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2024.05.28
女装したヤクザが組長を襲撃! 本当にあった驚きの抗争事件
年功序列、終身雇用が崩壊し、欧米型の雇用環境に変わりつつある日本。これからのシビアな社会を生き抜くには、ただの「いい子」ではやっていけません。そんなときヒントになるのは、生き残りを賭けた戦いを日々、繰り広げている裏社会の人たち……いわゆるヤクザの生き方です。リーダーシップ、錬金術、逆境の乗り切り方など、彼らヤクザの「戦略」がよくわかる『ヤクザに学ぶサバイバル戦略』より、その一端をご紹介しましょう。
誰もが予想しない出来事……
事件は10月27日の深夜に起こった――。
鳥取県倉吉市は三朝温泉の玄関口で、人口5万2千人の城下町。事件2日前には、2万177人という国体史上最多の選手、役員を集めた『わかとり国体』を終えたばかりだった。
26日午後9時頃、倉吉駅から300メートルほど離れたスナック『チェリー』に、ひとりの女が現れた。髪は肩まで届き、ワンピースもペチコートも、口紅、マニキュアも、鮮やかな赤。イヤリングとネックレスもつけた、なかなかの“美人”だ。
女はママに向かって、「わたし、礼子」と自己紹介し、「あとから3人来るから」といって、ボックス席に座った。その女のあとを追うように現れた男が、女の席に最も近いカウンター席につき、コークハイを注文する。
それから約30分後、3人の男が姿を見せ、先に来ていた『礼子』と名乗った女のボックス席に座った。礼子と3人の男は、水割りを飲みながら談笑し始めた。
この3人の男は、同市に本拠を構える一和会幹事長補佐のA組A組長、54歳の同T組員、22歳の同I組員であった。A組長は自分の事務所から車でまっすぐこの店に向かったのだったが、途中、運転していたI組員は車を止め、商店で『チェリー』への道順を聞いている。
女とA組長は、10日ほど前、市内のべつのスナックで顔をあわせただけの間柄だったという。『チェリー』はボックスが3つという小さな店で、他に客は5人。ほとんどが若者だった。
数時間後、日付が27日に変わり、午前1時過ぎになって、A組長が組員ふたりとともに席を立ち、帰ろうと出口へ向かったときのことだった。
それまでカウンターでコークハイを飲んでいた男が、スツールから飛び降りると、A組長に走り寄り、約1メートルの至近距離から、イタリア製25口径拳銃をぶっ放したのだ。発射された弾は5発――。うち3発が組長の後頭部に命中、2発は左右の胸に撃ち込まれた。
さらに男は、T組員の左胸にも1発撃ち込んだ。突然の銃声に、ひと足先に店外へ出て車のエンジンをかけていたI組員は慌てて店内に戻った。と、それまで一緒に飲んでいた女がセカンドバッグから包丁を取り出して襲いかかってきたのである。この襲撃で、I組員は胸や手を斬りつけられた。
ときには「奇策」も必要?
店からの110番通報で、すぐに倉吉署員が駆けつけ、襲撃犯2名は、その場で逮捕されたが、A組長とT組員はすでに死亡、I組員も2週間の重傷を負うという惨状を極めた流血事件となった。そして、A組長らを射殺したのは、山口組竹中組系三次団体のY組員(36)、もうひとりは同K組員(27)と判明。
つまり、それまで女と思われていたK組員は、女装していたのである。
K組員は身長159センチと小柄で、カツラを被りやすくするため、頭髪を短くしていた。その女装ぶりは見事なもので、普段K組員の素顔を知っていた捜査員さえ、現場へ駆けつけたときにはまったく当人とはわからず、女と信じ込んでいたほどだったという。A組長やスナックのママたちが騙されたのも無理はなかった。
ヒットマンが目的を遂行するためには、何が何でもやり遂げるという性根が必要なのはいうまでもないが、それを成功させるための創意工夫――奇策も必要だということを、この一件は図らずも証明していた。
この事件、一般社会での是非はともかく、ヤクザ界ではどのように見られていたかといえば、
「そりゃ、極道としてええ仕事をやった。見事なもんや。それにしても女装とはなぁ……誰も考えつかんかったし、女に化けられる極道なんぞ滅多におらんからなぁ。グッドアイデアというべきと違うか」(関西の組関係者)
と、その“仕事”ぶりに対しては、高く評価するムキが少なくなかった。それは四代目山口組・竹中正久組長射殺事件を引き起こした一和会ヒットマンの仕事ぶりに対して、敵である山口組サイドからさえ賞讃の声があがったのと同様であったろう。
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