Smart Opinion代表取締役社長の山並憲司氏と、慶應義塾大学医学部 外科学(乳腺)教授の林田哲氏。中学・高校のクラスメートという関係のふたりを紹介する。

慶應義塾大学医学部 外科学(乳腺)教授。1972年神奈川県生まれ。慶應義塾大学医学部卒。2005年から3年間ハーバード大学研究員。
山並憲司(右)
Smart Opinion代表取締役社長。1972年東京都生まれ。東京大学大学院修了。経済産業省、MITスローンスクールなどを経て、マッキンゼー入社。楽天などを経て、2019年より乳がん検診サービスの事業を始める。
AIと乳がん健診
山並 林田は筑波大学附属駒場中のサッカー部キャプテン。上手かったな。マラドーナみたいだった。
林田 テニス部だったよね。とにかくイケメンでモテモテだったのが印象に残ってる。
山並 高校の卒業前にみんなでスキーに行ったね。
林田 あの時代の記憶はそれくらいしかないな(笑)。
山並 それがグルッと回って30数年経って、今は一緒に社会を変えようという取り組みをしている。面白いな。
林田 フェイスブックでつながったのは、10年ほど前だったか。ちょうどIT企業に相談したい取り組みがあって、紹介してもらったんだよね。
山並 SNSができたおかげだよね。実家の電話番号はわかるけど(笑)。
林田 それから2年ほどして、連絡したんだよね。消化器内科の先生が内視鏡検査でAIを使って病変の良悪性を判定する研究をしていると聞いて、これは乳房超音波検査でも同じことができるんじゃないかと思って。
山並 大学は電子工学科だったけど、大学院では医学部の研究室で医用画像をAIを用いて解析、脳や心臓の活動を特定する研究をしていた。話を聞いて、AIが超音波検査で乳がんを見つけるのに活用できるのではないかと、すぐにピンときて。家族が乳がんになり、早期発見で救われていたこともあってね。
林田 乳がん検診で精密検査に進むべきかは、超音波画像をもとに検診施設の医師が判断している。ところが、そこに乳腺専門の医師というのは多くはない。だから専門医を凌駕するAIの判断があれば、より正確な診断ができる。そして、2019年6月の日本乳癌学会で初めて発表したら、とても関心が高かった。
山並 それから事業計画を作って、会社を設立して、薬事承認に進めていって。
林田 やっぱり昔から知っている仲間だから、安心して進められた。まったく知らない人とだと、こうはいかなかったと思う。
山並 有名な病院の偉い先生なんだけど、そんなふうじゃまったくなくてありがたかった(笑)。
林田 おかげで旧友とご飯をまた一緒に食べるようになったし、ゴルフもやるようになった。それにしても、ゴルフ上手いんだよな。
山並 アメリカに住んでいた時代に、さんざんやっていたので。
林田 もうちょっと同級生とゴルフで遊んでほしいね(笑)。

山並 他の同級生たちとも会うようになって、これがまた楽しい。
林田 それにしても、本当に人脈が広いよな。いろんな世界に友達がいる。しかも、プロフェッショナルが多い。経営者に弁護士、マネジメントや事業立ち上げの専門家……。こういう人いないかな、と問うと必ずいい人が出てくる。コミュニケーション力が高いんだろうな。僕は、狭い世界で生きてきてしまったので。
山並 いやいや、そんなことはないでしょう。ちょっと上から目線っぽくなっちゃうんだけど、林田さんこそ、いろんな面でものすごくバランスがいいな、と感じてた。医学についてはもちろんだけど、実はITやAI についてもめちゃめちゃ詳しかったりもして。忙しいのに、いつどこで勉強してるんだろう、と思ってた。好奇心が強いんだろうね。
林田 開発を手伝ってくれることになったディープテック企業のトップが、息子の学校のパパ友だったことがわかったりして、この事業は本当にいろんな縁を感じた。
山並 薬事承認も下りて、販売が始まって、今年はそれなりに病院に入っていくことになるね。
林田 一緒に作ったもので世の中にお役に立てる。「AI乳がん健診」が広まったら、おいしいお酒で乾杯しなくちゃ、だな。
山並 いやほんと、ここまでのことができて、かけがえのない経験をさせてもらってる。こんなことは、なかなかないと思うもの。これからもよろしくね!