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2024.06.06

『80歳の壁』和田秀樹が提唱する、感情に振り回されないための「確率や数字で考える」習慣

「感情の動物」と呼ばれる私たち。喜びや楽しみがあるからこそ、人生は豊かになります。ところが怒りや不安といったネガティブな感情や、自分でも気づかない服従、同調、損失回避といった感情のせいで、どんなに知的な人でも「バカな判断」をすることがあります。そんな「感情バカ」のメカニズムを解き明かし、バカにならないコツを教えてくれるのが、精神科医・和田秀樹さんの『感情バカ』です。その中でも、私たちがとくに陥りやすい感情をご紹介しましょう。

身につけたい「この考え方」

感情に振り回されて間違った判断をしないためには、確率や数字で考える習慣を身に付けることも大切です。

北朝鮮が暴発する確率であれ、原発事故が起こる確率であれ、あるいは発がん性物質を摂取したときにがんになる確率であれ、人々が気になっているものや恐れているものの多くは、その確率を調べてみると、1万分の1であったり、10万分の1であったりというように、意外に低いことがけっこうあります

(写真:iStock.com/BrianAJackson)

たとえば、確率的に10万年に1度起こるようなものだとしたら、10万年も生きる人はいないのですから、起こらないものと見てもいいわけです。あるいは10万日に1度起こるようなことであっても、閏年を除いて単純計算をすれば、10万日は約274年なので、少なくとも自分が生きているうちにまず起こるものではないと考えることができます。

もちろん、不幸なことに、10万分の1の確率で起こる災いに遭遇することもありますが、無視できる確率のものは無視しないと、生きていることが不安だらけになってしまいます。

逆に心配しなければいけないのは、85歳を過ぎたら半分の人が認知症になるといった、高い確率で起こる悪いことです。

生活保護の問題も同じです。

厚生労働省のデータによると、2016年1月の時点での生活保護の被保護者は約216万人です。日本の人口がだいたい1億2600万人で、そのうち成人の人口が1億人くらいなので、大人100人のうち2人ぐらいが生活保護を受けている計算になります。

これでも「自分は無関係」と言えるか?

世帯数で見ると、生活保護を受けている世帯は約164万世帯で、日本の総世帯数がだいたい5700万世帯ですから、100世帯あれば3世帯くらいは生活保護を受けているということになります。

要するに、50人に1人(50分の1)、30世帯に1世帯(30分の1)という確率で生活保護を受けている実態があるのですから、全く縁遠い数字ではありません。

人生、明日のことはわからないものです。高給取りで裕福に暮らしていたとしても、明日には会社が倒産してしまうかもしれませんし、リストラに遭うかもしれません。急な病気で仕事ができなくなるかもしれません。

(写真:iStock.com/tadamichi)

たとえばうつ病の生涯有病率は、女性の場合は4人に1人、男性の場合は6人に1人と言われています。大きな災害に巻き込まれて財産をすべて失うことだって、あるかもしれません。

この確率を知りながら、「自分とは関係ない」と言い切れる人は、よほど想像力が欠けていると言えるでしょう。

感情論で「“働かざる者、食うべからず”(これももともとは、レーニンが働かないで贅沢をしている富裕層に対して使った言葉なのですが)だ。生活保護のシステムなんかやめてしまえ!」と言うのは簡単です。

しかし、自分が生活保護を受けなければならなくなる確率を考えると、弱者を救済するための非常にありがたいセーフティネットであることは、すぐわかるはずです。

こういう例を見てもわかるように、確率論で考えることは、感情に振り回された判断を避ける良い方法だと言えるわけです。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:感情バカ
和田秀樹

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