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2022.01.08

江戸料理の流儀が光る秋田の名店「たかむら」──連載「グルマンが遥々訪れる一軒」 Vol.1

あらゆる食が集まる東京から、はるか600㎞。冬ともなれば雪深い街、秋田にあるのが江戸料理の名店だ。今回、晩秋の一席を特別に楽しむ機会をいただいた編集部が、世界の食通が目指すこの場所を体験した。

閑静な住宅街に佇む店舗。期待感を胸にアプローチを進む。周囲に店舗等はないので、駅からはタクシーがおすすめだ。

江戸料理の名店の味を引き継ぐ、唯一の継承者

JR秋田駅からタクシーで6~7分の閑静な住宅街。夕刻に灯る灯りのもと、日本中いや世界中から食通が集まる場所がある。それが「日本料理 たかむら」だ。

店の主人、髙村宏樹氏は専門学校に通いながら修行を始める。今は無き東京・目白の江戸料理『太古八』で修業。24歳で板長を務めた後、22年前にここ秋田で自身の店を立ち上げた。その後先代の引退に伴い東京へ戻ることも請われたが、結局秋田に残り『太古八』の四代目として江戸料理唯一の継承者となる。

「東京にいたら、今ごろは調子に乗った料理人になっていたかもしれません」

高村氏はそう語る。江戸料理『太古八』は天皇陛下(当時は皇太子)や歌舞伎役者・坂東玉三郎氏など、錚々たる方々に愛されていた名店。もちろんそのまま、順調にキャリアを積んでいくこともできたはずだ。

「でもそれでは『太古八の高村』でしかない。ちゃんと自分自身の“料理”を見てもらわなければと思ったんです」

この地が育んだ、食材と料理に対する探求心

料理は豊富な魚介類や、日本3大地鶏のひとつとも言われる比内地鶏に、天然のきのこなど地元秋田の食材を使用。この日は衣かつぎや銀杏など秋田の旬が盛られた先付けから始まり、水菜やセリの食感と金茸の旨味感じる野菜の沢煮椀、うずらの卵を穴子で巻いた龍眼穴子、絶妙な火入れで中は生のいくら醤油漬けの春巻きなどが続く。3代目から引き継ぐ江戸料理をメインにしながらも、例えば比内地鶏の首皮に叩いた正肉を詰めて焼いたスペシャリテの「比内地鶏の首皮焼き」は、スペイン料理にある首皮のソーセージに発想を得たもの。歴史をなぞるだけではなく、独自の視点で伝統を昇華させた料理で客を楽しませる。

「世界中の食材が集まる東京に比べたら、食材の乏しさは否めません。でもだからこそ、手に入る食材でどう構成するのかを常に追求する必要がある。料理に対する発想力や探求心は、秋田にいたからこそ育まれたと感じています」

さらに料理を引き立てるのが、新政や一白水成など秋田の銘酒。蔵元自らがたかむらの料理のあわせて欲しいと届ける、ここでしか飲めない“別誂”も揃う。

左:錦胡麻をのせた衣かつぎや、浅利と春菊の胡麻寄せなど旬の食材と手間をかけた品が並ぶ「先付け」。右上:皮目を炙った肉厚の秋田産甘鯛は棒寿司にして。海苔を巻いていただく「秋田産甘鯛の棒寿司」。右下:シャキシャキとした水菜やセリ、えのき、人参などを昆布出汁でいただく「野菜の沢煮椀」。刻まれた豚の背脂や秋田ではよく使うという金茸も使われ、異なる食感と共に旨味もたっぷり味わえる。

世界が認める味は、料理を俯瞰で捉える視点から

8名のカウンター席と個室のみのこの店を、予約できるのは会員あるいは会員の紹介のみ。この日も会員である食通・日本酒通のご夫婦の誘いに、飲食業界の経営者や日本酒の蔵元、ゲーム業界の重鎮に音楽プロデューサーと経歴も様々なゲストが、東京、そして遠くは和歌山から、たかむらの味を楽しむために集まった。

そんな既知のゲストとも初訪問のゲストとも、髙村氏は食材の話から師匠の想い出や過去の失敗談まで、気さくに話を弾ませる。

「でも本当は、料理がきらいなんですよ(笑)」

思わずドキリとする言葉に理由を聞けば、「好きになればなるほど、のめり込んでしまうから。恋愛と一緒です(笑)」との答えが。そこには、料理に真に向かい合いたいからこそ、ストイックになり過ぎず、あえて少し離れたところから眺める視点を持つべきという意が込められている。

その真摯な考えに対する答えは、世界970のグルメガイドやレビューの情報を集積し、スコアを導きだすレストランガイド「ラ・リスト」2022版での95.50/100という高スコアや、レビュアー投票による「OAD(Opinionated About Dining)」で2年続けてトップ50にランクインという結果が表している。素直にその結果は嬉しいという髙村氏。

「自分がやってきた料理が間違っていなかったことを、再確認させてもらった気がします」

左上:「太古八」時代から引き継ぐ一品。うずらの卵をふっくらとした穴子で巻き、龍の眼に見立てた「龍眼穴子小松菜 管ごぼう旨煮」。濃口醤油を使用し甘味もしっかりつけた、きりっとした味わいも江戸料理の特徴だ。左下:比内地鶏の内臓以外のすべての肉を刻み、首皮に詰めて焼く「秋田産比内地鶏首皮包み焼き」は、たかむら自慢の一品。肉はあえて粗さを残し、ジューシーな仕上がりがたまらない。麹の甘味も感じる青南蛮味噌と共に。右上:「海老芋の唐揚げ いくら醤油漬けの春巻き」は、カリッと揚がった春巻きの中に、プチッとはじけるほぼ生のままのいくらが。絶妙な火入れ作業が、食感と味の驚きを生む。右下:デュラムセモリナ粉、強力粉「春よ来い」などを独自に配合したオリジナルの麺を使用した「たかむら麺冷やし坦々麺 温玉 ひき肉 叉焼」。もちもちながらツルっといただける独特の食感の麺は、通販でも購入できる。

独立以来変わらない、道を究める決意と自信

さて今宵の締めは、独自の粉の配合で作られたその名も“たかむら麺”を冷やし担々麺で。ゲストたちの杯も進み「冬なら熊肉のしゃぶしゃぶも」という髙村氏の言葉に、さらに次回への期待も高まった。

実は開店以来、コース料金は変えていない。土地柄を考えればそれは無謀なスタートゆえに、最初の5~6年は苦労したと言うが、裏返せば江戸料理を極め、自分が信じた味を届けるという22年前の決意と自信がそこにはある。

「皿の上に置くのは食べられるもののみ、飾りの葉などを使わない」というのが江戸料理の流儀という。武士の料理でもあったその真髄を言葉で表すならば、「華美ではなく、派手ではなく、でも美しく」と教えてくれた髙村氏。

余計な飾りのない素朴にも見えるその一皿も、口にすればメリハリの効いた滋味があふれる。伝統を自らの視点でさらに追及し続ける「日本料理 たかむら」。世界のグルマンが秋田を訪れる、その意味を体感する機会を手に入れて欲しい。

日本料理 たかむら
住所:秋田県秋田市大町1-7-31
TEL:018-866-8288
※会員制。予約は会員および会員の紹介のみ。
予約受付時間:9:00~12:00/17:00~21:30(定休日除く)
営業時間:18:00~22:30(最終入店時間20:30)
休日:日曜・祝日
料理:おまかせコースのみ(¥15,000/¥13,000/¥10,000。税・サ別)

TEXT=牛丸由紀子

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