インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。この連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。連載第3回は、ジャガー・ルクルトの18Kイエロゴールド製の角型時計を紹介する。連載「ヴィンテージウォッチ再考」
価格以上の価値を持つ18Kゴールド製の角型時計
腕時計のデザインは機能はもとより、その時代の流行が色濃く反映されるものだ。ヴィンテージウォッチを年代別に見渡していくと必ず突き当たるのが角型時計である。隆盛を極めたのは1930~1950年代頃でアールデコの影響を受けた優雅なケースフォルムが多く見受けられるが、ムーブメントの精度や防水性能を高めることが難しかったこともあり、ラウンド型の防水時計が流行り出すと衰退の一路を辿る。
1931年に発表されたジャガー・ルクルト(1937年からこの社名に変更)の「レベルソ」はまさに時代の申し子とも言うべき角型時計の代表作であり、時計の歴史にその名を刻む傑作中の傑作だ。前代未聞の反転ケースという発想を実現させたことはもちろん(初代レベルソはケースとムーブメントともに外注による製作)、錚々たる一流ブランドにムーブメントを供給していたことからもジャガー・ルクルトの時計製造に対する創造性や技術力がずば抜けて高いことが分かる。
この時代にジャガー・ルクルトは「レベルソ」以外にも角型時計を手掛けており、極稀に店頭で発見することができる。こちらで紹介する1本は、1940年代頃に製造された18Kイエローゴールド製レクタンギュラーケースの希少モデルである。
「レベルソ」のファーストモデルと見比べると、複雑なカレンダー表示機能を備えていること以外にも、ケースやリュウズの形状にも違いがあることが確認できる。ややくすんだイエローゴールドの色味もヴィンテージならではの味わいだ。
新旧問わず一部の腕時計のプレミア化が進む最中、セカンダリーマーケットには価格以上の価値やクオリティを持つプロダクトが数多く眠っている。とりわけ以前よりも価格が落ち着いているヴィンテージウォッチは買い時だとも捉えられる。とはいえ、チャンスはどこにでも転がっているわけではないので、一期一会の出合いを大切にしたい。
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