1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウェアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた仕事人たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「人生を彩る眼鏡」の第21回はギタリスト・村治佳織。「人生を彩る眼鏡#21」
PERSON 71
ギタリスト/村治佳織

かけることで、素の自分でいられる
「視力はいいんですが、実は眼鏡もサングラスも大好きです」という村治佳織さん。そのきっかけは、デビューをした10代の頃まで遡る。
「当時ギターを持って歩いていると、私に気がついた方が声をかけてくださることがあって。それが少し気恥ずかしかったんですね。そこで眼鏡をかけるようにしたら気がつかれにくくなり、逆に素の自分でいられる感覚があったんです」
以来、ダテ眼鏡やサングラスは欠かせない存在に。当時お気に入りだったのは、留学していたパリの眼鏡店で見つけたパープルの眼鏡だそう。
「眼鏡からかけ始め、最初サングラスには照れがあったんですけど、ヨーロッパではお洒落というより、必需品としてかけている人も多いんですよね。そこで私も普段からサングラスをかけようと思っているうちに本数も増え、今ではダテ眼鏡と合わせて10本ぐらい持っています。“出かける前には家の鍵を手に取る、そのタイミングでダテ眼鏡やサングラスをかける”というぐらい、もう私にとってアイウェアは日常的な存在なんです」
いろいろなデザインやカラーのサングラスを所有し、「その日の服装とコーディネートするのが好き」という村治さんが今回選んだのは、EYEVAN7285の「363」。丹念な磨きの工程が生む鋭角な縁や、フラットな面の作りが特徴的なウェリントンだ。
「この深いクリアブルーが本当にきれいで。アイウェアが大好きになった原点といえる眼鏡のフレームがパープルだったように、やっぱり素敵な色に惹かれるのかもしれません。それと、フロントにカーブがついていないことでかけたときの印象が変わるのも新鮮でした。サイズ感もちょうどよく、シーンを選ばず活躍してくれそうです」
村治さんはクラシックギタリストとして10代の頃から脚光を浴び、音楽を奏で続けてきた。
「ギターは伴奏に回るイメージがあると思うんですが、実は歌える楽器で、歌心をもって表現することができます。ひとりでコントロールして、自分の音楽の世界観を出していくことができる楽器なんです。大胆な部分もあれば、繊細な部分もあって、その両方を表現できるところが好きですね。自分が感じたギターのよさを人に伝えていきたい、という思いは変わらず持っているし、むしろ年を重ねるごとに強くなっています」
広いステージの上に立ち、ギター1本で観客を魅了する。表現のすべてが委ねられている分、心身のメンテナンスは欠かせない。
「演奏家は“プチアスリート”とよく言っているんですが、ステージに出たら誰にも甘えられないので、身体を整えることは本当に大切です。アスリートほど大きな筋肉は動かしませんが、細かな筋肉を繊細に動かすので、常に自分の体と対話することを心掛けています。あとは、自分がワクワク、楽しくいられるために、心の受け皿を大きくしておくこと。私自身がよい“気”をもつことで、それを観客の皆さんにお届けできたらと思っています」
そうした日々の心掛けが、村治さんのしなやかな美しさを創り出しているのだろう。
現在は新たな音楽のジャンルにトライすべく、練習の真っ最中だとか。どんな世界を奏でてくれるのか、期待は高まるばかりだ。
村治佳織/Kaori Muraji
1978年東京都生まれ。幼少の頃より数々のコンクールで優勝を果たし、15歳でCDデビュー。フランスに留学後、積極的なソロ活動を展開。2003年、英国の名門レーベルDECCA(デッカ)と日本人初の長期専属契約を結ぶ。出光音楽賞、村松賞、ベストドレッサー賞など受賞歴多数。2018年リリースの『シネマ』は、第33回日本ゴールドディスク大賞インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。2023年にデビュー30周年を記念したベストアルバム『Canon~オールタイム・ベスト』を発売。現在、新作アルバムを制作中。
衣装クレジット
眼鏡¥79,200(アイヴァン 7285/EYEVAN 7285 TOKYO TEL:03-3409-7285) イヤーカフ¥12,100(ete TEL:0120-10-6616)
問い合わせ
EYEVAN 7285 TOKYO TEL:03-3409-7285