連載「意欲的新作ウォッチ」の第152回は、IWC「インヂュニア・オートマティック 40」を取り上げる。
ジェラルド・ジェンタのデザインが蘇る! ラグジュアリースポーツウォッチ
世界最大の時計見本市「ウォッチズ & ワンダーズ ジュネーブ 2023」で発表されたラグジュアリースポーツウォッチの王道を行く話題作がある。
1970年代、後に“時計界のピカソ”と呼ばれるジェラルド・ジェンタは、オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」、パテック フィリップ「ノーチラス」など、かつてないステンレススチール製スポーツウォッチをデザインすることで新たなジャンルを切り開いた。
IWC「インヂュニア SL(Ref.1832)」は、ジェラルド・ジェンタがこの時代に手がけた代表作のひとつに数えられる傑作である。このモデルはIWC初の民生用耐磁性腕時計「インヂュニア」の第3世代にあたり、開発プロジェクトは1969年から始まった。1970~1971年頃にはプロトタイプが製作されたが、 厳格なテストの基準を満たすレベルには至らず、IWCの首脳陣はジェラルド・ジェンタに白羽の矢を立てた。
1976年に発表されたブレスレット一体型の自動巻き式スポーツウォッチ「インヂュニア SL(Ref.1832)」は、2000スイスフランという当時のステンレススチール製の腕時計としては非常に高価であったことも話題になり、40mm径のケースサイズから“ジャンボ”というニックネームで呼ばれた。IWCならではの技術力が光る優れた耐衝撃構造と耐磁性能を備えていたことも特筆すべき点に挙がる。
この記念碑的なモデルを再解釈することによって生まれた「インヂュニア・オートマティック 40」は、「インヂュニア SL(Ref.1832)」の特徴的なプロポーションを受け継いだ現代的なタイムピースである。ステンレススチールとチタンの2つの素材があり、計4型で展開される。
復刻モデルと明らかに異なる「インヂュニア・オートマティック 40」のウォッチメインキングは、人間工学による快適な装着感、ベゼルに採用した機能的な多角形のネジ、独特のグリッド構造を持つ文字盤、驚くほど高度なディテールと仕上げなどによって、「インヂュニア SL(Ref.1832)」にはなかった魅力を加えている。このほかにも、耐磁性を持つ自動巻きムーブメントCal.32111による約120時間のロングパワーリザーブ、スポーツウォッチに適した100mの防水性能などを優れた機能を備えている。
ラグジュアリースポーツウォッチの正統な系譜にその名を連ねる「インヂュニア・オートマティック 40」が持つポテンシャルは極めて高い。それこそ利便性の高いSUVさながらの活躍が期待できるはずだ。
問い合わせ
IWC TEL:0120-05-1868
■連載「意欲的新作ウォッチ」とは……
2022年も高級ウォッチブランドから続々と届く新作情報。その中から、新鮮な驚きや価格以上の満足感が味わえる“活きのいい”モデルを厳選! 時代を超えて輝き続ける、腕時計のパワーを改めて感じて欲しい。