連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第19回は、カルティエの「タンク ルイ カルティエ」と「サントス デュモン」を紹介する。
入手困難になりつつあるカルティエの手巻きのヴィンテージモデル
この数年、カルティエの手巻き時代のヴィンテージモデルを店頭で見かける機会がめっきり減った。価格は数倍跳ね上がっている印象だ。
その理由はいくつかあると考えられるのだが、新旧問わず、カルティエの人気モデルへの注目度が高まっていることは確かだろう。「クラッシュ」の復刻モデルやCPCP(コレクション プリベ カルティエ パリ)などの人気モデルは軒並み値上がりしている。
ヴィンテージに関しては、資料などでしか目にすることがないミュージアム級の個体は難しいとして、比較的見つかりやすいのは、1960~1980年頃のモデルだろう。そのなかでもカルティエ パリが製造した個体は安定した人気がある。
見分け方は単純明快で、文字盤の12時位置に「PARIS」の表記が入るモデルが該当するのだが、多くの個体が後年のダイヤル(SWISS MADE表記)に交換されているため、非常に見つかりにくくなっている。仮に見つかったとしても大きなクラックが入ったものが8~9割を占める。さらに厄介なことに質感が異なる「PARIS」表記の交換用のダイヤルもあるため、クオリティを見極めることは一筋縄では行かない。
今回紹介する1970年代の「タンク ルイ カルティエ」と「サントス デュモン」は、オリジナリティ・コンディションで、ともに非常に優れている。18Kイエローケースは経年変化があり、気取らない美しさが感じられる。2本ともに見つかりにくいLM(メンズサイズ)であることも評価すべき点だ。
どちらもお手頃な価格とは言い難いかもしれないが、今後も価格高騰する可能性が高いため、購入できるチャンスがあるうちに押さえておくのも妥当な選択だと言えるだろう。
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■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。