT=小松めぐみ

PHOTOGRAPH=塩﨑 聰

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