かつてブームを巻き起こした焼酎が、新しいフレーバーや味わいに進化。“新世代の焼酎”となって再び注目を集めている。そこで、薩摩焼酎の“今”を探索しに、焼酎県・鹿児島の蔵元5ヵ所を食のスペシャリスト5人が巡った。【前編はこちら】
情熱×情熱で、注目すべき薩摩焼酎を周知させたい
蔵巡りを終えて、開口一番、「芋を蒸す蒸気や蒸溜器の熱気に満ちた蔵の中も相当に暑かったけど、それ以上に人の気持ちが熱かったね」と岡田氏が話せば、「彼らの焼酎を口にしただけでも情熱を感じることはできたけど、実際に蔵を訪ね、つくり手の思いを聞くことで、今回厳選した5蔵がこれからの焼酎界を牽引する存在になると確信した」と本田氏は旅の成果を振り返る。
中村酒造場6代目が、麹室の室つきの麹菌から白黒黄3種のハイブリッド麹ができた感動を40度近い麹室の中で見せてくれたシーン。その麹でつくった「Amazing」は、グレープフルーツやメロンなどの香りが上がってくる。
「キレのある味で料理の余韻を断ち切っていく今までのタイプとは大きく違い、香りが主体。フレーバーと料理が共存できるので、余韻に合わせて料理をつなげていける。新たな楽しみ方を考えたい」と話すのは大越氏。
テロワールにこだわる白石酒造、伝統とモダンの融合で一歩先を行く感覚を持つ小牧醸造や大山甚七商店。大きい蔵ならではの悩みを抱えながら伝統製法の継承にも心を砕く小正醸造……。それぞれの思いを受け止めた食のスペシャリスト5人が願うのはブームの再燃ではない。情熱を持つつくり手の思いを、同じ情熱を持って多くの人に丁寧に伝え、自身の店でも取り扱っていくという使命感だった。
SHOCHU BREWERIES MAP
白石酒造
5代目白石貴史氏自ら畑を開墾。除草剤を使わず、無農薬・無肥料で微生物、虫や草花など土地の環境と共生して育てたさつま芋で仕こむ、まさに大地を味わう超個性派の蔵。住所:鹿児島県いちき串木野市湊町1-342 TEL:0996-36-2058
小正醸造
8000坪の敷地には大型貯蔵タンクがずらりと並び、瓶詰め、箱詰めなど機械化された「本蔵」と、完全手づくりの「師魂蔵」が共存。バラエティとアイデアに富んだ商品を追求。住所:鹿児島県日置市日吉町日置3309 TEL:099-292-3535
大山甚七商店
薩摩半島の最南端にあり、肥沃な大地で育った良質のさつま芋と宮ヶ浜の湧水で仕こむ。「甚七」「薩摩の誉」など伝統銘柄に加え、クラフトジンなど新たな商品開発にも挑戦。住所:鹿児島県指宿市西方4657 TEL:0993-25-2410
小牧醸造
一級河川、川内川のほとりにあり、地元のさつま芋、天然の湧水で仕こんでいる。2006年には豪雨により壊滅的な被害を受けるも、新旧を融合した美しい蔵へと復興を遂げた。住所:鹿児島県薩摩郡さつま町時吉12 TEL:0996-53-0001
中村酒造場
1888年創業以来の石造りの麹室でつくる室つき麹にはじまり、昔ながらの道具で全量手づくりする。代表銘柄「なかむら」に加え、昨年25年ぶりの新銘柄「Amazing」を発売。住所:鹿児島県霧島市国分湊915 TEL:0995-45-0214