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2024.03.22
知らず知らずに国の借金が国民にのしかかる「インフレ税」とは。日本政府が金利を上げたくない理由
インフレが進んだ場合、中央銀行は金利を引き上げて物価を下げようとするのが定石。しかし現在の日本政府がそうしない理由は…? “投資のプロ”朝倉智也さんが「50歳の投資未経験者」に向け、35年の経験と知見をフル活用した資産運用方法を開陳する新書『私が50歳なら、こう増やす!』より、一部を抜粋してお届けします。
物価上昇に、賃金や金利が追いつかない
物価が上昇する中、最近は給料を引き上げるというニュースもよく目にします。
物価上昇と同じくらい賃金がアップすれば、日々の生活にはあまり影響はないかもしれません。
しかし、たとえば賃金が3%上がったとしても、物価が5%上昇すれば、実質的には賃金が下がることになります。
では、実際はどうでしょうか?
図8は、実際に受け取る金額を表す「名目賃金」から物価変動の影響を差し引いて算出する「実質賃金」がどのように推移しているのかを示したものです。
このグラフを見ていただくとわかるとおり、残念ながら賃金上昇はインフレにまったく追いついておらず、実質賃金は下落が続いています。
先ほどご説明したように、いまは人手不足ですから、今後は賃金を上げざるを得なくなる企業が増えてくると考えられます。
いずれは実質賃金がプラスになることもあるかもしれません。しかし、大企業はそれなりに賃金を引き上げることができても、中小企業の中にはなかなか賃上げに踏み切れないところも多いのではないかと思います。
「自分の勤務先では賃上げは望めない」と感じるのであれば、物価上昇の影響をもろに受けることになりますから、今後のマネープランについてはいままで以上に真剣に考える必要があります。
もう1つ、物価上昇にともなって注目したいのが、金利の動向です。
インフレになると預貯金の価値が下がるとご説明しましたが、もしインフレに負けないくらい預金金利がつくなら、資産の価値は守られることになります。
これも実際にどのような状況になっているのか、データを見てみましょう(図9)。
金利の基準となる「10年国債の利回り」から「物価上昇率(消費者物価指数)」を差し引いた「実質金利」の推移を見ると、近年はほぼマイナスで推移していることがわかります。
つまり、いま現在も私たちの預貯金の価値は目減りしているということです。
一般的に、インフレが過熱した場合、中央銀行は金利を引き上げるのが定石です。これは、金利が上がると、高い金利で資金を調達しなければならなくなった金融機関が企業や個人に貸し出す金利も引き上げるからです。
お金が借りにくくなると、企業が借金して設備投資をするのをやめたり、個人がローンを組んで家や車を買うのをやめたりします。すると景気が下向きになり、物価が下がる方向に進むわけです。
日本政府が金利を上げたくない理由
では、今後の日本で、インフレに伴って金利が引き上げられることはあるのでしょうか?
私は、金利引き上げにはあまり期待できないと思っています。というのも、いまの日本の政府には「金利を上げたくない理由」があるからです。
まず、金利が上がると借金を返済する際の金利負担が重くなります。
いま国には1270兆円もの借金があり、借金なしではやっていけない状況です。
金利が上がると、莫大な借金に対する金利も上がってしまい大変なことになるので、金利上昇はなんとかして避けたいはずです。
一方で、インフレになれば物価上昇に伴って自然に税収がアップするので、借金の負担は目減りします。つまり、国が莫大な借金を返済するためには、インフレが続く中で金利を低いままにしておくのが得策だということになります。
しかし、預金金利がまったく上がらず、物やサービスの値段が上がるということは、私たちにとっては非常に不利な話です。このような状況を「金融抑圧」といいますが、誰が抑圧されているのかというと、私たち国民が抑圧されているわけです。
インフレでお金の価値が下落して国の借金の負担が減ることは、「インフレ税」と呼ばれます。
インフレが起きても、私たちはさほど騒ぎません。フランスなどでは暴動が起きたりしていますが、そもそも日本では物価が上がるという経験をしたことがない人が多く、デモが起きる気配はありません。
これが、もし消費税の話なら、1%でも上がるとなれば大騒ぎになるはずですから、政府にとって「インフレ税」は恩恵が非常に大きいといえるでしょう。
物価の上昇に、賃金も金利も追いつかないというのは、私たち国民にとって非常に過酷な状況なのです。
* * *
この続きは幻冬舎新書『私が50歳なら、こう増やす!』をご覧ください。
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