骨の突起にアプローチするという、独自に考案した「バーテックス療法」で、長嶋一茂、竹内涼真、川谷絵音、野口五郎…各界のトップランナーを癒してきた施術師、渡辺真一。ゴッドハンドとして開花するまでの道のり、そして、これからについて語ってもらった。前編はコチラ。

19歳の時に、「人を癒しなさい」という声を聞いた
独立開業して15年以上、一度も営業をしていないにも関わらず、予約がひきもきらない施術師、 渡辺真一。整体やマッサージ、鍼灸といった一般的な施術とは異なる、渡辺考案の「バーテックス療法」を受けるために、多忙を極める著名人たちがスケジュールをやりくりして通い続ける。
いわば、トップランナーたちを支える立役者だが、この道に入る前は、「ガングロで茶髪、イベントサークルでチャラチャラしている大学生で、人を支えたいとか癒したいなんて考えたこともありませんでした」と、笑う。
「そんな風貌だったので、アルバイトの面接に20件連続で落ちていて。『このままじゃマズいな』と思いながら、地元のショッピングセンターをぶらついていた時に、急に声が聞こえたような気がしたんですよ。『人を癒しなさい』って。今考えるとインスピレーションのようなものだったかと思います」
帰宅し、母にその話をしたところ、整体の専門学校に通うことを勧められたという。
「『癒すといえば、整体やマッサージ。私は母親だからわかる、整体師になれば、きっとうまくいくはず』と、自信満々に勧められたんですよ。19歳ですからね、人を癒す仕事になんてまるで興味がなかったし、そんな人生イヤだとすら思いました。自分が前に出る存在になりたいって」
逡巡しつつも、「癒しなさい」という言葉が頭から離れなかった渡辺に、再びその声が語りかけてきた。「トップの人を癒し、その人を支えなさい」と。
癒す道に入れば、トップと言われる人たちと出会えるのか、本当にその人たちを支える存在になれるのか。頭の中で、渡辺は、何度も内なる声に問いただした。返ってきたのは、「その未来を保証する」という言葉。そこで、渡辺は、整体の専門学校に通うと共に、起業セミナーの受講も決める。
「実はすでに僕は中学2年の時に、将来起業したいと母に伝えていました。母の中では、整体と起業がすぐに結びついたらしく、地元で開催されていた起業セミナーに、いつのまにか申し込まれていました(笑)」

1979年神奈川県生まれ。整体と鍼灸の専門学校を卒業し、2008年に独立開業。長嶋一茂に竹内涼真、川谷絵音、野口五郎、岩崎宏美、ジェンソン・バトン、亀田興毅、本田直之など、錚々たる人物を顧客に持つ。今春、日本バーテックス協会を設立し、スクールも開校予定。詳細はコチラ。
天啓に導かれ、人を癒す業界へ
半信半疑ながら、人を癒す業界の門を叩いた渡辺だが、彼のインスピレーションはすぐに現実のものとなる。
「専門学校の入学初日に、理事長が僕の手を見て、『この手はすごい。人を癒すための手だ』と言ったんです。親指のつけね部分が他の人よりずっと厚くて、盛り上がっているんですが、これは施術者にとって非常に有利だと」
実際、渡辺の手は形状だけでなく、何かが違っていたらしい。研修で他の学生や講師にマッサージを施す際も、手を触れただけで、うつ伏せで施術者の顔が見えないはずの患者役から渡辺だと見抜かれた。施術の効果も、「本当に初心者なのか」と、講師が舌を巻くほどだったという。授業で習うのは、他の学生と同じこと内容だったにも関わらず、だ。
「今思えば、無意識のうちにバーテックスを見つけ出し、アプローチしていたのかもしれません。当時は、それがどういうものなのか言語化できていませんでしたが」
天啓に導かれて入った道で、早々と頭角を表した渡辺。2008年の独立開業後は、その力に癒されたトップランナーが別のトップランナーを紹介するという形で、「トップを癒し、支える存在」になった。

後継者を育て、より多くの人を救いたい
新規の予約がほぼ取れないため、営業はもちろんマスコミへの露出も断っていた渡辺が、唯一取材を受けたのが、月刊誌『GOETHE』の2022年「ゴットハンド企画」だ。顧客の熱烈な推薦に応える形で引き受けたが、その際も、連絡先どころか、顔もフルネームも伏せていた。そんな渡辺が、なぜ今回、顔と名前を明かしての取材に応じたのか。それは、「次のステージにあがる時期がきたから」だという。
「不調を感じていない人はほぼいないんじゃないかというくらい、辛く、苦しい想いをしている人が、たくさんいらっしゃいます。僕には、不調の原因も、どう解消すればいいかもわかっているけれど、すべての人に施術することはできません。だから、僕のバーテックス療法をきちんと言語化し、多くの人に理論と技法を伝えたい。そうやって後継者を育て、彼らが全国に散らばってくれれば、もっと多くの人たちを癒すことができますから。
実はこれも、自分が考えたこというより、ある時ふっと頭の中に降りてきたというか、インスピレーションが沸いてきたんですよ。……自分でも不思議なんですが、僕の人生は、考え抜いて何かを始めるよりも、インスピレーションに突き動かされて行動する方がうまくいくんです」
第二の天啓を受け、今春、「日本バーテックス協会」を設立し、スクールも開校。癒しの力で、トップランナーのパフォーマンスを最大限に発揮させてきた渡辺の新たな挑戦に、今後も注目したい。