いついかなる時も仕事にまっすぐ向き合い、成果を残してきた男たち。腕時計に思いを託して勝負を挑む日常を彩るのが、勝負時計だ。最愛の時計たちのストーリーを聞いた。
妥協なきモノ作りに気持ちを鼓舞される
「腕時計は私にとって、起業家としての現在地を示すモノ。買った時計を見れば、その当時の自分の実力がわかります」
住宅の注文販売などを手がける会社で社長を務めるA氏が時計に興味を持ったきっかけは、憧れる経営者たちがみな高級時計を集めていたから。しかし、自身も蒐集(しゅうしゅう)を始めるようになると、腕時計が自分をモチベートしてくれるモノとして重要な存在になっていったという。
「大きい、小さいは関係なく、仕事は毎日が勝負。だから、毎日つける腕時計はビジネスにおける“戦友”ともいえますね。時計は今15本くらい持っていますが、どれも思い入れがあって、すべてが私の勝負時計です」
リシャール・ミル、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲ、ウブロ……。A氏が所有するのは、時計好きならば誰もが一度は手にしたい錚々(そうそう)たるブランドの時計ばかりだ。
「時計ブランドの妥協ないモノ作りの姿勢を見ると、背筋が伸びるというか、自分たちも全力で仕事をしていこうと気持ちを鼓舞されるんです」
時計の購入は、神戸の時計専門店であるカミネひと筋。A氏の好みを熟知した専属の販売員と常に連絡を取り、目当てのモデルが見つかればすぐに店舗へ駆けつける。
「人も時計も出合いは一期一会。ビジネスでも同じですよね」
人との出会いに感謝し、つながりを大切にする。それは社員との付き合い方にも表れている。
「頑張っている社員に、さらに活躍してほしいという気持ちをこめて、持っている腕時計をプレゼントすることもあります。私の勝負を支えた時計が、部下たちに受け継がれていく。こんな幸せなことはありません」