2025年上半期だけでも4本の映画と3本の連続ドラマに出演するなど、50代に入ってなお、ますます意欲的に仕事に取り組んでいる石田ひかり#1/#2

年長者として心がけているのは“楽しくやる”こと
1991年の新人賞を総なめにした大林宣彦監督の映画『ふたり』( 1991年)に、連続ドラマ初主演にして大きな話題を集めた『悪女(わる)』(1992年)、石田ひかりの名前を全国区に押し上げた連続テレビ小説『ひらり』(1992年)、大ヒットドラマ『あすなろ白書』(1992-1993年)に『輝く季節の中で』(1995年)。
10代終わりから20代にかけて俳優として大ブレイクした石田ひかりだが、30代は家庭中心の生活を送るために仕事をセーブ。それでも、世間は“石田ひかり”という俳優を忘れることはなく、40代で仕事を本格的に再開した後はオファーが引きも切らない状況だ。
とくにここ数年はドラマや映画だけでなく、バラエティ番組の出演や雑誌のインタビューなど、活動の幅を広げている。2025年4月に公開された映画『アンジーのBARで会いましょう』では主演の草笛光子さんとの共演を熱望し、“逆オファー”したというから仕事への情熱はますます高まっているようだ。
「もう53歳ですからね。キャストやスタッフのなかで最年長ということが、珍しくなくなりました(笑)。年長者として心掛けているのは、とにかく楽しくやること!
正直、意見の相違などで現場の雰囲気が険悪になることもあります。それは関わる人みんなが真剣に作品に取り組んでいるからこそなんですが、せっかく縁あって集まったメンバーなのだからなるべくいい雰囲気で、みんなが良い方向に向かっていかれたらいいなと思います」

1972年東京都生まれ。1986年にデビューし、ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍し、受賞歴多数。直近の主な作品として、連続ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』『ミッドナイト屋台 〜ラ・ボンノォ〜』。公開中の『リライト』『ルノワール』のほか出演作を多数控える。
人生の折り返し地点で、自分の時間が戻って来た
2年前、次女が高校を卒業したことで“育児”からは卒業した。
「今はふたりとも成人して、自分のためだけに使える時間が戻ってきたなぁと、しみじみ感じています。
私、20歳の時に実家を出てひとり暮らしを始め、31歳で結婚したんですよ。いつの間にか、実家で過ごした年月より今の家族と過ごしている年月のほうが長くなっていました。夫は両親よりも私のことをよく知っている人なんですよね。それに気づいた時、なんだか感慨深かったです」
と同時に、胸に去来したのが「ここから先は、自分の“オリジナルドラマ”をつくっていくんだ」という想い。自分がつくった家族との時間が、親の庇護のもとで過ごしてきた時間を超えたことで、これ以降の人生は自分自身がつくるものだという気持ちが強くなったという。
「人生100年だとしたら、今私はちょうど折り返し地点。そのタイミングで子供の手が離れ、自分の時間が戻って来たのは、不思議な巡り合わせだなって思います。
私は完璧なお母さんではなかったし、子育てで後悔していることはいっぱいあります。でも、自分なりにやりきったという達成感もあるので、きっぱりと区切りをつけられた気がします。だから今、次の50年を思い切り楽しもうとすごくワクワクしているんです。
そんな時期に『ルノワール』という作品に巡り合えたこと、早川(千絵)監督がやさしいお母さん役が多かった私に、いつも不機嫌な詩子役をオファーしてくださったことも、奇跡のような気がしています」
YouTubeや学びなど、新しいことにチャレンジ
”戻って来た自分の時間“は、芝居に費やすだけではない。2024年にはYouTubeチャンネル『まぁるい生活』を開設し、趣味の登山やボランティア活動、地元・湘南の紹介のほか、初めてのアルバイト体験や中国語のレッスンの様子などを配信。初めてのことに、積極的にチャレンジしている。最近は、独学で英語も学び始めた。
「『ルノワール』はフランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタールの国際共同製作作品で、現場にも海外のスタッフが数人いらして外国語が飛び交っていたんです。
日本のスタッフにも英語が話せる人が多くて通訳なしでやりとりしていたんですけど、私は英語がまったくダメで。その疎外感たるや、本当に悲しくなってしまうくらい(苦笑)。それで、最低限のコミュニケーションがとれるくらいにはなりたいと独学で英語の勉強を始めました。
『ルノワール』を含め、今回カンヌ国際映画祭には日本の作品が8点出品されました。こういう機会は、今後ますます増えていくのだろうなと思います。英語でセリフをしゃべるのは相当ハードルが高いですし、難しいことはわかっていますが……でも、いつの日か日本でつくられた素晴らしい作品を世界に届ける一員になれたら嬉しいですね」
そう言った後、「Duolongo(デュオリンゴ)という語学アプリ、ご存じですか?」と切り出す石田。
「ゲーム感覚でできてすごく楽しいんですよ。ちょっとサボると、(アプリ内の)キャラクターがどんどんグロテスクに変わっていくから、『やらなきゃ!』という気にさせられて」と、楽しそうに笑う。
キャリア39年を迎えてなお、歩みを止めることなく新たな側面を見せ続けてくれる石田ひかり。その原動力は、目の前にあるものを全力で楽しむ姿勢にあるのかもしれない。
『ルノワール』
映画『PLAN 75』で高い評価を受けた早川千絵監督が、「子供はいつ大人になるのか」をテーマに、11歳の少女フキの感情、そして周囲の大人たちの生きづらさと哀感を細やかに描く。日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタールの国際共同製作作品。カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された話題作。
出演:鈴木 唯、石田ひかり、中島 歩、河合優実、坂東龍汰/リリー・フランキー
監督・脚本:早川千絵
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2025年6月20日(金)より全国公開
https://happinet-phantom.com/renoir/
<衣装クレジット>ジャケット¥39,600、Tシャツ¥26,400(ともにアダワス)、デニム¥28,600(サージ/すべてショールーム セッションTEL:03-5464-9975) ピアス¥110,000、ネックレス¥297,000、バングル¥297,000、リング¥462,000(すべてトーカティブ/トーカティブ 表参道 TEL:03-641-0559)