第125回は、A.ランゲ&ゾーネの「1815 ラトラパント」を取り上げる。連載「意欲的新作ウォッチ」……。
機能性とエレガンスを両立させたクロノグラフの最高峰
1816年、フランスでルイ・モネが懐中時計でクロノグラフの原型を開発して以来、クロノグラフは人々の関心とともに発展を遂げてきた。
その中でも最も高度な技術が要求されると言われているのが、2つの秒針を持ち、2つのラップタイムを計測できるスプリットセコンド・クロノグラフ(または“ラトラパント”と呼ばれる)である。
アブラアン・ルイ・ブレゲの弟子であり、オーストラリア出身の時計師ヨゼフ・タデウス・ヴィンネルの手により、スプリットセコンド機構の原型が誕生したのは、1831年のことだった。20世紀初頭には、スプリットセコンド機構が搭載された腕時計が登場したのだが、“腕時計の黄金期”と呼ばれる1960年代以降は不遇の時代を迎えることになり、現代の機械式時計ブームの始まりと重なる1980~1990年代に復活を遂げた。
A.ランゲ&ゾーネは、スプリットセコンド機構に情熱を注ぐ数少ないブランドであり、2004年には、クロノグラフ秒針が2本、分積算針が2本付いた史上初のダブルスプリット機能を開発し、ラップタイムの計測枠を60秒から30分まで拡大させることに成功。その後、2018年には、計測枠を12時間枠まで拡大させたトリプルスプリット機能を完成させ、スプリットセコンド機構の頂点を極めた。
今回、A.ランゲ&ゾーネのスプリットセコンド機構のシリーズに新たに加わったのは、世界限定200本となる「1815 ラトラパント」のプラチナケースバージョン。このモデルは、2020年にA.ランゲ&ゾーネの創業175周年に100本限定で発売された「1815ラトラパント・ハニーゴールド“F. A.ランゲへのオマージュ”」の後続機にあたる。
搭載されたCal.L101.2は、A.ランゲ&ゾーネが自社で開発・製作したスプリットセコンド機構を搭載した7個目のムーブメントであり、細部に美しい仕上げが施されている。毎時2万1600振動の安定した精度と約58時間のパワーリザーブを備えるため、実用性も申し分ない。
自社製のムーブメントを搭載する大きなメリットは、サブダイヤルを自由にレイアウトできる点にあり、12時位置に30分積算計、6時位置とスモールセコンドを縦方向に配置し、ダイヤルデザインに個性を与えている。シルバーカラーのダイヤルとブルースチールの針は、エレガントな雰囲気と優れた視認性を約束する。
目の肥えた時計愛好家を夢中にさせるA.ランゲ&ゾーネが紡ぐスプリットセコンド・クロノグラフの物語。この様子を見る限り、次回作も大いに期待できそうだ。
問い合わせ
A.ランゲ&ゾーネ TEL:0120-23-1845
■連載「意欲的新作ウォッチ」とは...
2022年も高級ウォッチブランドから続々と届く新作情報。その中から、新鮮な驚きや価格以上の満足感が味わえる"活きのいい"モデルを厳選! 時代を超えて輝き続ける、腕時計のパワーを改めて感じて欲しい。